刑事訴訟法第250条
条文
編集(公訴時効の期間)
- 第250条
- 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 無期拘禁刑に当たる罪については30年
- 長期20年の懲役又は禁錮に当たる罪については20年
- 前二号に掲げる罪以外の罪については10年
- 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
- 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に18歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。
改正経緯
編集2023年改正
編集第3項及び第4項を新設。2023年7月13日施行。
2022年改正
編集以下のとおり改正。2025年6月1日施行。
- 第1項本文を以下のとおり改正
- (改正前)時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- (改正後)時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑に当たるものについては、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 第1項第1号及び第2項第2号について以下のとおり改正
- (改正前)無期の懲役又は禁錮
- (改正後)無期拘禁刑
- 第2項本文を以下のとおり改正
- (改正前)禁錮以上の刑に当たるもの
- (改正後)拘禁刑以上の刑に当たるもの
- その他の箇所について以下のとおり改正
- (改正前)「懲役又は禁錮」又は「懲役若しくは禁錮」
- (改正後)拘禁刑
2010年改正
編集2010年(平成22年)改正により、以下の条項(現行第2項)から改正。「人を死亡させた罪」であって、法定刑の上限が死刑である犯罪については公訴時効はなくなった。
- 時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
- 死刑に当たる罪については25年
- 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については15年
- 長期15年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
- 長期15年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
- 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
- 長期5年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については3年
- 拘留又は科料に当たる罪については1年
解説
編集- 公訴時効の期間について規定する。
- 各犯罪類型に定められた法定刑の拘禁刑の長期期間、拘禁刑が定められていない場合は重い罰が罰金または拘留・科料であるかを基準として定め、それを徒過すると刑事訴追できなくなる。
- 2010年(平成22年)改正により、構成要件に「人を死亡させた(故意の有無を問わない)」を含み、法定刑に死刑を含むものについては、公訴時効の適用がなくなった。
- なお、法定刑に死刑が定められていても、「人を死亡させた」が構成要件となっていない犯罪(内乱罪、外患誘致・援助罪、現住建造物等放火等)は、その犯罪行為の結果死亡者が発生したとしても、なお、公訴時効の適用があるということになる[1]。ただし、故意があって人を殺害をするという手段のために放火をするという場合などは、一つの行為で両方の犯罪を犯すという形で観念的競合になり殺人罪も適用されるということで公訴時効の制約を受けることはなくなる[2][3]。しかしながら、内乱罪、外患誘致・援助罪については、故意の殺人行為も吸収されるとの解釈が一般的であるので観念的競合の適用があるかは不明である[4]。
参照条文
編集時効期間の計算
刑法 第6章 刑の時効及び刑の消滅
適用
編集- 「人を死亡させた罪(犯罪行為において故意の有無に関わらず致死の結果が現実に生じたもの)」であって法定刑に死刑を含むもの。
- 公訴時効なし - 法律において公訴時効の定めがない。
- 「人を死亡させた罪」であって、法定刑が拘禁刑であって、死刑を含まないもの(第1項)
- 法定刑の上限が無期拘禁刑であるもの。-公訴時効30年(第1項第1号)
- 不同意わいせつ/不同意性交等致死(刑法第181条)
- 法定刑の上限が20年以上の有期拘禁刑であるもの。-公訴時効20年(第1項第2号)
- 法定刑の上限が20年未満の有期拘禁刑であるもの。-公訴時効10年(第1項第2号)
- 法定刑の上限が無期拘禁刑であるもの。-公訴時効30年(第1項第1号)
- 「人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの」以外の罪(第2項)
