民法第548条の2
条文
編集(定型約款の合意)
- 第548条の2
- 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
- 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
- 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
- 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
解説
編集- 2017年改正により新設。
- 「定型取引」については、その契約内容を個別に定めるのではなく、一連の契約条項をセットとして定型的なものとして合意をすることが、合理的であり、古くからの法律慣行として確立していた。これを定型約款(単に「約款」とも)又は附合契約と呼んでいる。典型的なものとして生命保険の契約約款が挙げられる。定型約款は取引を迅速に進められるなど高い有用性を有する一方で、一方の立場(定型約款準備者、保険約款においては保険会社)で作成されるため相手方(保険約款においては加入者)の保護に欠ける懸念があり、また、定型約款は内容が詳細にわたることが一般的であり、その内容を完全に理解して契約したものとすることは公正とは言い難い。従来、定型約款について民法典に取り決めはなく、民法第92条などが援用されてきた。また、契約締結における当事者間の大きな情報格差については、監督官庁等が定型約款に対して審査を行うなど許認可により、対応してきた経緯がある。しかしながら、今後も、さらにこのような契約が増加することを見込み2017年改正により条項を新設、「『定型約款』の条項が開示されていること」を条件に合意により締結されるものとし、合意後であっても、信義則に悖る条項については、当該条項は契約しなかったものとみなすこととした(他の条項は有効に契約されている)。
参照条文
編集
|
|