刑事訴訟法第250条
条文 編集
(公訴時効の期間)
- 第250条
- 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 無期拘禁刑に当たる罪については30年
- 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
- 前二号に掲げる罪以外の罪については10年
- 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
改正経緯 編集
2022年改正 編集
以下のとおり改正。2025年6月1日施行。
- 第1項本文を以下のとおり改正
- (改正前)時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- (改正後)時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 第1項第1号及び第2項第2号について以下のとおり改正
- (改正前)無期の懲役又は禁錮
- (改正後)無期拘禁刑
- 第2項本文を以下のとおり改正
- (改正前)禁錮以上の刑に当たるもの
- (改正後)拘禁刑以上の刑に当たるもの
- その他の箇所について以下のとおり改正
- (改正前)「懲役又は禁錮」又は「懲役若しくは禁錮」
- (改正後)拘禁刑
2010年改正 編集
2010年(平成22年)改正により、以下の条項(現行第2項)から改正。のように、「人を死亡させた罪」であって、法定刑の上限が死刑である犯罪については公訴時効はなくなった。
- 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 死刑に当たる罪については25年
- 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
- 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
- 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
- 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
- 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
- 拘留又は科料に当たる罪については1年
解説 編集
公訴時効の期間について規定する。
- 「人を死亡させた罪」;犯罪行為が故意の有無に関わらず致死の結果を生じたもの
- 法定刑に死刑を含むもの。-公訴時効なし
- 法定刑の上限が無期懲役又は無期禁錮であるもの。-公訴時効30年
- 法定刑の上限が20年以上の有期懲役又は有期禁錮であるもの。-公訴時効20年
- 法定刑の上限が20年未満の有期懲役又は有期禁錮であるもの。-公訴時効10年
- ※;「傷害の罪と比較して重い刑」、傷害致死罪の上限法定刑が15年となるため、本カテゴリーとなる。
参照条文 編集
刑法 第6章 刑の時効及び刑の消滅
判例 編集
- 業務上過失致死、同傷害(最高裁決定昭和63年2月29日)
- 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
- 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
- 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
- 強盗殺人被告事件(最高裁判決 平成27年12月3日)日本国憲法第31条, 日本国憲法第39条
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置を定めた同法附則3条2項と憲法39条,31条
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置として,同改正法律施行の際公訴時効が完成していない罪について改正後の刑訴法250条1項を適用する旨を定めた同改正法律附則3条2項は,憲法39条,31条に違反せず,それらの趣旨にも反しない。
- 公訴時効制度の趣旨は,時の経過に応じて公訴権を制限する訴訟法規を通じて処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにある。本法は,その趣旨を実現するため,人を死亡させた罪であって,死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し,懲役又は禁錮の刑に当たるものについて公訴時効期間を延長したにすぎず,行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではない。そして,本法附則3条2項は,本法施行の際公訴時効が完成していない罪について本法による改正後の刑訴法250条1項を適用するとしたものであるから,被疑者・被告人となり得る者につき既に生じていた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもない。
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