- 上記1.及び2.以外の罪であるが、換言すると①「法定刑が拘禁刑以上の罪であって、構成要件に『人を死亡させた』を含まないもの」または②「『人を死亡させた罪(構成要件に致死の結果を含む罪)』で法定刑の上限が拘禁刑に満たないもの[5]」をいう。
- 法定刑の上限が死刑であるもの。-公訴時効25年(第2項第1号)
- 第3項により、公訴時効を20年に延長するもの
- 不同意わいせつ/不同意性交等致傷(刑法第181条)
- 強盗・不同意性交等致傷(刑法第241条)1項
- 常習強盗傷人・常習強盗不同意性交等致傷(盗犯等の防止及び処分に関する法律第4条)
- 法定刑の上限が無期拘禁刑であるもの。-公訴時効15年(第2項第2号)
- 第3項により、公訴時効を15年に延長するもの
- 第3項により、公訴時効を12年に延長するもの
- 法定刑の上限が15年以上の有期拘禁刑であるもの。-公訴時効10年(第2項第2号)
- 非自己物非現住建造物等放火(刑法第109条第1項)
- (非自己物非現住建造物等)激発物破裂(刑法第117条)
- 非自己物非現住建造物等浸害(刑法第120条第1項)
- 往来危険(刑法第125条)
- 水道毒物等混入(刑法第146条)
- 外国通貨偽造及び行使等(刑法第149条)
- 御璽偽造及び不正使用等(刑法第164条)
不同意性交等・監護者性交等(刑法第177条・刑法第179条第2項)15年に延長- 傷害(刑法第204条)
- 傷害致死(刑法第205条)
- 結果的加重犯である致死傷罪で「傷害の罪と比較して重い刑」とされるもの。傷害罪の法定刑が15年を上限とする有期拘禁刑となるため、本カテゴリーとなる。
- 所在国外移送目的略取及び誘拐(刑法第226条)
- 所在国外移送目的人身売買(刑法第226条の2第5項)
- 被略取者等所在国外移送(刑法第226条の2)
- 強盗(刑法第236条)
- 強盗致傷(刑法第240条)
- 法定刑の上限が10年以上15年未満の有期拘禁刑であるもの。-公訴時効7年(第2項第3号)
- 内乱罪の首魁・謀議参与/群衆指揮者以外の者(刑法第77条)
- 看守者等による逃走援助(刑法第101条)
- 騒乱罪の首謀者(刑法第106条)
- 自己物非現住建造物等放火(刑法第109条第2項)
- 建造物等以外放火(刑法第110条)
- 延焼(刑法第111条)
- 消火妨害(刑法第114条)
- (自己物非現住建造物等)激発物破裂(刑法第117条)
- 自己物非現住建造物等浸害(刑法第120条第2項)
- 水防妨害(刑法第121条)
- 過失建造物等浸害(刑法第122条)
- 過失往来危険(刑法第129条)
- 税関職員によるあへん煙輸入等(刑法第138条)
- 水道損壊及び閉塞(刑法第147条)
- 公文書偽造・有印公文書変造・同行使(刑法第155条・刑法第158条)
- 虚偽有印公文書作成・同行使(刑法第156条・刑法第158条)
- 公務電磁的記録不正作出及び供用(刑法第161条の2第2項/第3項)
- 偽証(刑法第169条)
- 虚偽鑑定等(刑法第171条)
- 虚偽告訴等(刑法第172条)
不同意わいせつ・監護者わいせつ(刑法第176条・刑法第177条第1項)12年に延長- 特別公務員職権濫用(刑法第195条)
- 営利目的等略取及び誘拐(刑法第225条)
- 営利目的等人身売買買受・同売渡(刑法第226条の2第3項/第4項)
- 身の代金目的被略取者引渡し等(刑法第227条第2項)
- 窃盗(刑法第235条)
- 不動産侵奪(刑法第235条の2)
- 詐欺(刑法第246条)
- 電子計算機使用詐欺(刑法第246条の2)
- 恐喝(刑法第249条)
- 業務上横領(刑法第253条)
- 盗品等有償譲受け(刑法第255条第2項)
- 法定刑の上限が5年以上10年未満の有期拘禁刑であるもの。-公訴時効5年(第2項第4号)
- 私戦予備および陰謀(刑法第93条)
- 加重封印等破棄等(刑法第96条の5)
- 加重逃走(刑法第98条)
- 被拘禁者奪取(刑法第99条)
- (加重)逃走援助(刑法第100条第2項)
- 騒乱罪の指揮助勢者(刑法第106条)
- 多衆不解散(刑法第107条)
- あへん煙輸入等(刑法第136条)
- あへん煙吸食器具輸入等(刑法第137条)
- あへん煙吸食場所提供(刑法第138条第2項)
- 水道汚染(刑法第143条)
- 通貨偽造等準備(刑法第153条)
- 公正証書原本不実記載・同行使(刑法第157条第1項・刑法第158条)
- 有印私文書偽造/変造・同行使(刑法第159条第1項/第2項・刑法第161条)
- 非公務電磁的記録不正作出及び供用(刑法第161条の2第1項/第3項)
- 有価証券偽造等・同行使(刑法第162条・刑法第163条)
- 支払用カード電磁的記録不正作出等(刑法第163条の2)
- 公印偽造及び不正使用等(刑法第165条)
- 墳墓発掘死体損壊等(刑法第191条)
- 特別公務員暴行陵虐(刑法第195条)
- 収賄、受託収賄及び事前収賄(刑法第197条)
- 第三者供賄(刑法第197条の2)
- 加重収賄及び事後収賄(刑法第197条の3)
- あっせん収賄(刑法第197条の4)
- 自殺関与及び同意殺人(刑法第202条)
- 業務上過失致傷等(刑法第211条)
