法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権

条文

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(財産以外の損害の賠償)

第710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

解説

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「財産以外の損害」についても不法行為責任により賠償されるべき損害に含まれることを規定している。 財産以外の損害とは、慰謝料など、精神的損害のことをさすのが通常であるが、広く無形的な損害も含まれると解されているため、法人や幼児など精神的苦痛を感じないであろう法主体にも、本条により賠償の対象となる損害が発生すると理解されている。

慰謝料請求権の相続の可否

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生命侵害の場合に、被害者に固有の慰謝料請求権が発生し、これが相続されるという構成(相続構成)を取るべきかどうかは争いがある。判例は相続肯定説をとっている。その根拠としては、不法行為と被害者の死亡との間には(たとえ即死であっても一瞬の)時間があり、その間に被害者が慰謝料請求をすることを観念できること、また、被害者が障害を負った場合には慰謝料請求権が発生し、死亡した場合には発生しないとすると、障害より死亡のほうが賠償額が小さくなりかねないこと、等が挙げられる。なお、かつての判例では被害者が死亡の前に慰謝料請求の意思を表示している必要があるとされたが(残念事件 大審院判決昭和2年5月30日新聞2702号5頁)、現在の判例は、被害者の意思表示の有無に関わらず慰謝料請求権が発生するとしている(判例6)。

これに対し、生命侵害において被害者に固有の慰謝料請求権は相続されないとする見解(相続否定説)も有力である。その根拠としては、生命侵害の場合は711条が近親者に固有の慰謝料請求権を規定しているから、わざわざ被害者の慰謝料請求権まで相続させる必要はないこと、また相続肯定説をとると、被害者と生活関係上疎遠な相続人にも慰謝料が転がり込むこと(このことを称して「笑う相続人」という)、等が挙げられる。なお、この説によっても、被害者の逸失利益の相続を否定するものではない。

名誉権・名誉感情

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最高裁判例において、名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないとされている(最高裁昭和45年12月18日判決-「民法723条にいう」が付されている)。

