法学民事法コンメンタール民法第5編 相続 (コンメンタール民法)

条文

編集

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)

第1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

改正経緯

編集

2018年改正により新設。

第1042条に定められていた以下の条項の趣旨を継承。

(減殺請求権の期間の制限)

減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。
(参考)
明治民法第1145条
減殺ノ請求権ハ遺留分権利者カ相続ノ開始及ヒ減殺スヘキ贈与又ハ遺贈アリタルコトヲ知リタル時ヨリ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス相続開始ノ時ヨリ十年ヲ経過シタルトキ亦同シ

解説

編集
遺留分侵害額請求権の消滅時効について定める。相続手続きが不安定となることを回避するため短期時効となっている。

参照条文

編集

判例

編集

改正前条項(旧・第1042条

いずれも、法改正により適用機会はない
  • 土地建物所有権移転登記等請求(最高裁判決 昭和35年07月19日)民法第1040条
    転得者に対する減殺請求権の消滅時効の起算点
    受贈者から贈与の目的物を譲り受けた者に対する減殺請求権の一年の消滅時効の期間は、遺留分権利者が相続の開始と贈与のあつたことを知つた時から起算すべきである。
  • 所有権持分移転登記等(最高裁判決 昭和57年03月04日)
    遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等と民法第1042条所定の消滅時効
    遺留分減殺請求権の行使の効果として生じた目的物の返還請求権等は、民法第1042条所定の消滅時効に服しない。
  • 共有持分移転登記手続(最高裁判決 平成7年06月09日)民法第167条,民法第884条
    遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効
    遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない

参考

編集

明治民法において、本条には財産分離における相続人の固有財産からの弁済に関する以下の規定があった。趣旨は、民法第948条に継承された。

財産分離ノ請求ヲ為シタル者及ヒ配当加入ノ申出ヲ為シタル者ハ相続財産ヲ以テ全部ノ弁済ヲ受クルコト能ハサリシ場合ニ限リ相続人ノ固有財産ニ付キ其権利ヲ行フコトヲ得此場合ニ於テハ相続人ノ債権者ハ其者ニ先チテ弁済ヲ受クルコトヲ得

前条:
民法第1047条
(受遺者又は受贈者の負担額)
民法
第5編 相続
第8章 遺留分
次条:
民法第1049条
(遺留分の放棄)


このページ「民法第1048条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。