- 同意堕胎致傷(刑法第213条)
- 業務上堕胎・同致傷(刑法第214条)
- 不同意堕胎(刑法第215条)
- 保護責任者遺棄等(刑法第218条)
- 逮捕・監禁(刑法第220条)
- 未成年者略取及び誘拐(刑法第224条)
- 人身売買買受(刑法第226条の2第1項)
- 未成年者人身売買買受(刑法第226条の2第2項)
- 被略取者引渡し等(刑法第227条第1項)
- 営利目的被略取者引渡し等(刑法第227条第3項)
- 電子計算機損壊等業務妨害(刑法第234条の2)
- 背任(刑法第247条)
- 横領(刑法第252条)
- 公用文書等毀棄(刑法第258条)
- 私用文書等毀棄(刑法第259条)
- 建造物等損壊(刑法第260条)
- 境界損壊(刑法第262条の2)
- 法定刑の上限が5年未満の有期拘禁刑又は罰金に当たるもの。-公訴時効3年(第2項第5号)
- 外国国章損壊等(刑法第92条)
- 中立命令違反(刑法第94条)
- 公務執行妨害及び職務強要(刑法第95条)
- 封印等破棄(刑法第96条)
- 強制執行妨害目的財産損壊等(刑法第96条の2)
- 強制執行行為妨害等(刑法第96条の3)
- 強制執行関係売却妨害(刑法第96条の4)
- 公契約関係競売等妨害(刑法第96条の6)
- 逃走(刑法第97条)
- 逃走援助(刑法第100条第1項)
- 犯人蔵匿等(刑法第103条)
- 証拠隠滅等(刑法第104条)
- 証人等威迫(刑法第105条の2)
- 騒乱罪の付和随行者(刑法第106条)
- 現住建造物等放火予備(刑法第113条)
- 失火罪(刑法第116条)
- (過失)激発物破裂(刑法第117条)
- 業務上失火・業務上過失激発物破裂(刑法第117条の2)
- 水利妨害及び出水危険(刑法第123条)
- 住居侵入等(刑法第130条)
- 信書開封(刑法第133条)
- 秘密漏示(刑法第134条)
- あへん煙吸食(刑法第138条第1項)
- あへん煙等所持(刑法第139条)
- 浄水汚染(刑法第142条)
- 浄水毒物等混入(刑法第144条)
- 偽造通貨等収得(刑法第150条)
- 収得後知情行使等(刑法第152条)
- 非有印公文書変造・同行使(刑法第155条・刑法第158条)
- 虚偽非有印公文書作成・同行使(刑法第156条・刑法第158条)
- 免許鑑札等不実記載・同行使(刑法第157条第2項・刑法第158条)
- 非有印私文書偽造/変造・同行使(刑法第159条第3項・刑法第161条)
- 虚偽診断書等作成・同行使(刑法第160条・刑法第161条)
- 不正電磁的記録カード所持(刑法第163条の3)
- 支払用カード電磁的記録不正作出準備(刑法第163条の4)
- 公記号偽造及び不正使用等(刑法第166条)
- 私印偽造及び不正使用等(刑法第167条)
- 不正指令電磁的記録作成等(刑法第168条の2)
- 不正指令電磁的記録取得等(刑法第168条の3)
- 公然わいせつ(刑法第174条)
- わいせつ物頒布等(刑法第175条)
- 16歳未満の者に対する面会要求等(刑法第182条)
- 淫行勧誘(刑法第183条)
- 重婚(刑法第184条)
- 賭博(刑法第185条)
- 常習賭博及び賭博場開張等図利(刑法第186条)
- 富くじ発売等(刑法第187条)
- 礼拝所不敬及び説教等妨害(刑法第188条)
- 墳墓発掘(刑法第189条)
- 死体損壊等(刑法第190条)
- 変死者密葬(刑法第192条)
- 公務員職権濫用(刑法第193条)
- 贈賄(刑法第198条)
- 殺人予備(刑法第201条)
- 現場助勢(刑法第206条)
- 暴行(刑法第208条)
- 凶器準備集合及び結集(刑法第208条の2)
- 過失傷害(刑法第209条)
- 過失致死(刑法第210条)
- 堕胎(刑法第212条)
- 同意堕胎(刑法第213条)
- 遺棄(刑法第217条)
- 脅迫(刑法第222条)
- 強要(刑法第223条)
- 身の代金目的略取等予備(刑法第228条の3)
- 名誉毀損(刑法第230条)
- 侮辱(刑法第231条)
- 信用毀損及び業務妨害・威力業務妨害(刑法第233条・刑法第234条)
- 強盗予備(刑法第237条)
- 遺失物等横領(刑法第254条)
- 盗品等無償譲受け(刑法第255条第1項)
- 器物損壊(刑法第261条)
- 信書隠匿(刑法第263条)
- 拘留又は科料に当たる罪に当たるもの。-公訴時効1年(第2項第6号)
- 軽犯罪法違反
判例
編集- 業務上過失致死、同傷害(最高裁決定昭和63年2月29日)
- 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
- 業務上過失致死罪の公訴時効は、被害者の受傷から死亡までの間に業務上過失傷害罪の公訴時効期間が経過したか否かにかかわらず、その死亡の時点から進行する。
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
- 被害者が受傷後期間を経て死亡した場合における業務上過失致死罪の公訴時効
- 強盗殺人被告事件(最高裁判決 平成27年12月3日)日本国憲法第31条, 日本国憲法第39条
