法学環境法自然環境保全法コンメンタール自然環境保全法

条文

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(行為の制限)

第17条

  1. 原生自然環境保全地域内においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。ただし、環境大臣が学術研究その他公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合又は非常災害のために必要な応急措置として行う場合は、この限りでない。
    建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
    宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地の形質を変更すること。
    鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
    四 水面を埋め立て、又は干拓すること。
    河川湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
    六 木竹を伐採し、又は損傷すること。
    七 木竹以外の植物を採取し、若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること。
    八 木竹を植栽すること。
    九 木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと。
    十 動物を捕獲し、若しくは殺傷し、又は動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
    十一 動物を放つこと(家畜の放牧を含む。)。
    十二 火入れ又はたき火をすること。
    十三 廃棄物を捨て、又は放置すること。
    十四 屋外において物を集積し、又は貯蔵すること。
    十五 車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
    十六 前各号に掲げるもののほか、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
  2. 前項ただし書の許可には、当該原生自然環境保全地域における自然環境の保全のために必要な限度において、条件を附することができる。
  3. 原生自然環境保全地域内において非常災害のために必要な応急措置として第一項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、環境大臣にその旨を届け出なければならない。
  4. 原生自然環境保全地域が指定され、又はその区域が拡張された際当該原生自然環境保全地域内において第一項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から起算して三月間(その期間内に同項ただし書の許可を申請したときは、許可又は不許可の処分があるまでの間)は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該行為をすることができる。
  5. 次の各号に掲げる行為については、第一項及び第三項の規定は、適用しない。
    一 原生自然環境保全地域に関する保全事業の執行として行なう行為
    二 通常の管理行為又は軽易な行為のうち、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもので環境省で定めるもの

解説

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第1項は、原則として禁止される行為について定めている。原生自然環境保全地域は「その区域における自然環境が人の活動によつて影響を受けることなく原生の状態を維持」(第14条)される地域であり、条文のとおりに列挙されている。

これらの禁止事項から、原生自然環境保全地域に指定された場合における、宅地、農地としての利用の困難さ、林業漁業を行うことへの制約の厳しさ、制限される私権の大きさを考えられたい。

禁止の例外として、ただし書に、環境大臣が学術研究その他公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合、非常災害のために必要な応急措置として行う場合が定められている。

第2項は、環境大臣が、第1項ただし書の許可には、当該原生自然環境保全地域における自然環境の保全のために必要な限度において、条件を附することができるというものである。

第3項は、原生自然環境保全地域内において非常災害のために必要な応急措置として第1項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して14日以内に、環境大臣にその旨を届け出なければならない、という規定である。

第4項は、原生自然環境保全地域が指定され、又はその区域が拡張された際当該原生自然環境保全地域内において第1項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定又は区域の拡張の日から起算して3カ月間(その期間内に同項ただし書の許可を申請したときは、許可又は不許可の処分があるまでの間)は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該行為をすることができる、という規定である。

第5項は、第1項の禁止等、第3項の届出に関する規定が適用されない対象についての規定である。第1号が原生自然環境保全地域に関する保全事業の執行(第16条)として行なう行為、第2号が通常の管理行為又は軽易な行為のうち、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもので環境省令で定めるものを規定している。第2号でいう「環境省令」は、次のものである。

  • 自然環境保全法施行規則

(原生自然環境保全地域内における行為の制限の対象とならない行為) 第3条  法第十七条第五項第二号 の環境省令で定める行為は、次の各号に掲げるものとする。

一 森林の保護管理又は野生鳥獣の保護増殖のための標識を設置すること。
砂防法 (明治三十年法律第二十九号)第二条 の規定により指定された土地、地すべり等防止法 (昭和三十三年法律第三十号)第三条 に規定する地すべり防止区域又は河川法 (昭和三十九年法律第百六十七号)第六条第一項 に規定する河川区域の管理のために標識、くい、警報器、雨量観測施設、水位観測施設その他これらに類する工作物を設置すること。
測量法 (昭和二十四年法律第百八十八号)第十条第一項 に規定する測量標又は水路業務法 (昭和二十五年法律第百二号)第五条第一項 に規定する水路測量標を設置すること。
四 気象、地象、地動、地球磁気、地球電気又は水象の観測のための施設を改築し、又は増築すること。
漁業法 (昭和二十四年法律第二百六十七号)第六条第一項 に規定する漁業権又は同法第七条 に規定する入漁権に基づき水産動植物を捕獲し、若しくは殺傷し、若しくは採取し、若しくは損傷し、又はこのために漁具を設置すること。
民法 (明治二十九年法律第八十九号)第二百六十三条 及び第二百九十四条 に規定する入会権又は地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十八条の六第一項 に規定する権利に基づき木竹以外の植物を採取し、若しくは損傷し、又は落葉若しくは落枝を採取すること。
森林病害虫等防除法 (昭和二十五年法律第五十三号)第六条第一項 の規定による立入検査に伴い木竹を伐採し、又は損傷すること。
八 国又は地方公共団体の試験研究機関が、試験研究のために、農林水産物に対する病害虫等(それらの卵を含む。)を捕獲し、若しくは殺傷し、又は採取し、若しくは損傷すること(あらかじめ、環境大臣に通知したものに限る。)。
文化財保護法 (昭和二十五年法律第二百十四号)第百九条第一項 の規定により指定され、又は同法第百十条第一項 の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物の保存のための行為(建築物を新築すること及び土地の形質を変更することを除く。)
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 (平成十六年法律第七十八号)第三章 の規定による防除に伴う特定外来生物の捕獲、採取又は殺処分を行うこと。
十一 遭難者の救助に係る業務を行うために犬を放つこと。
十二 原生自然環境保全地域内で捕獲した動物を捕獲後直ちに当該捕獲をした場所に放つこと。
十三 法令又はこれに基づく処分による義務の履行として行う行為
十四 前各号に掲げるもののほか、建築物その他の工作物(以下単に「工作物」という。)の修繕のための行為
十五 前各号に掲げる行為に付帯する行為

参照条文

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前条:
自然環境保全法第16条
(原生自然環境保全地域に関する保全事業の執行)
自然環境保全法
第3章 原生自然環境保全地域
第2節 保全
次条:
自然環境保全法第18条
(中止命令等)


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