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商標法の教科書。

概論

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商標法による商標の登録制度によって商標は保護が可能であるが、そもそも具体的な効力は何か。

商標が登録されると、その商標の権利者は、権利を持たない他者に対し、登録商標と同一の文言または類似の文言を使用することを、排除する事ができる(25条、37条1号)[1]

法目的

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何が「商標」か?

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商標は英語で trademark という[2][3]

誤った定義のものとして、トレードマークの一部を商標と分類したり、あるいはブランドマークを商標の定義としたりなどの通俗的言説が見られる場合もあるが、法学的にはそうではない[4]

なおサービスマークは、かつては商標ではなかったが、平成3年の法改正により、サービスマークも商標として登録可能になった[5]

商標法では、「商標」とは

人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

と商標法2条で定められているものの、この場合の「標章」や「業」や「商品」とは何かという問題に突き当たる。

なので初学者は結局、実際に商標として行政に登録されているものの具体例をいくつか知るしかない。

たとえば、携帯音楽プレーヤーの「Walkman」(ウォークマン)は商標である[6]

タブレット端末の「iPad」も商標である[7]

※ 裏を返すと(参考文献では指摘されてないが)、「携帯音楽プレーヤー」という文言は商標ではない事になるだろう。「タブレット端末」という文言も同様、商標ではないだろう。

Walkman や iPod は、2条1項1号「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」に該当すると考えられる。 このような1号に該当する事例の商標のことを「商品商標」という。

一方、サービスマークの商標のことは「役務商標」といい[8]、商品商標とは区別される。


なにも家電製品に限らず、たとえば医薬品でも商標はあり、『正露丸』は商標である。なお、「正露丸」は登録商標であるが、しかし昭和49年の裁判(最高裁)により「正露丸」は普通名称とみなされる事になった[9]。「セロファン」、「桜餅」(さくらもち)、「ういろう」など、元は商標だったものが現在では判例などにより普通名称化している[10]。。

さて、(サロンパスなどの)シップ薬の「ヒサミツ」も、商標である[11]。「ヒサミツ」は、久光製薬という会社のものであるが、このように会社名の一部であっても商標にもなりうる。

宅配便の「クロネコ」は、2項「二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。) 」に該当すると考えられ、このような2項該当事例の商標のことを「役務商標」という[12]


なお運送業において、「宅配便」というだけの文言は、商標としては認められない[13]

商標として認めらえれるための前提条件としては、他社商品と区別できるような自他識別能力をその商標が備えている必要がある。しかし「宅配便」という文言を用いても、これは同様の宅配サービスを行う他者も自然に使いうる普通名称であるので、商標として認められない。

同様に、チョコレート菓子をつくる会社において「チョコレート」というだけの文言も、商標としては認められない。


事後的な説明になるが、上述のように、商品の自他識別能力を欠いて一般的に用いられる名称のことを普通名称という[14]。商標法3条が、主に自他識別能力を欠く商標は商標登録を認められないことについて定めている。


ややこしい例として、「ホッチキス」がある。「ホッチキス」とはもともとステープラー社の商標であったのだが、しかし現代日本ではこれは普通名称として認められている。このように、査定時には普通名称でなくても、事後に社会において普通名称化する場合があり、その場合はもとの商標権者は結果的に権利の制限を受けた事になる[15]


その他、アルミニウムを作っている企業が商品名に「アルミ」とつけるのも、これは普通名称とみなされるため、商標権は認められない[16][17]


ヒサミツの由来は企業名であるが、しかしヒサミツは商品商標である。このように、企業名に由来していても、その使い道から商品商標である場合もある。


このように役務との関係において、商標の合法性は判断されるので、なので商標出願の際にも、どの業種であるかといった役務を記述する欄がある。たとえばコーヒーは商標区分「30類」のように、あらかじめ特許庁など行政当局によって制定されている。出願の際には、出願しようとしている商標の商標区分を記述する必要がある。 「商標法施行令」などの政令で区分が上述のような定められている。時代によって区分が変わっているかもしれないが、2010年台においては45種類の区分があり、うち商品が34分類、役務が11分類である[18]


