住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条
条文
編集(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任の特例)
- 第94条
- 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第415条、第541条及び第542条並びに同法第559条において準用する同法第562条及び第563条に規定する担保の責任を負う。
- 前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。
- 第1項の場合における民法第637条の規定の適用については、同条第1項中「前条本文に規定する」とあるのは「請負人が住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第94条第1項に規定する瑕疵がある目的物を注文者に引き渡した」と、同項及び同条第2項中「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。
改正経緯
編集2017年民法改正に伴い、適用する民法条項の対応を改正。
改正前第1項は以下の通り(下線部が改正箇所)。
- 住宅を新築する建設工事の請負契約(以下「住宅新築請負契約」という。)においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第634条第1項 及び第2項 前段に規定する担保の責任を負う。
- 改正前は新築住宅の請負契約に関する「瑕疵」については、旧民法第634条(請負人の担保責任)が適用され、かつ、その有効期間は特約がなければ、旧民法第638条第1項に定める「石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物」同様に10年が適用される(第2項で短縮不可)旨定められていた。2017年民法改正に伴い、旧来の瑕疵担保責任について、「契約不適合責任」一般に、効果として「損害賠償請求権」「解除権」「追完請求権」及び「代金減額請求権」の発生が明確に概念されたことにより、適用条項等につき改正された。
改正前第3項は以下の通り(下線部が改正箇所)。
- 第1項の場合における民法第638条第2項の規定の適用については、同項中「前項」とあるのは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律第94条第1項」とする。
- 旧民法第634条に定めた「瑕疵修補請求権」は、瑕疵により滅失又は損傷が生じた時から一年以内の行使が求められていた。本項は民法第637条に継承されている。
解説
編集住宅については、居住は生活の重要な要素であり、かつ、一般市民にとっては人生最大の買い物と言われるほど家計に大きな影響を与える巨額な支出を伴うものであることが一般的である。また、買主・注文主に比べ売主・請負人は継続的な事業としている場合がほとんどであり、買主・注文主と売主・請負人の経験格差が大きい業務である。このような事情を鑑み、一種消費者保護の観点も加え、「住宅の構造耐力上主要な部分等」の瑕疵については、一定期間(瑕疵担保期間)、品質を担保する義務を認め、その期間も一般的な契約不適合責任期間の1年よりも相当に長期期間である10年を定めるものである。
本条において、新築建物を請負契約で建設するときの規律を定める。
瑕疵が発見されたときに認められる権利は以下のもの。適用については、瑕疵の度合い及びそれに対する売主の態様により、各々認められる。
特約がなければ、瑕疵担保期間は、注文主に引き渡した時から10年間である。なお、この期間は特約により変えることができるが、第2項により買主に不利となる短縮はできないため、10年以上となる一方で、第97条で20年を超えることはできない。
注文者はその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない(民法第637条)。
参照条文
編集- 住宅の品質確保の促進等に関する法律第97条(瑕疵担保責任の期間の伸長等の特例)
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令第5条(住宅の構造耐力上主要な部分等)
判例
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