刑法第96条の6
条文
編集(公契約関係競売等妨害)
- 第96条の6
- 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
- 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
改正経緯
編集2022年改正
編集2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
2011年改正
編集2011年改正に伴い、刑法第96条の3に定められていた条項につき修正を加え移動。
- (競売等妨害)
- 第96条の3
- 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札の公正を害すべき行為をした者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。
- 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
解説
編集談合罪
参照条文
編集判例
編集- 競売入札妨害(最高裁決定 昭和28年12月10日)
- 旧刑法第96条ノ2第2項のいわゆる談合罪の成立要件
- (旧)刑法第96条ノ2第2項所定の談合罪が成立するためには、公の競売または入札において「公正ナル価格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的」で競争者が互に通謀して或る特定の者をして契約者たらしめるため、他の者は一定の価格以下または以上に入札しないことを協定するだけで足るのであり、それ以上その協定に従つて行動したことを必要とするものではない。
- 旧刑法第96条ノ2第2項の「公正ナル価格」の意義
- いわゆる「公正ナル価格」とは、入札なる観念を離れて客観的に測定さるべき公正価格をいうのではなくて、当該入札において、公正な自由競争によつて形成されたであろう落札価格をいう。
- 旧刑法第96条ノ2第2項のいわゆる談合罪の成立要件
- 公入札妨害恐喝(最高裁判決 昭和32年01月22日)
- 「公正ナル価格」の意義
- いわゆる「公正ナル価格」とは、入札を離れて客観的に測定さるべき価格をいうのではなく、その入札において公正な自由競争が行われたならば成立したであろう落札価格をいう。
- 「不正ノ利益」の意義
- 「不正ノ利益」とは、談合による利益が社会通念上いわゆる「祝儀」の程度を越え、不当に高額である場合をいう。
- 「談合」の意義
- 「談合」とは、競売、入札の競争に加わる者がたがいに通謀し、その中の特定の者を落札者ないし競落者たらしめるため、他の者は一定の価格以下または以上に入札または付値しないことを協定することである。
- 「公正ナル価格」の意義
- 不正談合(最高裁判決 昭和32年01月31日)
- 談合が「公正ナル価格ヲ害」すると認められる事例
- 工事の請負入札につき初めから自由競争を避けるため落札者および落札価格を協定し、協定により定めた者が落札者となつた場合は、その者は落札価格の3%の談合金を提供し、その金の一部をもつて落札者を含めた入札指名者間の飲食費にあて、残金は入札指名者間で分配することを知悉しながら、入札に際し、かかる協定をして入札、落札し、談合金合計305,300円を費消、分配したときは、その落札価格は、入札施行者に対し、少くともその3%が公正な自由競争によつて形成されたであろう価格よりも不利益な価格であると推認される。
- 「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シ」た場合にあたる事例
- 談合金が落札金額の約3%で(合計305,300円)その金額、分配の方法からして社会常識上儀礼的なものその他正当のものと認められないときは、かかる金員の授受を目的とする談合は「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル」ものにあたる。
- 談合が「公正ナル価格ヲ害」すると認められる事例
- 入札談合、贈賄(最高裁判決 昭和32年07月19日)
- 「不正ノ利益」の意義
- 「不正ノ利益」とは、談合による利益が社会通念上いわゆる「祝儀」の程度を越え、不当に高額である場合をいう。
- 入札談合(最高裁判決 昭和32年07月19日)
- 「公正ナル価格」の意義
- 「公正ナル価格」とは、当該入札において公正な自由競争によつて形成されたであろう落札価格をいうのであつて、入札なる観念を離れて客観的に測定さるべき公正価格、または「公正な自由競争により最も有利な条件を有する者が実費に適正な利潤を加算した額で落札すべかりし価格」をいうのではない。
- 入札談合等(最高裁判決 昭和32年12月13日)私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和28年法第律259号による改正前のもの)4条1項
- 背任、公入札妨害(最高裁決定 昭和37年02月09日)
- 「偽計ヲ用ヒ公ノ入札ノ公正ヲ害スヘキ行為ヲ為シタル者」に該当する事例
- 町教育委員会の決議に基き、小学校の改築工事が敷札による競争入札により、敷札に最も近い入札者を落札者とすることとされ、且つ敷札額の決定は、同町長、同町議会議長、同副議長たる被告人及び同教育委員長の四名に一任された場合、被告人が右敷札額を特定の入札予定者のみに内報し、同人をしてこれに基き入札させた所為は、刑法第96条ノ3第1項にいわゆる「偽計ヲ用ヒ公ノ入札ノ公正ヲ害スヘキ行為ヲ為シタル者」に該当する。
- 入札妨害、談合(最高裁判決 昭和41年09月16日)
- 入札妨害罪の成立に必要な「公ノ入札」が行なわれたか否かの判断基準
- 入札妨害罪の成立に必要な「公ノ入札」が行なわれたというためには、権限のある機関によつて、適法に入札に付すべき旨の決定がなされたことが必要であり、かつそれをもつて足りる。
- 恐喝、競売入札妨害(最高裁決定 昭和58年05月09日)
- 威力入札妨害罪が成立するとされた事例
- 地方公共団体が行う指名競争入札に関し、他の指名業者に対し自社を落札者とすることの談合を持ちかけ、これに応じなかつた会社の代表取締役に脅迫を加えて右談合に応ずるよう要求したときは、威力入札妨害罪が成立する。
- 強要罪との関係は?
- 競売入札妨害(最高裁決定 平成10年07月14日)
- 裁判所に対する虚偽の賃貸借契約書の提出と競売入札妨害罪の成否
- 不動産競売の開始決定がされた不動産について、その売却の公正な実施を阻止するため所有者との間で右決定より前に短期賃貸借契約が締結されていた旨の内容虚偽の賃貸借契約書を裁判所に提出したときは、偽計による競売入札妨害罪が成立する。
- 競売入札妨害(最高裁決定 平成10年11月04日)
- 最高価買受申出人に対する威力の使用と競売入札妨害罪の成否
- 不動産の競売における入札により最高価買受申出人となった者に対し、威力を用いてその入札に基づく不動産の取得を断念するよう要求したときは、競売入札妨害罪が成立する。
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