著作物に関して、作者や出版社でもない他人が商標登録をして、登録される場合がある。

たとえば、ポパイ・アンダーシャツ事件[19](大阪地判 昭和51.2.24 無体裁集8巻1号102号)という裁判例があり、欧米の漫画『ポパイ』も名前や絵柄のあるシャツの商標訴訟であるが、しかしこの事件で原告となった者は、著作者ではない。このアンダーシャツ事件の場合、むしろ被告のほうが著作権者からの許諾を得ていた[20]

ともかく、このポパイシャツの裁判では、裁判官は「ポパイ」およびその絵柄は、単に「面白い感じ」「楽しい感じ」などを表現したものにすぎないと認定しており、商品の製造元などの目印とならない旨を判決文などで述べていたが、しかし上述のような原告が著作権者ではないという背景事情が隠れている。なので法学としては、この判決文をそのまま信じないように注意する必要がある。

漫画『ポパイ』に関する別の事件であるポパイ・マフラー事件では、最高裁によって原告の権利濫用だと判断されている[21][22]

このように、登録商標と言えども、権利濫用など何らかの理由によって制限される事もありうる。


さて、日本において商標権としての保護を受けるには、事実上、特許庁に保護を受けようとする商標について登録されるように出願しなければならない[23]

このように、商標登録を商標権保護の条件とする方式のことを「登録主義」[24]という。日本の商標制度はもちろん登録主義である。


ただし、日本の商標制度は登録主義と言えども、ある商標が業者Xによって登録される以前から、同じ名称を登録せずに使用していた別業者Yは、Xの登録後でも引き続きYはその商標を使い続ける事ができ、このような権利のことを「先使用権」という[25][26]


なお、日本の商標制度では、似たような文言の商標が別々の人達によって異なる日に出願された場合、先に出願されたほうを優先して登録する。このような精度のことを「先願主義」という[27]。つまり、日本の商標制度は登録主義であり、先願主義でもある。ただし、同一日に出願された場合は、先願主義は働かない[28]。なお、出願日をどう判定するかは、5条の2第1項に記載がある。

先願の反対語は「後願」である。つまり日本では、異なる日に後願された願書は登録されないのが原則である[29]


暗黙の前提だが、商標の出願は願書などの書面を中心に行われる。なので日本の商標制度は「書面主義」である[30]。これは裏を返せば、口頭主義ではない[31]という事でもある。


また、商標登録の出願に置いて、特許庁など行政によって登録要件が満たされている事などの審査が行われる方式のことを「審査主義」という。日本の商標制度はもちろん、審査主義である。

一応、学問的には、未登録商標などの可能性も考えられるが、あまり実用的ではない。


上述の「先使用権」や、ポパイ事件のような権利濫用による制限など、登録主義が原則と言えども、総合的な判断にもとづき、何らかの制限を受けることがある。

海外や古い時代に当たっては、商標が未登録であっても使用の事実があれば保護尊重される「使用主義」という考え方もあるが、しかし現代日本の商標制度はあまり使用主義とはいえないだろう。


なお、古くの商標は文字および記号や図形などの印刷的なものであったが、しかし平成26年の法改正によって音のみからなる音商標も登録可能になった[32]

参考文献

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  • 小野昌延ほか『新・商標法概説 第3版』、青林書院、2021年7月15日 第3版 第1刷
  • 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行
  • 愛知靖之ほか、『知的財産法』有斐閣、2018年4月30日 初版第1刷発行
  • 茶園成樹『商標法 第2版』、有斐閣、2018年9月25日 第2版 第2刷 発行
  • 『Q&A 商標・意匠・不正競争防止法 ~大阪の弁護士が解説する知的財産権~』、大阪弁護士会知的財産権委員会 出版プロジェクトチーム、平成28年9月20日 初版第1刷 発行

各論・雑論

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※とりあえずの記述

商標は特許庁が扱うが、商標権は特許権とは異なる権利制度である。基準となる法令も異なり、発明などを保護する特許権については特許法が基準となり、商標を保護する商標権については商標法が基準となる[33]。意匠登録の制度については意匠法の範囲である。 なお、商標法のほかにも商標を保護する法律が存在しており、限定的ではあるが、不正競争防止法において、商標のほか商号などの表示の保護の規定がある(不正競争防止法2条1項)[34]。なお、「商号」とはメーカー名のことであり、商標とは意味が異なる。商号の登記先は(特許庁ではなく)法務局である[35]。現代日本では(2021年に本文記述)、商号と同じ文言を商標登録する事も可能である[36]。 なお、商標法による商標の保護には登録およびそのための審査・出願が必要だが、不正競争防止法による商標・商号など表示の保護は登録が不必要である事が特徴のひとつである[37]