法人の名誉権

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報道

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関連条文

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判例

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  1. 慰籍料並に名誉回復請求(最高裁判決 昭和31年7月20日)民法44条(現・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条),民法723条,民訴法224条1項(現・民訴法133条
    1. 法人に対する民法第44条に基く請求と同法第715条に基く請求との訴訟物の異同
      法人に対する民法第44条に基く損害賠償の請求と同法第715条に基く損害賠償の請求とは、訴訟物を異にする。
    2. 新聞記事が名誉を毀損すべき内容の意味かどうかの判断基準
      一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。
      • 名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない。それ故、所論新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上、これをもつて名誉毀損の記事と目すべきことは当然である。
    3. 新聞記事により過失に基き名誉を毀損した場合と正当業務行為の主張の許否
      新聞に事実に反する記事を掲載頒布し、これにより他人の名誉を毀損することは単なる過失に基く場合でも、これを正当業務行為ということはできない。
      • 新聞紙に事実に反する記事を掲載頒布しこれにより他人の名誉を毀損することは、単なる過失による場合といえどもこれを新聞の正当業務行為と目し得ない。
  2. 損害賠償請求(最高裁判決 昭和38年2月1日)民法第709条
    内縁関係を破綻させた第三者の不法行為の成否。
    内縁の当事者でない者であつても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させたものは、不法行為者として損害賠償の責任を負う。
  3. 謝罪広告請求(最高裁判決  昭和38年4月16日)民法第709条
    他誌を誹謗する学界誌の記事につき名誉毀損の成立を否定した事例。
    甲学界誌において掲載の承諾を得ている外国人学者の講演内容を、乙学界誌が、本人の承諾を得ずに原判示のような不明朗な手段で、通訳から講演訳文原稿を入手した上、甲誌に先がけて掲載発表する等原判決認定のような経緯があるときは、甲誌編集者らが乙誌を非難するのに「盗載」「犯罪的不徳行為」等の言辞を用いたとしても、乙誌の名誉信用を害するものとはいえない。
    • 自己の正当な利益を擁護するためやむをえず他人の名誉、信用を毀損するがごとき言動をなすも、かかる行為はその他人が行つた言動に対比して、その方法、内容において適当と認められる限度をこえないかぎり違法性を缺くとすべきものであるから、本件被上告人らがE博士の承諾を得て、その講演内容をG会の機関誌であるG会雑誌に掲載する権利を有していた以上、右講演内容が先に他誌に掲載されたことにつき、真実を公表弁明して、その権利名誉を擁護するにあたり、被上告人らが採つた処置の方法・内容は、原判決の確定した客観的事情の下では、いまだ上告人らの名誉・信用を害したものとなすをえない。
  4. 村道供用妨害排除請求(最高裁判決 昭和39年1月16日)地方自治法(昭和38年6月8日法律99号による改正前のもの)10条、民法第198条、民法第709条
    1. 村民の村道使用関係の性質
      村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。
    2. 村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否
      村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。
  5. 謝罪広告並びに慰藉料請求(最高裁判決 昭和39年1月28日)民法第723条
    民法第710条は法人の名誉権侵害による無形の損害に適用があるか。
    法人の名誉権が侵害され、無形の損害が生じた場合でも、右損害の金銭評価が可能であるかぎり、民法第710条の適用がある。
    • 民法710条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべきである。従つて右法条を根拠として判示のように無形の損害即精神上の苦痛と解し、延いて法人には精神がないから、無形の損害はあり得ず、有形の損害すなわち財産上の損害に対する賠償以外に法人の名誉侵害の場合において民法723条による特別な方法が認められている外、何等の救済手段も認められていないものと論詰するのは全くの謬見だと云わなければならない
  6. 名誉および信用毀損による損害賠償および慰藉料請求(最高裁判決  昭和41年6月23日)
    公共の利害に関する事実の摘示と名誉毀損の成否
    名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならないものというべきである。(→違法性阻却事由)
  7. 損害賠償等請求(最高裁判決 昭和42年5月30日)
    夫の負傷によつて妻の被つた精神的苦痛を理由とする妻の慰籍料請求が認められなかつた事例
     夫が交通事故によつて負傷し後遺症があつても、それが原審認定の程度にとどまり、そのために不具者となつて妻の一生の負担となるほどのものではなく、その他原判決判示のような諸般の事情にあるときは、妻が夫の右負傷によつて被つた自己の精神的苦痛を理由として慰籍料を請求することはできない。
  8. 慰藉料請求(最高裁判決 昭和42年11月1日)民法第711条
    不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか
    不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
    • 損害賠償請求権発生の時点について、民法は、その損害が財産上のものであるか、財産以外のものであるかによつて、別異の取扱いをしていないし、慰藉料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども、これを侵害したことによつて生ずる慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく、民法第711条によれば、生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は、被害者の取得する慰藉料請求権とは別に、固有の慰藉料請求権を取得しうるが、この両者の請求権は被害法益を異にし、併存しうるものであり、かつ、被害者の相続人は、必ずしも、同条の規定により慰藉料請求権を取得しうるものとは限らないのであるから、同条があるからといつて、慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではない。
  9. 委嘱状不法発送謝罪請求(最高裁判決 昭和45年12月18日)
    民法723条にいう名誉の意義
    民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。
  10. 損害賠償請求(最高裁判決 昭和48年4月5日)民事訴訟法第186条(現第246条),民事訴訟法224条1項(現第134条2項),民法第722条2項
    身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数
    同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。(→過失相殺への適用)
  11. 損害賠償(最高裁判決 昭和58年10月6日)民法第423条,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)570条1項,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)618条1項,破産法(昭和54年法律第5号による改正前のもの)6条3項,破産法(昭和54年法律第5号による改正前のもの)283条1項後段[(現破産法第215条第1項後段]
    1. 名誉侵害を理由とする慰藉料請求権と行使上の一身専属性の喪失事由
      名誉侵害を理由とする慰藉料請求権は、加害者が被害者に対し一定額の慰藉料を支払うことを内容とする合意若しくはかかる支払を命ずる債務名義が成立したなどその具体的な金額が当事者間において客観的に確定したとき又は被害者が死亡したときは、行使上の一身専属性を失う。
