前項で述べたように,真の分数式は,
のような項の和であらわされた.ところで,
と変形できるから、真分数は、
ような項の 1 次結合で表されることが分かる.これらの原像を求めることができれば,我々の問題は解けたことになるのである.
ところで 第一移動定理
を想い起こせば,
の原像が計算できればよい.第 1 のものの原像,および第 2, 第 3 のものの に対する原像はすでに分かっているから,
の原像が求まればよいことになる.もっともこれらの原像は形式的には,
および,
と知られているのであるが,この右辺の合成積を計算するのがやっかいである.その簡単な計算法が見つかればよい.
まず合成積の微分の公式,
を思い出そう.そうすれば
とおくとき,
(2.32b)
[1]
となるから,
(2.32c)
を得る.この結果は は明らか[2]であるから,対応 からも直ちに出る. の場合にすでに用いた技法である.
さて,後で必要になるもう一つの公式を導いておこう.上述の記号を用いると,
であるが,これをもう一度微分する.
[3]
よって次の結果を得る.
公式 1
(2.33)
[4]
さて,合成積の微分の公式は,通常の積の微分の構造:
を持っていない.同様な構造を持つものは,単に を掛けるという演算である.
補題 2.3
証明
合成積に対しては を掛けるという演算が微分の構造を持っているので,次のような計算ができる.
とおくと,
(2.33b)
を得る[5].とくに,
のときは,
(2.34)
となる.
なぜ合成積に対しては を掛けることが微分することを意味するのかは,Laplace 変換の像関数の世界で考えてみれば納得できるが,それは後ほど説明することにして,本題に入ろう.
公式 2
とおけば,
(1)
(2.34b)
(2)
証明
(1) を示せばよい[6].
(2.21)
であったから,
(2.32b)
となる.これに式 (2.34) を考慮すれば,
[7] を得る.
(2) 上の結果 (1) を二度用いると、
となるが,これと式(2.33) の結果,
を等置すれば,求める結果を得る.