※ 本ページでは今後、特に断りのないかぎり、商標法を中心に述べるとする。

商標法による登録商標の存続期間は10年で満了であるが(商標19条1項)、商標権には存続期間の更新の制度があり(19条2項・3項)、更新を繰り返すことにより存続期間を延長する事が出来る[38][39]

更新には更新料が必要となるので、使用しない商標などの登録を淘汰して整理する事につながる。

なお、後述する国際協定のマドリッド・プロトコルにおける国際商標の存続期間も10年であり、更新の制度がある[40](マドプロ7条)。


商標法上の条文では特に明記されてはいないが、商標法でいう商品はコンピュータ・ソフトウェアであっても構わない[41]

品質の誤認を生じる恐れのある商標は登録できない。


商標の国際登録についてはマドリッド・プロトコルという国際制度がある。


特許庁の役人と言えども決して万全無欠ではなく、人間であるのでミスをする。このため、不適切な商標が登録される事もある。

なので商標法では、登録された商標の取り消しを求める無効審判という制度もあり、商標法46条などで規定されており、利害関係者のみが審判を請求する事ができる[42](商標法46条2項)。

この無効審判の制度に加えて、さらに判例などによって権利濫用の制限など(ポパイマフラー事件など)もあるので、商標登録の瑕疵については、それなりに法的にも対策されている[43]と言えるだろう。


前提として、特許庁は商標の出願があったら、速やかに商標広報などで公開する[44]

商標制度は特許制度とは異なるので、商標登録では発明などの要件は特に必要ない[45]ものとされる。


他人の氏名を含む文言は商標登録できない(4条1項8号)。ただし、その他人の承諾を得ている場合は例外である[46][47]。ここでいう「他人」とは日本の自然人に加え、法人や 権利能力なき社団 も含むと考えられている[48]

※ 「権利能力なき社団」とは、実質的には社団だが、法人登記してないので法人格を有しない社団のこと[49]

出願時に該当他人の承諾があったが後日にその当人によって撤回された場合については、判例によると審査時に承諾がなければ登録できない[50]。その他の場合については説明の都合のため本節では解説を省略する(専門書なら解説されているので参照されたし)。


なお、当然だが願書では出願人の氏名の記述が必須である。

出願人の氏名
出願人の住所、
商標登録しようとする商標の記載、
指定商品又は指定役務
商品及び役務の区分

などが願書では必須である(商標法5条1項)。


公共団体の名前は商標登録できない(4条1項1~6号)。


医薬品の「正露丸」はかつて明治時代には「征露丸」という商標であったが、これが「ロシアを征伐(せいばつ)する」という意味として大正時代には国際協調の信義には合わないとして、商標が「正露丸」に変更されるに至った。

商標法4条1項7号では、公序良俗に反する商標の登録を禁じている。征露丸の例も判例となっており、法学書では著名な判例としてよく紹介される[51][52][53]


7号自体には「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」を禁ずるとしか書いてなく、あまり具体的な事は書いてない。

経済産業省のホームページや、書籍などによると、一般的には、

商標自体がきょう激(矯激)、卑わい(卑わい)、差別的なものなどが7号の公序良俗違反に該当すると考えられている。

「善良の風俗」とは社会の一般的な道徳観念のこと[54][55]だと考えられている。

他人に不快な印象を与えるようなもののほか、他の法律によって使用が禁止されている商標、国際信義に反する商標などが、7号の公序良俗違反に該当すると考えられている。差別用語そのまま、または差別的表現なども、公序良俗違反に該当する[56][57]とされる。


政府や地方公共団体などによる博覧会などの賞は、商標登録できない(4条1項9号)。 その博覧会で賞を受けてない者が登録できないのは当然として、たとえ受賞をした者であっても登録できない。

しかし、商標の一部に博覧会の賞を使うことが慣行として存在していた[58][59]

商品の出所の混同を生じるおそれのある商標は、登録できない(4条1項10号~15号)[60]