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置を定めた同法附則3条2項と憲法39条,31条
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置として,同改正法律施行の際公訴時効が完成していない罪について改正後の刑訴法250条1項を適用する旨を定めた同改正法律附則3条2項は,憲法39条,31条に違反せず,それらの趣旨にも反しない。
- 公訴時効制度の趣旨は,時の経過に応じて公訴権を制限する訴訟法規を通じて処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにある。本法は,その趣旨を実現するため,人を死亡させた罪であって,死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し,懲役又は禁錮の刑に当たるものについて公訴時効期間を延長したにすぎず,行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではない。そして,本法附則3条2項は,本法施行の際公訴時効が完成していない罪について本法による改正後の刑訴法250条1項を適用するとしたものであるから,被疑者・被告人となり得る者につき既に生じていた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもない。
脚注
編集- ^ 法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会 第5回会議(平成22年1月20日開催)議事録より
「例えば放火罪は法定刑は殺人と全く同じでありますけれども,定型的には人の死亡という結果を伴わないということでこの廃止からは抜けているわけですけれども,殺意はないにしても重過失で放火,現住建造物に放火して重過失致死が併合罪ないし観念的競合になるような場合,あるいは傷害致死が観念的競合になるような場合は,この中からはもう抜け落ちてしまうということになるのですね。人は死亡している,かつ故意の殺意はない,しかし現住建造物放火はしているのだ。そういう場合は,廃止の対象にはならないということですね。」
「はい,廃止の対象にはならないということでございます。放火をして人が亡くなった。亡くなった人に対して殺意が認められないというときに,現住建造物放火と別に過失致死罪なり重過失致死罪が成立するのかしないのかということについては,解釈が分かれるところでございますけれども,現住建造物等放火罪は,この骨子案として示している「人を死亡させた罪」には含まれないと考えておりますので,現住建造物等放火罪については現行の25年という時効期間のままになります。それと別に重過失致死が成立するとすると,甲案によると重過失致死については現行の5年が10年になるという扱いになるということです。」 - ^ 第174回国会参議院法務委員会第10号平成22年4月13日
千葉景子法務大臣「これは常々問題になるところでございますけれども、要するに、放火の罪というのは人を言わば死亡させた罪というのには該当しないということになります。確かに、特に現住建造物放火などというのは人の命にかかわりは大変多いわけですし、それからそれによって亡くなられるというようなことがあり得る、これは想像ができるわけですけれども、この放火罪自体は人を必ずしも死亡させる目的でということではないものですから、人を死亡させる罪には当たっていないということでございます。
ただ、人を殺す、故意があって人を殺害をするという手段のために放火をするということになりますと、先ほどお話がありましたけれども、殺人罪そしてこの放火罪と、一つの行為で両方の犯罪を犯すという形で観念的競合ということになりますので、こういう場合だと殺人罪も適用されるということで公訴時効の制約を受けることはなくなるという解釈になろうというふうに思います。 - ^ 不同意わいせつ/不同意性交等致死の場合、最高刑が無期拘禁刑であるが、元々殺意を持って不同意性交等(強姦等)を行った場合、そもそも、別個に殺人罪が成立しているとするのが判例(最高裁判決昭和31年10月25日)・通説である。
- ^ 法制審議会刑事法(公訴時効関係)部会 第6回会議(平成22年1月28日開催)議事録より
「内乱罪というのがあって,一般の解釈だと,故意で人を殺した場合も内乱罪に吸収されると考えられている。他方,内乱自体は,人を死亡させるという要素は犯罪の要素になっていませんので,そうなると,内乱罪を持ち出すというのは非現実的かもしれませんけれども,犯罪としては放火罪と全く同じ問題になってくるので,これは故意でもって人を殺した場合でもむしろ25年になってしまうのかという感じがあるのですが,そこはどう考えればよろしいですか。」
「そうならざるを得ない。現行の要綱骨子(案)であると,そうならざるを得ないと思います。」 - ^ 過失致死罪(刑法第210条)のみ。
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