法学民事法商法コンメンタール会社法第2編 株式会社 (コンメンタール会社法)第2編第4章 機関 (コンメンタール会社法)

条文

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(表見代表取締役

第354条
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

解説

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関連条文

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判例

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  1. 貸金等請求(最高裁判決 昭和35年10月14日)
    会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為に対する商法第262条(現・本条)の類推適用の有無。
    商法第262条(現・本条)は、会社の使用人が代表取締役の承認のもとに常務取締役の名称を使用してなした行為につき、類推適用されると解するのが相当である。
  2. 約束手形金請求(最高裁判決 昭和39年6月12日)
    民法第112条の表見代理の主張に対し商法第262条(現・本条)の表見代表取締役の規定を適用して判断することの可否。
    当事者が民法第112条の表見代理による約束手形金の支払請求を主張している場合であっても、商法第262条(現・本条)の要件事実が主張されている以上、同条の表見代表取締役の行為による会社に対する責任に基づいて、請求を認容することに違法はない。
  3. 約束手形金請求(最高裁判決 昭和40年4月9日)
    表見代表取締役が直接代表取締役の記名押印をして会社名義の約束手形を振り出した場合と商法第262条(現・本条)の適用の有無。
    会社名義で振り出された約束手形につき、手形面上に会社代表者として表示されている者に代表権はあるが、右代表者の記名押印をした者に代表権がない場合であつても、会社が後者に対して常務取締役等会社を代表する権限を有するものと認められる名称を与えており、かつ、手形受取人が右後者の代表権の欠缺につき善意であるときは、右後者が自己の氏名を手形面上に表示した場合と同様、会社は手形金支払の責を負うものと解するのが相当である。
  4. 約束手形金請求事件(最高裁判決 昭和41年11月10日)
    表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには第三者の無過失を要するか
    表見代表取締役の行為につき会社が責任を負うためには、第三者が善意であれば足り、その無過失を要しない。
  5. 鉱泉地共有持分権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和42年4月28日)
    共同代表の定めがあるのに代表取締役が単独で代表権限を行使した場合に商法第262条(現・本条)の類推適用があるとされた事例
    共同代表の定めがあり、その旨の登記がある場合において、当該代表取締役が単独で代表権限を行使できる者であると見られる外観をもつて代表取締役の名称を使用しているのに対し、これを他の代表取締役全員が黙認していた等原審認定の事実関係のもとでは、当該代表取締役が単独で行なつた法律行為についても、会社は、商法第262条(現・本条)の規定の類推適用により善意の第三者に対してその責に任ずるものと解するのが相当である。
  6. 約束手形金請求(最高裁判決 昭和42年7月6日)
    表見代表取締役が自己の利益を図るためにした行為と会社の責任
    商法第262条(現・本条)は、第三者が代表権の欠缺について善意であるかぎり、表見代表取締役のした行為の目的のいかんにかかわらず適用され、行為者の意図が自己の利益を図ることにあつた場合においては、第三者がその意図を知り、または知りうべかりしときにかぎり、会社は、民法第93条但書の提起を類推適用して、その責を免れることができるにすぎないものと解するのが相当である。
  7. 約束手形金請求(最高裁判決 昭和43年12月24日)
    共同代表の定があるのに代表取締役の一人が単独の代表名義で約束手形を振り出した場合に商法第262条(現・本条)の類推適用があるとされた事例
    共同代表の定があるのにかかわらず、代表取締役の一人が、単独で、代表取締役の名称を使用して約束手形を振り出した場合においても、右手形の取得者が、共同代表の定の登記がされていることを知らず、右代表取締役が社長と称し会社の主宰者として行動している事実から単独の代表権を有するものと信じてこれを取得し、会社においても当時右代表取締役が社長と称して行動することを許容し、または黙認していた等の事情が存在するときは、会社は、右手形について、商法第262条(現・本条)の類推適用により、振出人としての責に任ずるものと解するのが相当である。
  8. 売掛代金請求(最高裁判決 昭和44年11月27日)
    1. 代表取締役代行者なる名称と商法262条(現・本条)
      代表取締役代行者なる名称は、商法262条(現・本条)にいう会社を代表する権限を有するものと認むべき名称に該当する。
    2. いわゆる持ち廻りの方式によつたため有効な取締役会の決議とは認められないとされた事例
      株式会社の代表取締役が行方不明となる緊急状態が生じたので、他の取締役全員が、判示のように、取締役甲に代表権を付与することを承認した場合において、その承認が、いわゆる持ち廻りの方式によるものであるときは、有効な取締役会の決議とは認められず、取締役甲は、会社の代表権を取得しない。
    3. 代表者選任が無効な場合において商法262条(現・本条)の類推適用が認められた事例
      株式会社の代表取締役が行方不明のため、他の取締役全員により、正式に代表取締役が選任されるまでの間一時的に、会社の代表権を行使することを承認された取締役が、右承認に基づき、代表権を有するものと認むべき名称を使用してその職務を行なつたときは、右承認が取締役会の代表者選任決議と認められず、無効の場合であつても、会社は、商法262条(現・本条)の類推適用により、右名称を付した取締役の行為につき、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。
  9. 売買代金請求(最高裁判決 昭和45年12月15日)民法第109条
    1. 会社の訴訟上の代表者の確定と民法109条、商法262条(現・本条)の適用の有無
      民法第109条、商法262条(現・本条)は、会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。
    2. 控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合の措置
      控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合には、原告に対し訴状の補正を命じさせるため、事件を第一審裁判所に差し戻すべきであり、ただちに訴を不適法として却下すべきではない。
  10. 債権確定請求(最高裁判決 昭和46年2月23日)
    更生会社の管財人が数人あるのにそのうちの一人が単独で手形行為をした場合に商法262条(現・本条)の類推適用があるとされた事例
    更生会社の管財人が数人あるにもかかわらず、そのうちの一人が、単独で、管財人の名称を使用して手形行為をした場合において、手形の取得者が、右一人の管財人が単独で手形行為をなすことができると信じて手形を取得し、更生会社においては、数人の管財人の間に会社更生法九七条一項但書の職務分掌の定めはなかつたが、右一人の管財人が更生会社の管財人として常勤し、他の管財人の同意のもとに事実上更生会社の経営部門の職務を担当し、自己の単独名義で手形行為をなすことを他の管財人が黙認していた事情があるときは、更生会社は、商法262条(現・本条)の類推適用により、手形行為者としての責に任じなければならない。
  11. 約束手形金(最高裁判決 昭和52年10月14日)
    代表権の欠缺を知らないことにつき重大な過失がある第三者と商法262条(現・本条)に基づく会社の責任
     会社は、商法262条(現・本条)所定の表見代表取締役の行為につき、重大な過失によりその代表権の欠缺を知らない第三者に対しては、責任を負わない。
  12. 採掘権譲渡登録抹消登録(最高裁判決 昭和56年4月24日)
    取締役会の無効な決議により選任された代表取締役がした行為と商法262条(現・本条)の類推適用
    取締役会の無効な決議により選任された代表取締役が会社の代表としてした行為については、会社は、商法262条(現・本条)の類推適用により、善意の第三者に対してその責に任ずべきものである。

前条:
会社法第353条
(株式会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表)
会社法
第2編 株式会社

第4章 機関

第4節 取締役
次条:
会社法第355条
(忠実義務)
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