日本国憲法第37条
条文 編集
【刑事被告人の諸権利】
- 第37条
- すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
- 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
- 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
解説 編集
参照条文 編集
判例 編集
- 有毒飲食物等取締令違法(最高裁判決昭和23年11月17日)憲法31条,憲法38条,憲法76条,裁判所法施行令1条,刑訴応急措置法12条1項,刑訴応急措置法12条,刑訴応急措置法17条,刑訴応急措置法10条,刑訴法337条
- 関係人に対する検事の聴取書中の被告人の否認する部分の供述記載を証拠に採ることの可否と憲法第37条及び刑訴応急措置法第12条
- 検事の関係人に対する聴取書における事実を被告人が否認をしていても、裁判所は被告人の右供述を採用しないで、他の証拠を綜合して事実を認定できることは、寧ろ採証法上の原則であつて、弾劾主義に反するものでないことは固より憲法第37条の趣旨並びに刑訴応急措置法第12条の規定に毫も抵触するものではない。
- 証拠の取捨選択の自由と憲法第37条第1項及び第76条第3項
- 論旨は、被告人がその犯意を否定するに足る事実を公判廷で供述したのを第二審が採用しなかつたことを原上告審に対して強調したのにもかからず、原上告審は右主張を無視したのは第二審の肩を持ちすぎたものであつて、憲法第37条第1項の公平な裁判所ということができないし又憲法第76条第3項にいう良心に従つて裁判をしたということができぬと云うのである。しかし憲法第37条第1項の公平な裁判所の裁判というのは、構成その他において偏頗の惧のない裁判所の裁判という意味であり、又憲法第76条第3項の裁判官が良心に従うというのは、裁判官が有形無形の外部の圧迫乃至誘惑に屈しないで自己内心の良識と道徳感に従うの意味である。されば原上告審が、証拠の取捨選択に事実審の専検に属するものとして第二審の事実認定を是認したのは当然であつて強いて公平を缺き且良心に従はないで裁判をしたと論難することはできない。
- 関係人に対する検事の聴取書中の被告人の否認する部分の供述記載を証拠に採ることの可否と憲法第37条及び刑訴応急措置法第12条
- 建造物侵入(最高裁判決 昭和25年9月27日)憲法28条,刑法130条,刑法35条,刑法36条,刑法37条,旧刑訴法69条1項
- 弁護人の氏名を判決書に記載することの要否
- 憲法第37条第3項は、刑事被告人は、いかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができること、及び被告人が自らこれを依頼することができないときは国でこれを附する旨を規定しただけであつて、判決書に公判に立会つた弁護人の氏名を記載すべき旨を規定したものではない。そして旧刑訴法第69条第2項は判決書に関与した検察官の官氏名を記載すべき旨を規定しているが、公判に立会つた弁護人の氏名を記載すべき旨を規定していない。されば原判決書には、本件公判に立会つた弁護人の氏名を記載していないことは所論のとおりであるが、しかしその為何等旧刑訴法の条規に反するところはなく、また憲法第37条第3項に反するものでもない。そして判決書に公判に立会つた弁護人の氏名を記載しないからとて所論のように裁判の公正を疑わしめるものではない。
- 窃盗(最高裁判決 昭和25年9月27日)
- 憲法第37条2項と被告人に反対訊問の機会を与えないで作成された被害始末書等の証拠能力
- 憲法第37条第2項は、被告人に反対訊問の機会を与えないで作成された被害始末書等の証拠書類を証拠とすることを、絶対に禁止するものではない。
- 業務上過失致死、同傷害(最高裁決定 昭和63年02月29日) 刑法第54条1項,刑訴法第250条,刑訴法第253条1項
- 迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
- 公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
- 憲法37条1項違反をいう点は、本件公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされていることは所論指摘のとおりであるが、本件が複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつて、事案の解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情に照らすと、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまでは認められない。
- 理由が正当でない公訴提起の著しい遅延は憲法37条1項違反を問われうる。
- 憲法37条1項違反をいう点は、本件公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされていることは所論指摘のとおりであるが、本件が複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつて、事案の解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情に照らすと、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまでは認められない。
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