生活保護法第1条
条文
編集(この法律の目的)
- 第1条
- この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
解説
編集参照条文
編集1950年(昭和25年)5月4日公布即日施行。それ以前の生活保護法(旧法、1946年(昭和21年)9月9日法律第17号)第1条は以下のとおり。
- この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱を成すことなく平等に保護して、社会の福祉を増進することを目的とする。
参考
編集- 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について(昭和29年(1954年)5月8日 厚生省社会局長通知)
- 特別永住者や一定の在留資格を持つ外国人について、生活保護法の「準用」を認めるとする行政措置
- 生活保護法第1条により、外国人は法の適用対象とならないのであるが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて左の手続により必要と認める保護を行うこと。
- 特別永住者や一定の在留資格を持つ外国人について、生活保護法の「準用」を認めるとする行政措置
判例
編集- 生活保護申請却下処分取消請求事件 (最高裁判決平成13年9月25日)
- 生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことと憲法25条,14条1項
- 生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
- 憲法25条については,同条1項は国が個々の国民に対して具体的,現実的に義務を有することを規定したものではなく,同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的,現実的な生活権が設定充実されていくものであって,同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられていると解すべきところ,不法残留者を保護の対象に含めるかどうかが立法府の裁量の範囲に属することは明らかというべきである。不法残留者が緊急に治療を要する場合についても,この理が当てはまるのであって,立法府は,医師法19条1項の規定があること等を考慮して生活保護法上の保護の対象とするかどうかの判断をすることができるものというべきである。したがって,同法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条に違反しないと解するのが相当である。また,生活保護法が不法残留者を保護の対象としないことは何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いには当たらないから,憲法14条1項に違反しない。
- 最高裁第二小法廷平成26年7月18日判決、判例地方自治386号78頁、賃金と社会保障1622号30頁
- 生活保護法の外国人適用
- 生活保護法は日本国民を対象とした法律であり、外国人には適用されない。外国人に対する生活保護は行政措置にすぎず、法的権利ではない。[憲法判断はしていない]
- 旧生活保護法は、その適用対象につき『国民』であるか否かを区別していなかったのに対し、現行の生活保護法は、1条及び2条において、その適用対象につき『国民』と定めたものであり、このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう『国民』とは日本国民を意味するものであって、外国人はこれに含まれない。現行の生活保護法が制定された後、現在に至るまでの間、同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず、同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。したがって、生活保護法を始めとする現行法令上、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。
- また、本件通知は行政庁の通達であり、それに基づく行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても、そのことによって、生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく、わが国が難民条約等に加入した際の経緯を勘案しても、本件通知を根拠として外国人が同法に基づく保護の対象となり得るものとは解されない。なお、本件通知は、その文言上も、生活に困窮する外国人に対し、生活保護法が適用されずその法律上の保護の対象とならないことを前提に、それとは別に事実上の保護を行う行政措置として、当分の間、日本国民に対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続きにより必要と認める保護を行うことを定めたものである。
|
|