コンメンタール労働組合法

条文 編集

(不当労働行為)

第7条  
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
  1. 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
  2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
  3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
  4. 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

解説 編集

 
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参照条文 編集

  • 第27条の12(救済命令等)

判例 編集

  1. 不当労働行為救済命令取消請求(最高裁判決 昭和29年5月28日)
    1. 不当労働行為に対する労働委員会の救済命令書には認定事実の記載を要する旨の中央労働委員会規則第43条第2項の法意
      不当労働行為に対する労働委員会の救済命令書には認定事実の記載がなければならない旨の中央労働委員会規則第43条第2項の法意は、必ずしも、命令書中「認定した事実」と題する項目中に認定事実の記載がなければならないとする趣旨ではなく、主文を含む命令書の記載全体の中に主文を理由づけるに足りる事実理由の記載があれば足りる趣旨と解すべきである。
    2. 客観的に組合の運営に対する介入と認められる発言につき使用者が主観的認識乃至目的を欠く場合と労働組合法第7条第3号の不当労働行為の成否。
      発言当時の状況の下で、客観的に組合活動に対する非難と組合活動を理由とする不利益取扱の暗示とを含むものと認められる発言により、組合の運営に対し影響を及ぼした事実がある以上、たとえ、発言者にこの点につき主観的認識乃至目的がなかつたとしても、なお労働組合法第7条第3号にいう組合の運営に対する介入があつたものと解すべきである。
  2. 雇傭関係存続確認等請求(最高裁判決 昭和43年4月9日)
    不当労働行為にあたる解雇の効力
    不当労働行為にあたる解雇は無効である。
    • 不当労働行為たる解雇については、旧労働組合法においては、その11条によりこれを禁止し、33条に右法条に違反した使用者に対する罰則を規定していたが、現行労働組合法においては、その7条1号によりこれを禁止し、禁止に違反しても直ちに処罰することなく、使用者に対する労働委員会の原状回復命令が裁判所の確定判決によつて支持されてもなお使用者が右命令に従わない場合に初めて処罰の対象にしている(同法28条)。しかし、不当労働行為禁止の規定は、憲法28条に由来し、労働者の団結権・団体行動権を保障するための規定であるから、右法条の趣旨からいつて、これに違反する法律行為は、旧法・現行法を通じて当然に無効と解すべきであつて、現行法においては、該行為が直ちに処罰の対象とされず、労働委員会による救済命令の制度があるからといつて、旧法と異なる解釈をするのは相当ではない。
  3. 不当労働行為救済命令取消請求(最高裁判決 昭和51年5月6日)
    いわゆる社外工につきその受入会社が労働組合法7条の使用者にあたるとされた事例
    油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人の技能、信用によつて会社に受け入れられているものであり、その勤務及び作業に関しては専ら会社が自己の従業員と同様に指揮監督を行い、また、社外工の賃金額についても会社が実質的にこれを決定しているなど判示のような事情があるときは、会社は、右社外工に対する関係において労働組合法7条の使用者にあたる。
  4. 救済命令取消請求(最高裁判決 昭和52年02月23日)労働組合法第27条4項
    1. 労働委員会が不当労働行為により解雇された労働者の救済命令において賃金相当額の遡及支払を命ずる場合と右労働者が解雇期間中他の職に就いて得た収入額の控除
      労働委員会が不当労働行為により解雇された労働者の救済命令において解雇期間中の得べかりし賃金相当額の遡及支払を命ずる場合に、被解雇者が右期間中他の職に就いて収入を得ていたときは、労働委員会は、解雇により被解雇者の受けた個人的被害の救済の観点のみから右他収入額を機械的にそのまま控除すべきではなく、右解雇が使用者の事業所における労働者らの組合活動一般に対して与えた侵害を除去し正常な集団的労使関係秩序を回復、確保するという観点をもあわせ考慮して、合理的裁量により、右他収入の控除の要否及びその程度を決定しなければならない。
    2. 不当労働行為によつて解雇された労働者が解雇期間中他の職に就いて得た収入を控除しないで賃金相当額全額の遡及支払を命じた労働委員会の救済命令が違法とされた事例
      不当労働行為によつて解雇された労働者がタクシー運転手であつて、解雇後比較的短期間内に他のタクシー会社に運転手として雇用されて従前の賃金額に近い収入を得ており、また、タクシー運転手の同業他桂への転職が当時比較的頻繁かつ容易であつたことなどにより、解雇による被解雇者の打撃が軽少で、当該事業所における労働者らの組合活動意思に対する制約的効果にも通常の場合とかなり異なるものがあつたなど判示の事情がある場合には、右他収入の控除を全く不問に付して賃金相当額全額の遡及支払を命じた労働委員会の救済命令は、特段の理由のない限り、裁量権行使の合理的な限度を超えるものとして、違法である。
  5. 救済命令取消(最高裁判決 昭和53年11月24日)労働組合法第27条
