法学民事法民法コンメンタール民法第1編 総則

条文

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所有権以外の財産権の取得時効)

第163条
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。

解説

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所有権以外の財産権に対する取得時効の発生要件及び効果を定めた規定である。
時効取得される権利の具体例としては、地上権、地役権、永小作権、賃借権などがある。(地役権については、民法第283条の制約がある)
賃借権の場合、たとえば無権原の占有者が賃貸人であり、その者と賃貸借契約を結んでいた賃借人がいたとした場合、賃借人は(無権原の)賃貸人に賃料を払い続けていれば、賃借権を時効取得し、真の所有者に対してもその賃借権を対抗できることになる。
「前条の区別に従い」とは、第162条2項に規定されている取得時効の主観的要件のことである。つまり、時効取得を主張する者の主観によって取得時効に必要な期間は異なる。

関連条文

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判例

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  1. 仮処分異議 (最高裁判例 昭和30年12月26日)民法第283条
    通行地役権の時効取得の「継続」の要件
    通行地役権の時効取得に関する「継続」の要件としては、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべきである。
  2. 借地権確認等請求(最高裁判決 昭和43年10月08日)民法第601条
    土地賃借権の時効取得
    土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。
  3. 通行地役権確認等 (最高裁判例 平成6年12月16日)民法第283条
    要役地の所有者によって通路が開設されたとして通行地役権の時効取得が認められた事例
    公道に接する土地を所有する甲が、乙に対して右公道の拡幅のためにその所有地の一部を提供するよう働きかける一方、自らも所有地の一部を提供する等の負担をし、甲のこれらの行為の結果として、右公道全体が拡幅され、乙の右所有地も拡幅部分の一部として通行の用に供されるようになったなど判示の事実関係の下においては、乙の右所有地については、要役地の所有者である甲によって通路が開設されたものとして、通行地役権の時効取得が認められる。
  4. 土地明渡請求事件(最高裁判決 平成16年07月13日)農地法第3条,民法第601条
    農地の賃借権の時効取得と農地法3条の適用の有無
    時効による農地の賃借権の取得については,農地法3条の規定の適用はない。
    • 他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し,かつ,それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは,民法163条の規定により,土地賃借権を時効により取得することができるものと解すべきである(上記最判決昭和43年10月08日)、他方,農地法3条は,農地について所有権を移転し,又は賃借権等の使用及び収益を目的とする権利を設定し,若しくは移転する場合には,農業委員会又は都道府県知事の許可を受けなければならないこと(1項),この許可を受けないでした行為はその効力を生じないこと(4項)などを定めている。同条が設けられた趣旨は,同法の目的(農地法第1条)からみて望ましくない不耕作目的の農地の取得等の権利の移転又は設定を規制し,耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ろうとするものである。そうすると,耕作するなどして農地を継続的に占有している者につき,土地の賃借権の時効取得を認めるための上記の要件が満たされた場合において,その者の継続的な占有を保護すべきものとして賃借権の時効取得を認めることは,同法3条による上記規制の趣旨に反するものではないというべきであるから,同条1項所定の賃借権の移転又は設定には,時効により賃借権を取得する場合は含まれないと解すべきである。

前条:
民法第162条
(所有権の取得時効)
民法
第1編 総則

第7章 時効

第2節 取得時効
次条:
民法第164条
(占有の中止等による取得時効の中断)
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