条文

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(没収)

第19条
  1. 次に掲げる物は、没収することができる。
    1. 犯罪行為を組成した物
    2. 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
    3. 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
    4. 前号に掲げる物の対価として得た物
  2. 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

解説

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付加刑であるため、原則として刑の言い渡しは裁判所の裁量によってされる。
ただし、法律に没収を刑の一つとして定められている場合(収賄罪において収受した賄賂(第197条の5)、経済犯罪における違法行為により得た収益など)は必須となり、当該条項が適用される。

参照条文

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  • 刑法第197条の5 - 収賄罪における没収及び追徴
  • 金融商品取引法第198条の2 - 金融商品取引法第197条及び金融商品取引法第197条の2に関する付加刑
    1. 次に掲げる財産は、没収する。ただし、その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができる。
      1. 第197条第1項第5号若しくは第6号若しくは第2項又は第197条の2第13号の罪の犯罪行為により得た財産
        • 第197条第1項第5号 - 第157条(不正行為の禁止)、第158条(風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止)、第159条(相場操縦行為等の禁止)の違反に対する罰則
        • 第197条第1項第6号 - 暗号資産に関する不正取引の禁止等違反に対する罰則(第185条の22第1項、第185条の23第1項、第185条の24第1項及び第2項)
        • 第197条第2項 - 上記の違反行為を「財産上の利益を得る目的」で行った場合の罰則加重
        • 第197条の2第13号 - 不正行為の禁止等の違反を利用したデリバティブ取引、インサイダー取引(第166条第1項/第3項・第167条第1項/第3項)
      2. 前号に掲げる財産の対価として得た財産又は同号に掲げる財産がオプションその他の権利である場合における当該権利の行使により得た財産
    2. 前項の規定により財産を没収すべき場合において、これを没収することができないときは、その価額を犯人から追徴する。

判例

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  1. 窃盗教唆、賍物故買(最高裁判決 昭和23年11月18日)刑法256条,刑訴法373条,刑訴法49条1項,刑訴法373条2号
    1. 賍物の対価として得た物を没収するにはその対価を得た行為が犯罪を構成することを必要とするか
      物の対価を得た行為(本件では賍物の売買行為)が犯罪を構成する場合でなければ、その対価の没収の言渡ができぬと論ずるのは全くの独断である。犯罪行為によつて得た対価を没収するのであれば同項第3号によるのであつて、第4号によるのではない。そして第4号の対価を取得する行為については、それが犯罪を構成することを要件とするものでないことは規定上も明らかである。
      賍物の対価として得た物を没収するには、その対価を得た行為が犯罪を構成することを必要としない。
    2. 賍物の対価として得た金錢は没収し得るか
      刑法第19条第1項第4号の規定は独立した没収事由として追加規定せられたものであるから、同号を適用するのに前号所定の物が同条第2項の規定により没収し得るものであることを前提とすべき理由は毫も存しない、それ故前記贓品の対価物たる押収金全額は、犯人以外の者に属せざる限り没収し得る訳である。
      -賍物の対価として得た金銭は、その賍物が犯人以外の者に属する場合においても、その金銭が犯人の所有である限り、これを没収することができる。
    3. 公定価格ある賍物の対価として得た金銭に対する被害者の交付請求権の範囲
      本件では刑訴第373条第2項の規定に基き贓物の対価物につき被害者から交付の請求があつた。普通の場合であつたならば、対価物の全部を被害者に還付すべきであろうが既に贓物は処分せられた後のことであるから、被害者が犯人に対して損害賠償として交付を請求し得るのは、法令の許容する価額を標準とすべきであり、従つて本件においては「みのり」1100個、「きんし」6000本に対する処分当時の公定価額3240円に相当する押收現金の還付であると言わねばならぬ。されば、原判決がこれを被害者に還付する言渡をなし、これを差引きたる押收金の殘額25,595円を没収したのは正当である
      公定価格ある賍物の対価として得た金銭は、処分当時の公定価格に相当する金額の範囲内において、被害者は、その交付を請求することができる。
  2. 強姦致傷、不法第監禁(最高裁判決 昭和24年07月12日)
    没収の言渡をしながら法条を適用しない判決の違法
    原判決は七首二振を沒収する旨言渡しながら、法律適用の部では没収に関する法条を適用していないから、理由不備の違法があり、破毀をまぬがれない。
  3. 贈賄幇助、贈賄(最高裁判決 昭和24年12月06日)旧刑訴法248条,旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19號,旧刑訴法291条1項,旧刑訴法410条18號,警察法49条,警察法附則19条,刑法198条刑法62条1項,刑法197条の4(現刑法197条の5),旧刑訴法360条1項
    贈賄の現金を没収するに当り刑法第19条を適用すべきところ同第197条の4(現第197条の5)を適用した擬律錯誤の違法
    原審が刑法第197条の4(現本条)を適用して「押収の現金二万円を没収する」と判決したのは違法であつて論旨は理由があり、この点において原判決は破毀をがれない。しかし刑法第197条の4は同法第19条を排斥するものではなく、問題の現金二万円は贈賄の「犯罪行爲ヲ組成シタル物」として刑法第19条により没収せられ得べきものであるからその処置を執るのを適当と認める。
    • 原審において被告は、贈賄罪(刑法198条)の幇助の判決を受け、同時に、刑法197条の4(現刑法197条の5)が適用され没収が科されたが、刑法197条の4(現刑法197条の5)は、収賄罪に必要的に適用するものであっても贈賄罪への適用は違法である。しかしながら、贈賄罪の幇助という犯罪行為を組成したものとして、本条により裁判所が裁量として科しうる没収は適用できる。
  4. 加重収賄(最高裁判決 昭和29年08月20日)
    いわゆる第三者収賄罪において第三者たる法人が賄賂を収受した場合の沒収、追徴の要件
    刑法第197条ノ2の罪において第三者たる法人の代表者が賄賂であることを知つて賄賂を法人のため受け取つたときは、その法人は同法第197条ノ4(現行:第197条の5)にいわゆる「情ヲ知リタル第三者」にあたり法人から右賄賂を沒収しまたはその価額を追徴することができる。

前条:
刑法第18条
(労役場留置)
刑法
第1編 総則
第2章 刑
次条:
刑法第19条の2
(追徴)
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