法学民事法コンメンタール民法第4編 親族

条文 編集

(第三者が無償で子に与えた財産の管理)

第830条
  1. 無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
  2. 前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
  3. 第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
  4. 第27条から第29条までの規定は、前二項の場合について準用する。

解説 編集

親権の管理下にない子特有の財産について規定。親子以外の第三者が子に無償で財産を譲渡した場合、譲渡人は親権者にこれを管理させない指定を行うことができる。戦後の民法改正においても、明治民法と同趣旨の規定(第892条)が受け継がれている。

例えば、親権者として実親がいるが、養育能力に不安があり、祖父母等が子に遺贈するケースなどが想定される。

管理人は、原則として財産を譲渡した第三者が指定するが、これを欠くときは、関係者(基本的に当該親子、懈怠があれば検察官)の請求により家庭裁判所が選任し、管理状態を維持する。任期は子が成人するまで。

管理人の職務や権限は、不在者の管理人の規定が準用される。

準用のあてはめ
  1. 管理人の職務(民法第27条 - 第2項不適用)
    1. 管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、当該子の財産の中から支弁する。
    2. 前項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、当該子の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
  2. 管理人の権限(民法第28条 - 後段不適用)
    管理人は、第103条に規定する権限を超える行為(保存行為、利用改良行為)を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。
  3. 管理人の担保提供及び報酬(民法第29条
    1. 家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
    2. 家庭裁判所は、管理人と当該子との関係その他の事情により、当該子の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
  4. 委任に関する規定の準用(次条
    1. 管理の終了後の処分(民法第654条
      管理が終了した場合において、急迫の事情があるときは、管理者又はその相続人若しくは法定代理人は、当該子又はその相続人若しくは法定代理人又は新たな管理人が管理事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
    2. 管理の終了の対抗要件(民法第655条
      管理の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。

参照条文 編集

参考 編集

明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、民法第782条に継承された。

成年ノ私生子ハ其承諾アルニ非サレハ之ヲ認知スルコトヲ得ス
※:昭和17年改正にて「子」に改正。

前条:
民法第829条
(財産の管理の計算)
民法
第4編 親族

第4章 親権

第2節 親権の効力
次条:
民法第831条
(委任の規定の準用)
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