民法第405条
条文
編集解説
編集- 法定重利又は組入権について定めた条項。
- 一定の要件の下においてのみ、当事者間の合意なく利息を元本に繰り入れることができることを定める。これを「法定重利」という。即ち、日本の民法(及び民事法一般)においては、単利計算が原則であり、複利計算は、当事者間の合意による例外であること(これを「約定重利」という)を定めている。
要件
編集- 利息の1年以上の不払い。
- 債権者による催告(民法第153条)。
- 2.の催告後の不払い。
効果
編集債権者は、当該利息債権を元本に組み入れることができる。
- 組入れできる債権は、催告後、支払われなかった金額。
- 組入れの期日は、組入れが適状になってから、債権者の指定する日(形成権)。反対解釈としては、それまで、独立した債権ではなかったこととなるため、遅延損害金等の対象ではない。
- 元本に組入れると、利息債権としての性質(附従性等)を失う。なお、約定重利は、当然に附従性を失うものではない。
意義
編集実効上の意義
編集本条項に従えば、①1年以上の支払遅滞、②催告、③組入れの意思表示と非常に迂遠な手続きとなるため、現在の経済実務においては、契約等で複利計算を定めることが一般的であり、手続きを定めた規準としての存在意義は薄い。
宣言としての意義
編集本条項の重要な点は、上にも述べた単利計算が原則であるということである。既述のとおり、経済実務においては契約等で解決を見ているところであるが、前条における法定利息が適用される局面においては、解釈の根拠となる。
(適用例)
- 利息制限法超過支払利息の返還訴訟において、元利充当後の過払い分については、法定利息分を付して請求できるものと解されるが、適用に際しては単利計算による(判例・通説)。
- 逸失利益の計算においては、単利計算を前提とするホフマン式によるべきである(H17年8月9日福岡高裁判決)。なお、現在の裁判実務の主流は、複利計算を前提とするライプニッツ式であり、本条項に照らし合わせると違法な状態であるということができる。(2017年改正で新設された、民法第417条の2を参照)
参照条文
編集判例
編集- 所有権移転登記手続等請求 (最高裁判例 昭和45年4月21日)利息制限法第1条
- 年数回の組入れを約する重利の予約と利息制限法
- 年数回の利息の組入れを約する重利の予約は、毎期における組入れ利息とこれに対する利息との合算額が、本来の元本額に対する関係において、一年につき利息制限法所定の制限利率により計算した額をこえない限度においてのみ有効である。
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