会社法第13条
条文
編集(表見支配人)
- 第13条
- 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
改正経緯
編集制定経緯
編集解説
編集参照条文
編集判例
編集- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和37年1月19日)
- 会社の東京出張所長が表見支配人にあたるとされた事例
- 会社の東京出張所が或る範囲において、本店から離れて独自に営業活動を決定し、対外的に取引をなしうる組織を有し、支店たる実体を備えている場合には、その出張所長は商法第42条の表見支配人にあたる。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和37年5月1日)
- 保険会社の支社長が商法第42条にいう「支店」の営業の主任者にあたらないとされた事例
- 保険会社の支社が、新規保険契約の募集と第一回保険料徴収の取次のみをその業務とし、保険会社の基本的事業行為たる保険契約の締結、保険料の徴収ならびに保険事故ある場合の保険金の支払業務を独立してする権限、組織を有しない場合、その支社長は商法第42条にいう「支店」の営業の主任者にはあたらない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和38年4月19日)
- 商法第42条第1項の規定により支店長が支店の支配人と同一の権限を有するものとみなされた事例。
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- 原判決が本件D支店長Eが商法42条の規定により、裁判外の行為については、D支店の支配人と同一の権限を有するものと見做される旨判示したことは原判決が認定する控訴会社(上告人)がD支店設置の登記をなしている事実その他原判決挙示の事実関係からこれを肯認し得るところである。
- 登記をなしている支店における長として会社は遇しているのだから、登記がなくとも同支店における支配人と第三者が誤認しても仕方がない。
- 原判決が本件D支店長Eが商法42条の規定により、裁判外の行為については、D支店の支配人と同一の権限を有するものと見做される旨判示したことは原判決が認定する控訴会社(上告人)がD支店設置の登記をなしている事実その他原判決挙示の事実関係からこれを肯認し得るところである。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和39年3月10日)
- 出張所長が商法第四二条の表見支配人にあたるとされた事例。
- 肥料販売会社の支店管下の出張所が、相場の著しい変動ある肥料の仕入にはとくに右支店の許可を要するが、それ以外はこれを要せずに仕入をすることもでき、年間4千万円にも達する肥料を所在県下に販売し、それに伴う運送ならびに代金の回収等を行い、出張所長の下に3名の職員を使用し、職員の給料を除いて日常経費を原則としてその取立金でまかなう等判示のようなものであるときは、右出張所を商法上の支店と解して妨げないから、同出張所長は、商法第42条の表見支配人にあたると解すべきである。
- 損害賠償等請求(最高裁判決 昭和44年11月21日)民法第715条
- 被用者の取引行為を職務権限内の行為と信じた相手方に重大な過失がないとされた事例
- 甲が、金融業者乙の被用者であるが代理権を有しない丙との間に、乙の不動産を買い受ける契約を締結し、代金を丙に支払うに際し、売買契約書等の表示、乙に対する登記抹消の訴に関する予告登記の存在、交渉中における代金減額の経過など、原判示のような丙の権限を疑うべき事情があるのにかかわらず、丙を乙の支配人と紹介した仲介人の言葉のみを信用し、丙の代理資格および売買の意思の有無につき乙に問い合わせるなどの調査をすることなく、丙にその権限があるものと信じて、右契約を締結し多額の代金を丙に支払つた場合であつても、甲がこのように信じたことにいまだ重大な過失があるとはいえず、甲は、乙に対し、民法715条に基づき損害賠償を請求することを妨げられない。
- 小切手金請求(最高裁判決 昭和51年10月1日)民法第93条
- 信用金庫の表見支配人が自己の利益を図るためにした行為と信用金庫の責任
- 信用金庫法40条、商法42条、38条1項に基づく信用金庫の責任は、相手方が善意である限り、表見支配人のした行為の目的のいかんにかかわらず、これを免れないが、行為者の意図が自己の利益を図るにあり、かつ、相手方が右の意図を知り又は知りうべかりしときには、民法93条但書の類推適用により、その責に任じない。
- 小切手金(最高裁判決 昭和54年5月1日)商法第38条(現会社法第11条又は商法第21条)
- 信用金庫の表見支配人による先日付の自己宛小切手の振出しと商法38条1項にいう営業に関する行為
- 信用金庫の表見支配人がその個人的な負債の返済資金を捻出するためあらかじめ資金の預入れがないのに先日付の自己宛小切手を振り出した場合であつても、右振出しは商法38条1項にいう営業に関する行為にあたる。
- 約束手形金(最高裁判決 昭和59年3月29日)
- 商法42条(現本条)2項[相手方悪意時の不適用]にいう相手方の意義
- 商法42条(現本条)2項にいう相手方とは当該取引の直接の相手方に限られ、手形行為の場合には、この直接の相手方は、手形上の記載によつて形式的に判断されるべきものではなく、実質的な取引の相手方をいうものと解すべきである。
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