日本国憲法第82条
条文
編集【裁判の公開】
- 第82条
- 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
- 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
解説
編集参照条文
編集判例
編集- 家屋明渡調停事件の決定に対する再抗告につきなした決定に対する抗告(最高裁決定 昭和31年10月31日)憲法第32条
- 調停に代わる裁判の合憲性
- 家屋明渡請求訴訟事件につき、戦時民事特別法第19条第2項、金銭債務臨時調停法第7条第1項によつてなされた調停に代わる裁判は、憲法第11条、第13条、第22条、第25条、第32条に違反しない。
- 本件調停に代る裁判所の裁判は裁判所でない他の機関によつてなされたものではなく、同裁判所が戦時民事特別法19条2項、金銭債務臨時調停法7条1項によつてなしたものであること記録上明らかであつて、これも一の裁判たるを失わないばかりでなく、この裁判には抗告、再抗告、特別抗告の途も開かれており抗告人の裁判を受ける権利の行使を妨げたことにならないから、憲法に違反するものでない旨判断している。そして、原決定の右判断は正当であると認められるから、憲法32条違反の主張はその理由がない。
- 抗告人は、本件調停に代る裁判並に原裁判が非公開の中に決定された違憲ありというが、右各裁判は対審乃至判決の手続によるものではないから、違憲の主張はその前提を欠く。
- (関係法令)
- 戦時民事特別法19条2項趣旨
- 金銭債務臨時調停法7条及び8条を、借地借家調停法による調停に準用。
- 金銭債務臨時調停法7条1項趣旨
- 同条所定の場合に、裁判所が一切の事情を斟酌して、調停に代え、利息、期限その他債務関係の変更を命ずる裁判をすることができ、また、その裁判においては、債務の履行その他財産上の給付を命ずることができる。
- 金銭債務臨時調停法8条趣旨
- その裁判の手続は、非訟事件手続法による.
- 戦時民事特別法19条2項趣旨
- 調停に代わる裁判に対する抗告についてなした棄却決定に対する再抗告(最高裁決定 昭和35年7月6日)憲法第32条
- 純然たる訴訟事件につきなされた調停に代わる裁判の効力。
- 戦時民事特別法第19条第2項、金銭債務臨時調停法第7条に従い、純然たる訴訟事件についてなされた調停に代わる裁判は、右第7条に違反するばかりでなく、同時に憲法第82条、第32条に照らし違憲たるを免れない。
- 若し性質上純然たる訴訟事件につき、当事者の意思いかんに拘わらず終局的に、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によつてなされないとするならば、それは憲法82条に違反すると共に、同32条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない。
- 金銭債務臨時調停法7条の調停に代わる裁判は、単に既存の債務関係について、利息、期限等を形成的に変更することに関するもの、即ち性質上非訟事件に関するものに限られ、純然たる訴訟事件につき、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定する裁判のごときは、これに包含されていない。この限りにおいて、昭和31年10月31日最高裁決定の判例は変更される。
- (事件概要)
- 家屋明渡請求及び占有回収請求事件において、各係属中に東京地方裁判所は職権をもつて各別に戦時民事特別法により、自ら借地借家調停法による調停により処理する旨を決定。しかし調停が不調となり、金銭債務臨時調停法7条1項、8条の規定により、右両事件を併合して調停に代わる決定をなしたもの。
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