民法第410条
条文
編集(不能による選択債権の特定)
改正経緯
編集2017年改正前は以下のとおり。
- 債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
- 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。
解説
編集本条は、選択債権(民法第406条)において、数個の給付中の一部が不能である場合の選択債権の特定を定める。
数個の給付中の一部が不能である場合、以下のいずれかの対応となる。
- 履行不能の給付について初めからなかったものとし、残存するもののみ選択できる(残存が1個の場合、選択はできず特定される)。
- 履行不能の給付についても選択できるものとする。ここで、選択権を有する者(選択権者)が当該履行不能の給付を選択した場合、
- 選択権者が債務者であるならば、当該債権は履行不能となって消滅することになる。
- 選択権者が債権者であるならば、債権者は履行に代わる損害賠償(415条)を請求することができる。
上記項番1に比べ、上記項番2の方が、選択権者にとって選択肢が拡大し有利となるため、履行不能となった責任が、選択権者・選択権を有しない当事者のいずれにあるか又はいずれにもないかという状況により、適用を配分するものである。
2017年改正前後について、以下の2事象については共通の取り扱いである。
- 履行不能について選択権者の過失によるものである場合は、履行不能の給付は選択できない。
- 履行不能について選択権を有しない当事者の過失によるものである場合は、履行不能の給付も選択できる。
問題は、履行不能について選択権者・選択権を有しない当事者のいずれにも過失がない場合である。
- 2017年改正前においては、第2項の反対解釈により、履行不能の給付は選択できないものとされた。
- 2017年改正により、第2項が削除され、「その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは」の反対解釈により、履行不能の給付も選択できることとなった。
参照条文
編集- 民法第412条の2(履行不能)
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