会社法第429条
(商法第266条の3 から転送)
法学>民事法>商法>会社法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社 (コンメンタール会社法)>第2編第4章 機関 (コンメンタール会社法)
条文
編集(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
- 第429条
- 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
- 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
- 取締役及び執行役 次に掲げる行為
- イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
- ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
- ハ 虚偽の登記
- ニ 虚偽の公告(第440条第3項に規定する措置を含む。)
- 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
- 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
- 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
- 取締役及び執行役 次に掲げる行為
解説
編集株式会社の役員等の第三者に対する責任を定めた規定である。
- 会社法第440条(計算書類の公告)
- 学説
- 法定責任説-判例・通説
- 第三者を保護するために特に認められた、法定責任とする(不法行為責任とは別個の責任と構成する)。
- 不法行為責任説
- 軽過失については、責任を軽減する趣旨で設けられた、一般不法行為責任の特則とする。
関連条文
編集- 民法第167条(債権等の消滅時効)
判例
編集- 損害賠償請求(最高裁判例 昭和44年11月26日) 商法266条ノ3,商法261条,商法266条
- 商法266条ノ3(現.本条)第1項前段の法意
- 商法266条ノ3(現.本条)第1項前段の規定は、株式会社の取締役が悪意または重大な過失により会社に対する義務に違反し、よつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務塀怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社が右任務解怠の行為によつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被つた場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを定めたものである。
- この規定は、株式会社の取締役が悪意または重大な過失により会社に対する義務に違反し、よつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務懈怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社が右任務懈怠の行為によつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被つた場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを定めたものである。(法定責任説)
- 商法266条ノ3(現.本条)第1項前段の規定は、株式会社の取締役が悪意または重大な過失により会社に対する義務に違反し、よつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務塀怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社が右任務解怠の行為によつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損害を被つた場合であるとを問うことなく、当該取締役が直接第三者に対し損害賠償の責に任ずべきことを定めたものである。
- 株式会社の代表取締役が他の代表取締役その他の者に会社業務の一切を任せきりにした場合と任務の解怠
- 株式会社の代表取締役が、他の代表取締役その他の者に会社業務の一切を任せきりにし、その業務執行になんら意を用いないで、ついにはそれらの者の不正行為ないし任務僻怠を看過するにいたるような場合には、みずからもまた悪意または重大な過失により任務を怠つたものと解すべきである。
- 商法266条ノ3(現.本条)第1項前段の法意
- 損害賠償請求(最高裁判決昭和47年6月15日)商法第14条(名板貸)
- 取締役でないのに取締役就任登記を承諾した者と商法14条の類推適用
- 取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が故意または過失により右登記につき承諾を与えていたときは、同人は、商法14条の規定の類推適用により、自己が取締役でないことをもつて善意の第三者に対抗することができない。
- 商法14条の類推適用により取締役でないことを対抗できない登記簿上の取締役と同法266条の3所定の取締役としての責任
- 株式会社において、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が商法14条の規定の類推適用により取締役でないことをもつて善意の第三者に対抗することができないときは、右の登記簿上の取締役は、その第三者に対し、同法266条の3の規定にいう取締役として、所定の責任を免れることができない。
- 取締役でないのに取締役就任登記を承諾した者と商法14条の類推適用
- 損害賠償請求(最高裁判例 昭和48年05月22日) 商法254条ノ2,商法266条ノ3
- 代表取締役の業務執行についての取締役の監視義務
- 株式会社の取締役は、会社に対し、代表取締役が行なう業務執行につき、これを監視し、必要があれば、取締役会をみずから招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じてその業務執行が適正に行なわれるようにする職責がある。
- 損害賠償請求(最高裁判例 昭和49年12月17日)民法第167条1項,民法第724条,商法266条の3第1項
- 商法266条の3第1項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間
- 商法266条の3第1項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は10年と解すべきである。
- 損害賠償(最高裁判決昭和62年4月16日)商法第14条(名板貸)
- 取締役を辞任したが辞任登記未了である者と商法266条ノ3第1項前段にいう取締役としての責任の有無
- 株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、特段の事情がない限り、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を負わないものというべきである。
- 取締役を辞任したが辞任登記未了である者が商法14条の類推適用により同法266条ノ3第1項第一項前段にいう取締役としての責任を負う場合
- 株式会社の取締役を辞任した者は、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情がある場合には、商法14条の類推適用により、善意の第三者に対し、当該株式会社の取締役でないことをもつて対抗することができない結果、同法同法266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできない。
- 取締役を辞任したが辞任登記未了である者と商法266条ノ3第1項前段にいう取締役としての責任の有無
|
|