高等学校倫理/医療技術の進歩と生命倫理

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バイオテクノロジーの発展

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 科学技術は、生命関連分野でも大きく発展しました。特に、バイオテクノロジー(生命工学)の目覚ましい発展のおかげで、遺伝子操作の科学技術も大きく発展しました。その結果、新しい薬品の開発や遺伝子組み換え食物などに応用されるようになりました。この技術が医学に応用されてから、微生物や動植物はもちろん、人間の生命にもそのまま活用されるようになりました。

 遺伝子を人工的に操作するような遺伝子工学もバイオテクノロジーの分野です。遺伝子工学の種類として、遺伝子操作とクローン技術などがあります。

 遺伝子組み換え技術では、遺伝子の一部を違う遺伝子部分に組み込んだり、遺伝子を置き換えたりします。1973年、アメリカで基礎的な技術を導入しました。遺伝子組み換え技術は、農業にも応用されています。遺伝子組み換え作物は、害虫・病気・除草剤の影響を受けにくく、長持ちするようにアメリカ・ブラジル・アルゼンチンなどで作られています。しかし、遺伝子組み換え技術の安全性や環境への影響に関しては、様々な不安の声もあります。

 遺伝子組み換え食品はお店で買えるようになりました。日本の食品衛生法によると、安全性の確認を行わなければなりません。そして、遺伝子組み換え作物を売る時、農産物・加工食品かを問わず、必ず表示しなければなりません。日本は、遺伝子組み換え作物の商業目的栽培を行っていません。ただし、2008年から「青い薔薇(サントリー=フラワーズ)」が一般圃場で栽培出来るようになり、これが初めての商業目的栽培と考えられます。遺伝子組み換え動物は、1996年から輸入・販売されるようになりました。

クローン技術

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クローン技術とは

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 クローンでは、1つの細胞個体から無性生殖で作られ、同じ遺伝子配列を持っています。なお、ギリシャ語のクローンは「小枝」を意味します。クローン技術では、このようなクローンを人間の手で作っています。

 クローン技術は初期受精卵の細胞を使う方法(生殖細胞クローン)と皮膚や筋肉などのように成体の体細胞を使う方法(体細胞クローン)があります。生殖細胞クローンはクローンの複製数に制限をもっています。これに対して、体細胞クローンは複製を無制限に作れると考えられています。そのため、世界で初めて哺乳類のクローン羊ドリーが成体の体細胞を使って、1996年7月にイギリスで産まれると、大きなニュースになりました。また、1996年8月にアメリカでも初期受精卵から世界で初めてクローン猿が産まれ、注目を集めました。それから2年後の1998年、2頭のクローン牛が日本で生まれると、世界の注目を集めました。

期待される利益

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 クローン技術は、医療・食料・動物保護などの分野に活用出来るので、私達の生活に大きな利益をもたらしてくれます。例えば、以下の研究が進められています。動物の臓器を人間にも移植出来るように遺伝子組み換え技術で作り出します。そして、そのような臓器をクローン技術で大量に複製します。また、良質な乳牛・良質な肉牛、医薬品の製造に必要な成分を牛乳に含む乳牛を大量生産出来るようになるかもしれません。さらに、絶滅危惧種の動物が出産しやすくなるかもしれません。

ヒトクローン技術の問題点

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 クローン技術が発展すると、再生医療に役立つかもしれません。再生医療では、移植用の皮膚や臓器を再生します。また、同性愛者同士・不妊症夫婦の遺伝子を受け継ぐ子供を望む場合にも役立つかもしれません。

 「クローン人間」は、現在のクローン技術で生まれていません。しかし、ヒトクローン技術を利用すれば、男女の性的な結び付きがなくても子供を作れるようになります。そのため、次のような問題が浮き彫りになりました。

  1. 人間の誕生という伝統的な考え方から離れ、外見・能力・性格などのような明確な表現形質を持つ人間を作り出し、「人間の品種改良」に繋がります。
  2. ある目的を果たすために、明確な表現形質を持つ人間を作り出し、クローン人間を手段・道具と考えるので、クローン人間の安全な成長が約束されません。

 したがって、世界各国はヒトクローン技術を法律で制限しています。日本でも2001年にクローン技術規制法が定められ、クローン技術の研究を制限しています。クローン技術規制法では、ヒトクローンの作製は禁止されています。しかし、クローン胚の作製は、研究目的に限り、厳しい条件付きで認められています。

iPS細胞の研究

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ヒトゲノム

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 遺伝子は私達の遺伝子情報を持っているので、生命の設計図とも呼ばれています。なお、人間の全遺伝子情報をヒトゲノムといいます。アメリカは1990年から「ヒトゲノム計画」を推進しています。イギリス・日本・フランス・ドイツ・中国もヒトゲノム計画に参加して、ヒトゲノムの解明に取り組んでいます。2003年、塩基配列の解読が終わりました。その結果、人間がどのように生まれ、成長して、病気になり、亡くなるのかが明らかになりました。このような遺伝情報の解明が進むにつれて、私達の生命を直接変えられるようになっています。

 現在は、塩基配列のどの部分がどのような役割を果たしているのかを明らかにしようとしています。

ヒトゲノム
 どのような生物でも、何かしらの遺伝子情報を必ず持っています。このような遺伝子の集合体をゲノムといいます。genomeの言葉は、遺伝子(gene)と全体(ome:ラテン語のomnis)を合わせて出来ています。

遺伝子治療

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ゲノム編集

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資料出所

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  • 竹内整一ほか編著『倫理』東京書籍株式会社 2023年
  • 越智貢ほか編著『高等学校 改訂版 倫理』株式会社第一学習社 2016年
  • 第一学習社編集部編著『テオーリア 最新倫理資料集 新版2訂』株式会社第一学習社 2019年
  • 藤田正勝著『理解しやすい倫理』株式会社文英堂 2023年
  • 大塚哲ほか著『聴くだけ 倫理、政治・経済』 株式会社学研プラス 2015年【絶版本】
  • 平川唯史著『定期テスト対策 倫理の点数が面白いほどとれる本 新課程版』KADOKAWA(中経出版) 2013年【絶版本】