法学民事法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文編集

債務不履行による損害賠償

第415条
  1. 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
  2. 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
    一 債務の履行が不能であるとき。
    二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

改正経緯編集

2017年改正前の条文は以下のとおり。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
  1. 債務不履行に加え、「履行不能」の場合も含むことを明示した。
  2. 債務者の帰責事由の要件を限定した。
  3. 判例・通説であった『填補賠償』を条文化した。

解説編集

債務者が債務を履行しないときの損害賠償について定める。客観的要件として債務不履行の事実と、それと因果関係ある損害の発生、主観的要件として債務者の帰責事由を要求する。効果は損害賠償請求である。不法行為による賠償請求に比べ、損害賠償者の主観的要件の証明が軽減される。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときとは編集

例えば、AとBが売買契約(民法第555条)を結んだとき、それによって発生する債務は次のようになる。

「債務者である小売商Aは、平成10年10月10日までに債権者Bに対し米10キロをBの住所において引き渡さなければならない」

そこで具体的な内容となるのは「いつ(=平成10年10月10日まで)」「どこで(=Bの住所)」「誰が(=小売商A)」「何を(=米10キロ)」「誰に(B)」「どうする(渡す)」か、というものである。無論日時や場所については契約で詳細に定めないこともあるだろう。その場合は当事者の合理的意思を解釈したり、法律によって補充・規定したりするわけである(目的物について401条402条482条483条、時期について412条、履行者について446条474条、履行の相手方について478条479条480条、場所について484条485条但書等)。債務者がこの債務内容を満たさないとき債権者には損害賠償請求権という新たな債権が発生する。しかしながら、例えば本事例において精米していないゴキブリ入りの米8キロを平成10年の10月5日に債務者の事務所に持参したところで、直ちに損害賠償請求ができるようになるわけではない。債権者が受領を拒絶してまともな米(本事例で当事者の合理的意思解釈としては精米された清潔なものを対象とするのは当然である)をよこせと催告すれば、債務者としてはなお、期日までに債務の内容通りの履行をするかもしれず、この未精米の米8キロを持参するという行為によって債権者に損害生ずるとは限らないからである。しかし、Aが任意に受け取ってしまえばこれによって余計な手間や金銭的損害(買い主側の代金支払い債務が当然に消滅ないし縮減されるわけではないため)を発生させるであろうし、履行期が到来していなくともその米が特殊な高級品であり、市場からの調達が不可能になったような場合にはその時点で債務不履行が確定し、債務者にはそれによる損害が発生する場合がありうる。このことから、学説及び判例は415条における損害を発生させるべき債務不履行の態様を履行期に履行がなされなかったという履行遅滞、履行自体はなされたが時期・場所・方法・目的物につき債務内容に適合していなかったという不完全履行(民法は誰が誰にという問題については弁済の有効性の問題として扱う)、そして履行不能(415条後段)という三つに分類して考察する。確かに415条の文言上は履行不能を他と区別するに止まるが、民法の他の条文においては「履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」(民法第412条3項)などとしており、履行遅滞と他の債務履行との条文上の区別はなされているとも言える。

履行遅滞編集

履行が可能であること編集
履行期を過ぎていること編集
同時履行の抗弁権や留置権が無いこと編集

伝統的には、違法性が無いことと言い換える。

不完全履行編集

引渡債務の場合編集
欠陥あるものを引き渡した場合編集
引き渡したものから損害が他へ拡大した場合編集
行為債務の場合編集
結果債務編集
手段債務編集

契約上の義務の拡大編集

契約に直接含まれない安全配慮義務編集
不法行為との違い編集
契約プロセスにおける当事者間の注意義務編集
契約締結前編集
契約終了後編集

債務の履行が不能であるときとは編集

履行不能編集

債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときとは編集

倉庫が放火されたとき

これによって生じた損害とは編集

発生した損害と債務不履行の事実との間に因果関係があることが要件となる。

この点につき、民法第416条が債務不履行時の損害賠償の範囲について定めている。

損害賠償要件の例外編集

金銭債務の特則編集

当事者の特約編集

賠償を請求とは編集

損害賠償の方法編集

民法第417条が金銭賠償の原則を定める。

損害賠償の減額編集

過失相殺編集

民法第418条が損害賠償の減額について定める。

損益相殺編集
  • 建築業者であるAはSとの間に建物の建築請負契約を結んだが、注文者Sの責めに帰すべき事由によって工場に着工できなくなったため契約を解除し報酬を得ることはできなかったものの、材料費などのコストは支出せずに済んだ。

債務不履行によって債権者がα損害のみならずβ利益(消極的利益を含む)をも得た場合、全ての損害分を債務者に賠償させるのは当事者の公平に反するので、利益分は差し引いた分だけを賠償の対象とすべきという原則がある(民法第536条2項類推)。損益相殺といい実務上確立している。

脚注編集


参考文献編集

  • 内田貴「民法Ⅲ 債権総論・担保物権」

参照条文編集

判例編集


前条:
民法第414条
(履行の強制)
民法
第3編 債権

第1章 総則

第2節 債権の効力
次条:
民法第416条
(損害賠償の範囲)


このページ「民法第415条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。