条文

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(親告罪)

第264条
第259条第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

解説

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私文書・私物の毀棄・隠匿については、被害者の告訴を要する親告罪である。
告訴権者は、原則として所有権者であるが、物件の管理者、物上権者、所有権に争いのある場合の一方の当事者、又、第262条により所有権者の権利を制限する差押権者、賃借物件に係る賃借者など被害物件に関し強い利害関係にある者も含まれる。

参照条文

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第259条(私用文書等毀棄)
第261条(器物損壊等)
  • 団体若しくは多衆の威力を示し、団体若しくは多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示し若しくは数人共同して第261条の罪を犯した場合は親告罪とならない(暴力行為等処罰ニ関スル法律第1条)。
第263条(信書隠匿)

判例

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  1. 器物毀棄(最高裁決定昭和33年7月10日)
    刑法261条の器物毀棄罪と告訴権者。
    地方裁判所支部庁舎の玄関扉のガラス等を破壊した器物毀棄の罪については、当該地方裁判所長が適法な告訴権を有する。
  2. 器物毀棄、傷害(最高裁判決昭和35年3月22日)
    1. 器物毀棄罪を構成する事例
      登記簿上被告人の所有名義なるも、その承諾を得て甲が耕作し、後甲老齢のため長男乙が事実上耕作してきた水田につき、その所有権の帰属、耕作権の有無に関して係争中、被告人がほしいままに、乙が植付け所有する稲苗を抜き取り土中に埋めるなどする所為は、器物毀棄罪を構成する。
    2. 右の場合乙の告訴は適法か
      右の場合乙は器物毀棄罪の被害者にあたり、乙のした告訴は適法である。
  3. 器物損壊(最高裁決定昭和40年12月14日)刑事訴訟法第411条
    刑訴法第411条にあたらないとされた事例。― 器物損壊罪において第一審が被害者を誤認しかつ訴訟条件を欠くのに有罪とした場合の控訴審の処置 ―
    記録によれば、一審判決が、本件器物損壊の被害者はAであると認定し、同人からの適法な告訴がないのに、被告人らを有罪としたのに対し、原判決(二審判決)は、被害者はBであり、同人からの適法な告訴があつたことが認められるから、一審判決の右事実誤認は、犯罪の成否に影響を及ぼさない事項に属するとして、被告人らの控訴を棄却したことが認められる。しかし、一審判決の認定した事実を基礎とすれば、本件は訴訟条件を欠き、公訴棄却の裁判がなされるべき場合であつたのであるから、これを目して犯罪の成否に影響を及ぼさない事実誤認として、そのまま控訴を棄却した原審の処置は、相当ではなかつたといわなければならない。しかしながら、原審の認定するところによれば、本件被害者はBであり、また、その認定を肯認するに足りる証拠も存在する。そうだとすれば、訴訟条件も完備しているのであるから、原判決の前記判断のあやまりも、未だ判決に影響を及ぼすべき法令違反とはいえない。
  4. 器物損壊(最高裁判決昭和45年12月22日)
    1. 刑法261条の毀棄罪の告訴権者
      刑法261条の毀棄罪の告訴権者は、毀棄された物の所有者には限られない。
    2. 刑法261条の毀棄罪の告訴権者にあたるとされた事例
      ブロツク塀、その築造されている土地およびその土地上の家屋の共有者の一人の妻で、右家屋に、米国に出かせぎに行つている夫のるすを守つて子供らと居住し、右塀によつて居住の平穏等を維持していた者は、右塀の損壊により害を被つた者として、告訴権を有する。

前条:
刑法第263条
(信書隠匿)
刑法
第2編 罪
第40章 毀棄及び隠匿の罪
次条:

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