具体的には、まず、すでに登録済みの他人の商標は、登録できない。これは当然であるが、他人の商標と類似の商標もまた、登録できない[61](4条11号)。 たとえば「ライオン」に外観類似の「テイオン」、「CANON」に外観類似の「CANNON」などは登録できない[62]

商標法の理念に照らし合わせて考えれば当然であろう。


3条などで定められるが、登録しようとしているものに識別能力のある事が登録要件なので、識別能力を欠くものは登録できない。

具体的には、かな1文字、あるいはローマ字1文字または2文字など、極めて簡単で、かつありふれた標章のみからなる商標は、登録を受けることができない(3条1項5号)[63][64]

同様に、円など単純な図形も登録できない(同号)[65][66]

また、こういった単純な文字や図形は、一個人に独占させる事も好ましくない事も、登録が排除される理由となっている[67]

3条1項4号で「ありふれた氏または名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録できないと定められている。 たとえば「山田」のような文字は商標登録できない。「山田太郎」であれば、氏名となるからありふれた氏には該当しなくなる(上述した4条1項8号には該当する。)。 もっとも、ありふれていなければ、本号に該当することはない。 この4号でいう「名称」とは法人の事[68][69]だとするのが定説である。

「商店」のほか、ありふれた氏や業種名の後に「株式会社」、「協会」、「Ltd.」、「Co.Ltd.」などだけの場合も登録できないと考えられている[70][71]。詳しい例は、特許庁の商標審査基準にある[72]


ただし例外的な事例があり、「HONDA」のように使用により自他商品役務識別力を獲得した商標は、そのブランドの権利者であれば商標登録が出来る[73](4号の例外に該当。3条2項。)。


「あずきバー」も商標である[74][75](3号[76]の例外に該当)。


このほか、公益上、一個人に独占させるべきでない文言も、登録できない。

具体的には、「令和」などの現元号、「メートル」や「グラム」や「Net」などの単位などは登録できない[77][78]。3条1項6号に相当するとされる。6号は条文上は識別力を問題にしているが、事実上は独占が公益に望ましくない文言の登録排除を定めた内容となっている[79]

また、登録しようとしている文言が、製品の品質について誤認を生じるおそれのある文言の場合にも登録できない[80]。 しかし、コーヒーのジョージアが必ずしもジョージア州で生産されていなくても登録できないとした最高裁判例もあり[81]、微妙である。


地域団体商標というのが平成17年改正時から採用されており[82]、「神戸ビーフ」[83][84]や「夕張メロン」[85]のような文言が対象である。特に農産物などに関しては、類似の目的をもった別の法律として「特定農林水産物等名称保護法」(略称は「地理的表示法」)というのがあり[86][87](※ 本ページでは説明を省略)、平成26年制定で平成27年施行である。


赤十字標識などと同一または類似のものは商標登録できない(4条1項4号[88][89]。 赤十字だけでなく赤新月も同様、商標登録が禁止されており、特許庁の商標審査基準でも明示されている[90][91]


その他、4条1項の各号により、登録の禁じられるものとして、国際機関の名前(3号)、日本国および外国の名前や国旗(1号)やその国の記章(2号)、などと同一または類似のものも商標登録できない。同一のものが登録できないのは当然として、類似のものも登録できない[92]


その他

「フランク・ミューラー」と「フランク三浦」のパロディ商標

KUMAとPUMA [93]

なお、平成15年の韓国輸入バッグのPUMA事件[94]とは異なる。


分類

商標権は知的財産権の一種である。知的財産権と同じような意味でかつて「工業所有権」という言葉が使われていたので、その言い方にならえば、商標権は工業所有権の一種である[95]とも言える。 知的財産権や工業所有権と同じような意味で「産業財産権」という言葉もあるので、商標権は産業財産権の一種であるとも言える[96]


商品の品質や役務を説明しただけの商標は、登録が困難である(3号、記述的表示(の登録拒否))。

特許庁のPDFなどにもある事例だが、登録の困難な文言の事例として、たとえば「コクナール」(濃くなる?)とか「スグレータ」(優れた?)、「とーくべつ」、「うまーい」などの文言は、登録困難である[97]。これらの文言は、長音符を省いて考察すれば、単に商品の性質を記述したものに過ぎない[98]


