正方行列 に対して、 行列の 行目と 列目を取り除いて得られる行列を と表す。このとき、
を の 余因子という。
- 例
の 余因子は、 である。
次のように、余因子を利用することで、行列式を求めることができる。
ただし、 は 次正方行列である。
これを、余因子展開という。
証明
とする、このとき、
-
である、ここで、行列 の 列目 は、
と表すことができ、
(1)式は、
と、表すことができる。これに、行列式の性質を使えば、
である。
ここで、 について考える。
この行列の 行目と、 行目を入れ替る。 行目と、 行目を入れ替える。・・・ 行目と、 行目を入れ替える。という操作をすると、次のような行列になる。
行列の行または列を入れ替えると、行列式の値は 倍されるのだった。この操作では、 回の入れ替えを行うので、この式は、 倍されている。
次に、同じように、 列目と、 列目を入れ替える。 列目と、 列目を入れ替える。・・・ 列目と、 列目を入れ替える。という操作をする。すると、次のような行列になる。
であることについての説明は不要であろう。
これを、行列式の定義に従って展開する。
一行目で、(1,1)要素を選ばない項は、いずれ、一列目の0を選ぶので、0となる。
なので、一行目で、(1,1)要素を選ぶ項だけを考えれば良いが、これは、 と一致する。
よって、この行列式は、 である。
これを、(2)式に代入すれば、 となり、証明された。
これと同様の議論を行にも行えば、もう一方の式も導くことができる。
をAの余因子行列という。
余因子行列には、以下の性質がある。
-
証明
なので、
行列 の 成分は、
である。
(i) のとき
- (1)式は、行列 の 列目に関して余因子展開をした式と一致するので、(1)式は のとき、 である。
(ii) のとき
- 行列 の 列目が行列 の 列目になっている行列の行列式について考える。この行列式は以下のようになる。
-
- この行列のi列目について、余因子展開を行うと、(1)式と一致する。
- 同じ列がある行列の行列式は0になるのだった。なので、(1)式は、 のとき、0である。
まとめると、 である。
よって である。同様の議論を行えば、 も導くことができる。
のとき が存在するので、 に を右からかけ で割れば、
である事がわかる。