日本国憲法第34条
条文
編集【抑留・拘禁の要件、拘禁理由の開示】
- 第34条
- 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
解説
編集参照条文
編集- 刑事訴訟法
- 刑事訴訟法第207条(被疑者の勾留)
- 刑事訴訟法第208条(勾留期間、期間の延長)
- 刑事訴訟法第208条の2(勾留期間の再延長)
判例
編集- 偽造公文書行使、公文書偽造、詐欺(最高裁判所判決昭和24年11月30日)憲法第37条
- 憲法第34条前段及び同法第37条第3項前段所定の弁護人に依頼する権利と裁判所検察官等の義務憲法第37条第3項と同条項後段の事由を告知すべき義務
- 所論憲法上の権利は被告人が自ら行使すべきもので裁判所、検察官等は被告人がこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければいいのである。記録を精査すると被告人は逮捕された日(昭和22年9月30日)に司法警察官の訊問を受けその際「今回の事件で弁護人を選任することができる」旨を告げられており更に同年10月2日附検事の訊問調書に論旨摘録の如き問答があるばかりでなく、判事の勾留訊問の際にも弁護人を選任し得ることが告げられている。されば被告人は逮捕直後勾留前に弁護人を依頼する機会を十分与えられたことを認むるに足り裁判所がこれを妨げた事実は亳も認められないし、被告人から国選弁護人選任の請求があつた事跡もない。しかして法は所論のようなことを特に被告人に告げる義務を裁判所に負わせているものではないから原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。
- 損害賠償(最高裁判決平成11年3月24日 民集第53巻3号514頁)刑訴法39条3項、憲法37条3項、憲法38条1項
- 刑訴法39条3項本文と憲法34条前段、37条3項、38条1項
-
- 身体の拘束を受けている被疑者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人等との接見等を捜査機関が一方的に制限することを認める本条3項本文の規定は、憲法34条前段に違反するか。
- 刑訴法39条3項本文の規定は、憲法34条前段、37条3項、38条1項に違反しない。
- 憲法は、刑罰権の発動ないし刑罰権発動のための捜査権の行使が国家の権能であることを当然の前提とするものであるから、被疑者と弁護人等との接見交通権が憲法の保障に由来するからといって、これが刑罰権ないし捜査権に絶対的に優先するような性質のものということはできない。そして、捜査権を行使するためには、身体を拘束して被疑者を取り調べる必要が生ずることもあるが、憲法はこのような取調べを否定するものではないから、接見交通権の行使と捜査権の行使との間に合理的な調整を図らなければならない。憲法34条は、身体の拘束を受けている被疑者に対して弁護人から援助を受ける機会を持つことを保障するという趣旨が実質的に損なわれない限りにおいて、法律に右の調整の規定を設けることを否定するものではない。
- 以下の状況を鑑みると、本条3項本文の規定は、憲法34条前段の弁護人依頼権の保障の趣旨を実質的に損なうものではない。
- 刑訴法39条3項本文の予定している接見等の制限は、弁護人等からされた接見等の申出を全面的に拒むことを許すものではなく、単に接見等の日時を弁護人等の申出とは別の日時とするか、接見等の時間を申出より短縮させることができるものにすぎず、同項が接見交通権を制約する程度は低い。
- 捜査機関において接見等の指定ができるのは、弁護人等から接見等の申出を受けた時に現に捜査機関において被疑者を取調べ中である場合などのように、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。
- 右要件を具備する場合には、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならない。
|
|