法学民事法コンメンタール民法第2編 物権 (コンメンタール民法)

条文 編集

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)

第178条
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

解説 編集

売買契約が解除され、所有権が売主に復帰した場合、売主は引渡しを受けなければ、契約解除後に買主から動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。

引渡しの形態
  1. 現実の引渡し(原則 第182条第1項)
  2. 簡易の引渡し第182条第2項)
  3. 占有改定第183条
  4. 指図による引渡し第184条

引渡しを必要とする譲渡の範囲 編集

引渡しでなければ対抗できない第三者の範囲 編集

参照条文 編集

判例 編集

  1. 動産引渡請求 (最高裁判決  昭和29年08月31日)民法第662条
    寄託動産の保管者と民法第178条
    動産の寄託をうけ一時これを保管しているにすぎない者は民法第178条の第三者に該当しない。
  2. 動産引渡請求 (最高裁判決  昭和30年06月02日)民法第181条民法第183条
    動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無
     債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
  3. 強制執行異議 (最高裁判決  昭和33年03月14日)
    民法第178条の第三者にあたらない一事例
    甲所有の動産が乙の占有にある間に乙の債権者丙によつて仮差押がなされたとしても、丙は、甲から所有権を譲り受けた丁に対し、引渡の欠缺を主張する正当の利益を有しない。
  4. 沈船所有権確認請求 (最高裁判決  昭和35年09月01日) 商法第686条商法第687条
    1. 沈没船所有権移転の対抗要件
      海底35尋以上の海深にあつて引揚困難な沈没船の所有権移転を第三者に対抗するには、たとえ公称屯数20屯以上の場合でも、民法第178条にいう引渡があれば足りる。
    2. 沈没船の引渡があつたと認むべき事例
      原判示のような事情のもとで、沈没船売買契約書、保険会社の損害品売渡証、関係漁場使用に関する漁業協同組合長名義の承諾書等関係書類授受があつたときは、当該沈没船につき民法第178条にいう引渡があつたものと認むるのが相当である。
  5. 第三者異議(最高裁判決 昭和62年11月10日)民法第85条民法第181条民法第183条民法第333条民法第369条
    1. 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力
      構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。
    2. 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え
      構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。
    3. 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例
      構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。

前条:
民法第177条
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
民法
第2編 物権
第1章 総則
次条:
民法第179条
(混同)
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