図版など画像的な商標において、既存の登録商標と外観の似ているものは排除される。

たとえば、ASAXという商標が、既存の登録商標のAsahi(※ ビールメーカーのほうのロゴ)と似ているとして排除された判例がある[99]。(wikiだと文字だけなので分かり辛いが、ロゴの形状が Asax と Asahi は、だいぶ似ているという事情があった。)


商標の類否判断には、称呼・外観・観念を3点セットのように用いるが、そのうちの1点が類似しているからといって、類似する商標であると判断されるとは限らない。


4条1項17号に、ぶどう酒・蒸留酒などの産地に関する商標の規定があるが、これは国連WTO(世界貿易機関)およびその協定(TROPW協定23条)にもとづく国内法への反映である[100][101]。詳細は別書にゆだねるとして、具体的な例をあげれば、たとえば日本産ワインに「ボルドー」(フランスの地名のひとつで、ワインの産地として有名)のような商標を登録する事はできない結果になる条文内容である[102]


一商標一出願の原則

日本の商標法では、「一商標一出願の原則」が採用されている[103]

日本では、ひとつの願書で出願できる商標はひとつまでであり、この規則のことを「一商標一出願の原則」という。

商標法6条1項では、「商標登録出願は」、一または二以上の商品または役務を願書において指定して、「商標ごとにしなければならない」と規定している[104][105](6条1項)

一商標一出願の原則に違反すると、拒絶理由になる[106][107](15条3号)。

ただし、平成8年の改正により、政令の定める商品・役務の区分に従っている限りなら(6条2項)、ひとつの商標であれば、複数の区分を指定して包括的に出願できる[108][109](多区分一出願制、一出願多区分制ともいう)。このことにより、出願の書類の負担が減った。


査定の結果の流れ

出願商標が審査官による審査の結果、拒絶理由が見つからなければ、その商標は登録査定を受けなければならない(16条)[110]

一方、拒絶理由が発見された場合は、拒絶理由通知を行い(15条の2)、出願人に意見書を提出する機会を与えなければいけない(15条の2)。意見書の機会の後、相応の期間の後、拒絶すべきと審査官が認めたものは拒絶査定となる(15条)[111][112][113]


改造や加工

商標のある商品を無許可で改造・加工して販売すると、商標違反になる判例があり、Nintendo事件が有名である。 Nintendo事件とは、真正商品(未改造品)の家庭用テレビゲーム機にある登録商標「Nintendo」の商標表示をそのままにして販売した会社が、商標違反で訴えられ、平成4年に改造品業者側が敗訴した。判例では、改造により商標の出所表示機能および品質表示機能が害されると認め、それを理由に商標権侵害と判決した。[114] [115] [116]



詰め替え問題

ハイミー事件やマグアンプ事件などが有名である

判例では、商品の小分けなど何らかの事情により真正商品の商品の包装を解き、 再包装すると、商標法違反に問われる場合がある。理由としては、包装を解いたことにより異物混入の可能性や、品質の劣化などにより、真正商品の業者が、再包装後の品質を保証できないからであるとされる。(たとえば昭和41年のヴァンホーテン(ココア)事件[117]など)

ただし、客の目の前で再包装しても商標法違反に問われる場合があり、この場合は学説では批判もされており評価が分かれている[118](マグアンプK事件)。

さらに別の事件の判例では、包装は一切解かずに、バラ売りされていた商品を箱に詰め替え、その箱に商標を付した事例でも商標違反になった判決がある(昭和46年のハイミー事件)。この場合、包装は解いてないので異物混入の可能性は無いが、判決ではそれでも商標権侵害にあたるとした。

判例では、上記のように、商標に絡んだ商品の詰め替えや再包装について、判例では厳格に商標権侵害を問う傾向である。[119][120]


刑事罰など

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他人の登録商標を侵害する事は、商標法により刑事罰の対象となりうる[121]

外国国旗や国際機関の商標などを商標に利用することは、(商標法ではなく)不正競争防止法により禁止されており、刑事罰の対象である(不正競争防止法21条2項7号)[122][123]


