「中学校国語 古文/平家物語」の版間の差分

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2014年10月13日 (月) 23:59時点における版

那須与一

解説

結末: 結局、与一の放った矢は命中する。


本文

ころは二月(にんぐわつ)十八日の酉(とり)の刻ばかりのことなるに、をりふし北風(ほくふう)激しくて、磯(いそ)打つ波も高かりけり。

舟は、揺り上げ揺りすゑ漂へば、扇もくしに定まらずひらめいたり。

沖には平家、舟を一面に並べて見物す。

陸(くが)には源氏、くつばみを並べてこれを見る。

いづれもいづれも晴れならずといふことぞなき。

与一目をふさいで、

「南無八幡大菩薩(なむはちまんだいぼさつ)、我が国の神明(しんめい)、日光(につくわう)の権現(ごんげん)、宇都宮(うつのみや)、那須(なす)の湯泉大明神(ゆぜんだいみやうじん)、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。これを射損ずるものならば、弓切り折り白害して、人に二度(ふたたび)面(おもて)を向かふべからず。いま一度(いちど)本国へ迎へんとおぼしめさば、この矢はづさせたまふな。」

と心のうちに祈念して、目を見開いたれば、風も少し吹き弱り、扇も射よげにぞなつたりける。


与一、かぶらを取つてつがひ、よつぴいてひやうど放つ。

小兵(こひやう)といふぢやう、十二束(そく)三伏(みつぶせ)、弓は強し、浦響くほど長鳴りして、あやまたず扇の要(かなめ)ぎは一寸ばかりおいて、ひいふつとぞ射切つたる。

かぶらは海へ入りければ、扇は空へぞ上がりける。

しばしは虚空(こくう)にひらめきけるが、春風に一(ひと)もみ二(ふた)もみもまれて、海へさつとぞ散つたりける。

夕日(せきじつ)のかかやいたるに、みな紅(ぐれなゐ)の扇の日出(い)だしたるが、白波の上に漂ひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ、沖には平家、ふなばたをたたいて感じたり、陸には源氏、えびらをたたいてどよめきけり。


あまりのおもしろさに、感に堪へざるにやとおぼしくて、舟のうちより、年五十ばかりなる男(をのこ)の、黒革をどしの鎧(よろひ)着て、白柄(しらえ)の長刀(なぎなた)持つたるが、扇立てたりける所に立つて舞ひしめたり。

伊勢三郎義盛(いせのさぶらうよしもり)、与一が後ろへ歩ませ寄って、

「御定(ごぢやう)ぞ、つかまつれ。」

と言ひければ、今度は中差(なかざし)取つてうちくはせ、よつぴいて、しや頸(くび)の骨をひやうふつと射て、舟底へ逆さまに射倒す。

平家の方(かた)には音もせず、源氏の方にはまたえびらをたたいてどよめきけり。

「あ、射たり。」

と言ふ人もあり、また、

「情けなし。」

と言ふ者もあり。

現代語訳(げんだいご やく)

(※ 編集中)

冒頭部

本文

(書き出しの部分)

 
祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘(かね)の声、
諸行無常(しょぎょうむじょう)の響き(ひびき)あり。
沙羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色(はなのいろ)、
盛者必衰(じょうしゃ ひっすい)のことわりをあらはす。
おごれる人もひさしからず、
ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者もつひ(つい)にはほろびぬ
ひとへに(ひとえに)風の前のちりに同じ。
現代語訳(げんだいご やく)

(インドにある)祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の音には、「すべてのものは、(けっして、そのままでは、いられず)かわりゆく。」ということを知らせる響きがある(ように聞こえる)。 沙羅双樹の花の色には、どんなに勢い(いきおい)のさかんな者でも、いつかはほろびゆくという事をあらわしている(ように見える)。 おごりたかぶっている者も、その地位には、長くは、いられない。ただ、春の夜の夢のように、はかない。強い者も、最終的には、ほろんでしまう。

まるで、風に吹き飛ばされる塵(ちり)と同じようだ。

解説

  • 祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)・・・ インドにある寺で、釈迦(しゃか)の根拠地(こんきょち)。
「祇園精舎は、どこの国にあるか?」(答え:インド)は、中学入試~大学入試などに良く出るので覚えること。答えを知らないと解けないクイズ的な知識だが、しかし入試に出てくるので、読者は覚えざるを得ない。

作品解説

平家物語の作者は不明だが、琵琶法師などによって語りつがれた。

作中で出てくる平清盛(たいらのきよもり)も、源義経(みなもとのよしつね)も、実在した人物。作中で書かれる「壇ノ浦の戦い」(だんのうらのたたかい)などの合戦(かっせん)も、実際の歴史上の出来事。 作者:不明

 平家(へいけ)という武士(ぶし)の日本を支配(しはい)した一族が、源氏(げんじ)という新たに勢力の強まった新興(しんこう)の武士に、ほろぼされる歴史という実際の出来事をもとにした、物語。 平安時代から鎌倉時代に時代が変わるときの、源氏(げんじ)と平氏(へいし)との戦争をもとにした物語。

 なお、平家がほろび、源氏(げんじ)の源頼朝(みなもとのよりとも)が政権をうばいとって、鎌倉時代が始まる。