民法第86条
条文
編集- 第86条
- 土地及びその定着物は、不動産とする。
- 不動産以外の物は、すべて動産とする。
改正経緯
編集2017年改正で第3項「無記名債権は動産とみなす。」が削除された。
「無記名債権」とは、証券に債権者の氏名の記載がなく、正当な所持人(一般に平穏な所持をもって『正当』と推定される)をもって債権者とする証券的債権であり、鉄道の乗車券や催し物の入場券、各種商品券などがこれにあたる。動産とみなされることにより、証券の移動を持って「即時取得」などが認められていた。
改正後は、「有価証券」という節が設けられ(民法第520条の2~第520条の20)、その中で、「無記名証券」として取り扱われることとなった。
解説
編集不動産と動産の定義を定めた規定である。
民法上、上記の区別が重要な一例としては、対抗要件の違いがある。
「定着物」かどうかは、物理的な視点の他、取引の性質を考慮して機能的な視点も加味して決定される。
参照条文
編集判例
編集- 土地滅失登記処分取消(昭和61年12月16日 最高裁判決)民法第85条,不動産登記法第1条
- 海と民法86条1項にいう土地
- 海は、民法施行当時特定の者が排他的総括支配権を取得していたときを除いては、同法86条1項にいう土地に当たらない。
- 損害賠償請求事件(最高裁判決 昭和63年01月18日)民法第242条,民法第294条
- 共有の性質を有しない入会地上の天然の樹木の所有権が土地の所有者に属するとされた事例
- 付近住民の採草放牧や薪炭材採取等に利用されていた入会地が、入会住民全員の同意のもとに、入会権を存続させ入会住民の保育した天然の樹木を売却する際にはその保育に対する報償として売却代金の一部を入会住民に交付することを条件として村に贈与され、右条件の趣旨に沿つて村が制定した条例に従つて、入会住民が造林組合を結成して組合名義で村に対し入会地の天然の樹木の伐採申請をし、これを受けた村が右樹木を売却してその代金の一部を組合に交付してきたなど判示の事実関係のもとにおいては、右入会地上に生育する天然の樹木は、共有の性質を有しない右入会地の所有者である村の所有に属する。
- 土地所有権確認請求事件(最高裁判決 平成17年12月16日) 公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)2条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)22条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)35条1項,民法第162条,国有財産法第3条
- 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地が土地として私法上所有権の客体になる場合
- 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したがそのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり,同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には,土地として私法上所有権の客体になる。
参考文献
編集我妻栄『新訂民法総則』(岩波書店、1965年)210頁
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