主に貿易を想定した規制であるが、代理人が権利者に許可なく(あるいは正当な理由なく)商標使用することは、違法であり、不正競争防止法により禁止されている(不競法2条1項16号)。この16号規制が、商標法ではなく不正競争防止法で規定されている理由は、商標法は属地主義であるので、多国間に渡る規制を行いづらいことが理由である[124][125]。 なお、この16号の規定は、パリ条約や国連WTOの議論に対応したものである[126][127]

教科書

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  • 第一章 総則(第一条・第二条)
    • 法目的
    • 商標
    • 使用
  • 第二章 商標登録及び商標登録出願(第三条―第十三条の二)
    • 商標登録出願
      • 指定商品と指定役務
      • 補完命令
    • 登録要件
      • 3条(自他識別性)
      • 4条
      • その他
    • 団体商標
    • 地域団体商標
    • 補償金請求権
  • 第三章 審査(第十四条―第十七条の二)
  • 第四章 商標権
    • 第一節 商標権(第十八条―第三十五条)
      • 更新
      • 商標権
        • 専用権と禁止権
        • 分割・移転
        • 混同防止表示請求
        • ライセンス
    • 第二節 権利侵害(第三十六条―第三十九条)
      • 侵害論
      • 損害論
    • 第三節 登録料(第四十条―第四十三条)
  • 第四章の二 登録異議の申立て(第四十三条の二―第四十三条の十五)
  • 第五章 審判(第四十四条―第五十六条の二)
    • 商標登録の無効の審判
      • 除斥期間
    • 取消審判
      • 不使用取消審判
      • 不使用取消審判以外の取消審判
  • 第六章 再審及び訴訟(第五十七条―第六十三条)
  • 第七章 防護標章(第六十四条―第六十八条)
  • 第七章の二 マドリッド協定の議定書に基づく特例
    • 第一節 国際登録出願(第六十八条の二―第六十八条の八)
    • 第二節 国際商標登録出願に係る特例(第六十八条の九―第六十八条の三十一)
    • 第三節 商標登録出願等の特例(第六十八条の三十二―第六十八条の三十九)
  • 第八章 雑則(第六十八条の四十―第七十七条の二)
  • 第九章 罰則(第七十八条―第八十五条)
  • 附則
    • 書換登録

判例集

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いわゆる狭義の判例としての最高裁判例の中で原則「商標法」を検索語にして該当したものの中から現行法に適合しないもの、特許法で扱えるものを除外した。1件だけ特許法の判例ではあるが、現行法では商標法のみで適合するものは加えた。なお、本ページ(サブページを含む)やコンメンタールでは、高等裁判所、地方裁判所での判決・決定も適宜言及する予定である。

参考文献

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  • 特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』、発明推進協会(最新版は第20版) - PDFのダウンロードサービスあり
  • 特許庁商標課編『商標審査基準』、発明推進協会(最新版は改訂第13版) - PDFのダウンロードサービスあり

etc...

外部リンク

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このページ「商標法」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。
  1. ^ 角田、P238
  2. ^ 小野昌延ほか『新・商標法概説 第3版』、青林書院、2021年7月15日 第3版 第1刷 発行、10ページ
  3. ^ 茶園成樹編『商標法 第2版』、有斐閣、2018年9月25日 第2版 第2刷 発行、表紙
  4. ^ 小野昌延ほか『新・商標法概説 第3版』、青林書院、2021年7月15日 第3版 第1刷 発行、10ページ
  5. ^ 茶園、P22
  6. ^ 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行、227
  7. ^ 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行、227
  8. ^ 茶園、P26
  9. ^ 小野、P118
  10. ^ 小野、P115
  11. ^ 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行、227
  12. ^ 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行、227
  13. ^ 角田政芳・辰巳直彦『知的財産法 第9版』、有斐閣、2020年4月20日 第9版 第1刷 発行、240
  14. ^ 愛知靖之ほか、『知的財産法』有斐閣、2018年4月30日 初版第1刷発行、353ページ、
  15. ^ 愛知靖之ほか、『知的財産法』有斐閣、2018年4月30日 初版第1刷発行、353ページ、
  16. ^ 特許庁 2021年8月16日に確認
  17. ^ 愛知靖之ほか、『知的財産法』有斐閣、2018年4月30日 初版第1刷発行、353ページ、
  18. ^ 愛知靖之ほか、『知的財産法』有斐閣、2018年4月30日 初版第1刷発行、371ページ、
  19. ^ 茶園、P224
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