    2. 名誉侵害を理由とする破産者の慰藉料請求権が破産終結決定後に行使上の一身専属性を失つた場合と破産法283条1項後段(破産手続終結の決定後の追加配当)の適用の有無
      名誉侵害を理由とする破産者の慰藉料請求権が破産終結決定後に行使上の一身専属性を失つた場合には、破産法283条1項後段の適用はない。
      • 破産終結の決定がされた後に行使上の一身専属性を失なうに至つた慰藉料請求権については、破産財団に帰属しない。
  12. 反論文掲載(最高裁判決 昭和62年4月24日)日本国憲法第21条,民法第1条,民法第709条,民法第723条,刑法第230条ノ2
    新聞紙上における政党間の批判・論評の意見広告につき名誉毀損の不法行為の成立が否定された事例
    新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉毀損の不法行為となるものではない。(→違法性阻却事由)
  13. 損害賠償等(最高裁判決 平成元年12月21日)民法第709条,刑法第230条ノ2第1項,刑法第230条ノ2第3項
    公立小学校における通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とするビラの配布行為が名誉侵害としての違法性を欠くとされた事例
    公立小学校教師の氏名・住所・電話番号等を記載し、かつ、有害無能な教職員等の表現を用いた大量のビラを繁華街等で配布した場合において、右ビラの内容が、一般市民の間でも大きな関心事になつていた通知表の交付をめぐる混乱についての批判、論評を主題とする意見表明であつて、専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとはいえず、その前提としている客観的事実の主要な点につき真実の証明があり、論評としての域を逸脱したものでないなど判示の事実関係の下においては、右配布行為は、名誉侵害としての違法性を欠く。
  14. 慰藉料(最高裁判決  平成6年2月8日)
    ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合における損害賠償請求の可否
    ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。(→違法性阻却事由)
  15. 損害賠償(最高裁判決 平成7年9月5日)日本国憲法第19条
    会社が職制等を通じて特定政党の党員又はその同調者である従業員を監視し孤立させるなどした行為が人格的利益を侵害する不法行為に当たるとされた事例
    会社が、特定の従業員につき、同人らにおいて現実に企業秩序を破壊し混乱させるおそれがあるとは認められないにもかかわらず、特定政党の党員又はその同調者であることのみを理由として、職制等を通じて、職場の内外で継続的に監視する態勢を採った上、極左分子であるなどとその思想を非難して同人らとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、同人らを職場で孤立させ、その過程の中で、退社後尾行したり、ロッカーを無断で開けて私物の手帳を写真に撮影したりしたなど判示の事実関係の下においては、右一連の行為は、職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損し、プライバシーを侵害するものであって、人格的利益を侵害する不法行為に当たる。
  16. 損害賠償(最高裁判決  平成9年5月27日)民法第709条
    1. 新聞記事による名誉殿損によって損害の発生する時期
      新聞記事による名誉段損にあっては、これを掲載した新聞が発行され、読者がこれを閲読し得る状態になった時点で、右記事により事実を摘示された人が当該記事の掲載を知ったかどうかにかかわらず、損害が発生する。
    2. 名誉殿損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたことと名誉殿損による損害賠償請求権の消長
      名誉殿損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたことは、これにより損害が消滅したものとして既に生じている名誉殿損による損害賠償請求権を消滅させるものではない。
    3. 名誉殿損による損害について慰謝料の額を算定するに当たり損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたことをしんしゃくすることの可否
      名誉殿損による損害についての慰謝料の額は、損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたことをしんしゃくして算定することができる。
  17. 損害賠償(最高裁判決 平成9年9月9日)国家賠償法第1条1項,憲法第51条,衆議院規則45条1項
    国会議員が国会の質疑等の中でした発言と国家賠償責任
    国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする。
  18. 最高裁判所第三小法廷 平成10(オ)1081 損害賠償請求上告,同附帯上告事件 平成12年2月29日 判決 棄却  民集54巻2号582頁 民法710条
    宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有している患者に対して医師がほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで手術を施行して輸血をした場合において右医師の不法行為責任が認められた事例
    医師が、患者が宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有し、輸血を伴わないで肝臓のしゅようを摘出する手術を受けることができるものと期待して入院したことを知っており、右手術の際に輸血を必要とする事態が生ずる可能性があることを認識したにもかかわらず、ほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで右手術を施行し、患者に輸血をしたなど判示の事実関係の下においては、右医師は、患者が右手術を受けるか否かについて意思決定をする権利を奪われたことによって被った精神的苦痛を慰謝すべく不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
  19. 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成14年1月29日)民法第709条,刑法第230条の2第1項
    通信社が新聞社に記事を配信するに当たりその内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとされた事例
    通信社が,殺人未遂罪で逮捕された甲が7,8年前に自宅で大麻を所持しており,その事実を捜査機関が突き止めた旨の事実を記事にして配信し,新聞社がこれを掲載した場合に,甲が自宅に大麻を所持していた事実の裏付けになる資料は甲と離婚した乙の供述のみであること,捜査の対象となっていない大麻所持についての報道であること,甲以外の関係者からそのころの甲と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況がうかがえないこと,捜査官が甲の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについての取材内容が明らかでないことなど判示の事情の下においては,乙の供述が一貫し,甲が大麻と深いつながりがあることを自ら認めており,記事作成の時点で甲が既に逮捕され,甲に対する取材が不可能であった等の事情が存するときであっても,通信社に上記配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものとはいえない。(→違法性阻却事由)
  20. 損害賠償等請求事件(最高裁判決 平成24年3月23日)
    インターネット上のウェブサイトに記事を掲載した行為が名誉毀損の不法行為を構成するとされた事例
    インターネット上のウェブサイトに掲載された記事が,それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものではなく,会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では,その記事を掲載した行為は,上記の会社及び従業員の名誉を毀損するものとして不法行為を構成する。

前条:
民法第709条
(不法行為による損害賠償)
民法
第3編 債権
第5章 不法行為
次条:
民法第711条
(近親者に対する損害の賠償)
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