    労働組合法27条に基づく救済の申立があつた場合における使用者の同法7条違反の有無の判断と労働委員会の裁量権
    労働委員会は、労働組合法27条に基づく救済の申立があつた場合において、その裁量により、使用者が同法7条に違反するかどうかを判断することができるものではない。
  6. 地位確認(最高裁判決 昭和54年10月30日)労働組合法第1条2項
    労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の物的施設を利用して行う組合活動の当否
    労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動にあたらない。
  7. 不当労働行為救済命令取消(最高裁判決  昭和57年4月13日)
    ホテル業を営む会社の従業員で組織する労働組合が実施したいわゆるリボン闘争が労働組合の正当な行為にあたらないとされた事例
    ホテル業を営む会社の従業員で組織する労働組合が、ホテル内において就業時間中に組合員たる従業員が各自「要求貫徹」等と記入したリボンを着用するというリボン闘争を実施した場合において、その目的が、主として、結成後3か月の同組合の内部における組合員間の連帯感ないし仲間意識の昂揚、団結強化への士気の鼓舞という効果を重視し、同組合自身の体造りをすることにあつたなど判示のような事情があるときは、右リボン闘争は、就業時間中の組合活動であつて、労働組合の正当な行為にあたらない。
  8. 不当労働行為救済命令取消(最高裁判決 昭和58年2月24日)
    夏季一時金算定の基礎となる出勤率を計算するにあたりストライキによる不就労を欠勤として扱つた措置が労働組合法7条1号の不当労働行為にあたるとされた事例
    夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法7条1号の不当労働行為にあたる。
  9. 不当労働行為救済命令取消(最高裁判決 昭和60年4月23日)
    併存する企業内労働組合の一つが使用者の提案する残業の条件を拒否していることを理由にその組合員に対して残業を命じていない使用者の行為が労働組合法7条3号の不当労働行為に当たるとされた事例
    使用者がその企業内に併存する甲乙二つの労働組合のうち少数派の乙組合員に対して一切の残業を命じていない場合において、それが乙組合との団体交渉において製造部門につき既に甲組合との合意の下に実施している昼夜二交替制勤務及び計画残業からなる勤務体制に乙組合も服することが残業の条件であるとの使用者の主張を乙組合が拒否したため残業に関する合意が成立していないことを理由とするものであつても、使用者において右勤務体制を実施するに際し、乙組合に対してなんらの提案も行うことなく一方的に乙組合員を昼間勤務にのみ配置して残業に組み入れないこととし、また、右勤務体制を実施しない事務・技術部門においても乙組合員に対しては一切の残業を命じないこととする措置をとり、その後乙組合からの要求により右残業に関する使用者の措置が団体交渉事項となつたのちも誠実な団体交渉を行わず、右の措置を維持継続してこれを既成事実としたものであるなど判示のような事実関係があるときは、乙組合員に対し残業を命じていない使用者の行為は、同組合員を長期間経済的に不利益を伴う状態に置くことにより組織の動揺や弱体化を生ぜしめんとの意図に基づくものとして、労働組合法7条3号の不当労働行為に当たる。
  10. 各不当労働行為救済命令取消請求事件(最高裁判決 平成15年12月22日)日本国有鉄道改革法第6条,日本国有鉄道改革法第8条,日本国有鉄道改革法第15条,日本国有鉄道改革法第21条,日本国有鉄道改革法第22条,日本国有鉄道改革法第23条,旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律附則第2条
    1. JR各社の成立の時の職員の採用について専ら日本国有鉄道が組合差別をした場合におけるJR各社の設立委員ひいてはJR各社の労働組合法7条にいう使用者としての責任
      日本国有鉄道改革法6条2項所定の旅客鉄道株式会社及び同法8条2項所定の日本貨物鉄道株式会社の設立委員ひいては上記各社は,その成立の時の職員の採用について,日本国有鉄道がその職員の中から上記各社の職員となるべき者を選定してその名簿を作成するに当たり専らその意思により組合差別をしたという場合には,労働組合法7条にいう使用者として不当労働行為の責任を負わない。
      • (反対意見)
        国鉄は,承継法人の職員の採用のために設立委員の提示した採用の基準に従って採用候補者名簿の作成等の作業をすることとされ,国鉄総裁が設立委員に加わり,設立委員会における実際の作業も国鉄職員によって構成された設立委員会事務局によって行われたものと考えられる。このような採用手続の各段階における作業は,各々独立の意味を持つものではなく,すべて設立委員の提示する採用の基準に従った承継法人の職員採用に向けられた一連の一体的なものであって,同条において国鉄と設立委員の権限が定められていることを理由に,その効果も分断されたものと解するのは,あまりにも形式論にすぎるものといわざるを得ない。
    2. 雇入れの拒否と労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い
      雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いに当たらない。
      • (反対意見)
        承継法人は,国鉄の事業を引き継ぎ,上記実施計画の定めに従って権利及び義務を承継し,職員は国鉄職員のうちからのみ採用することとして,国鉄職員の約80%の職員を採用し,退職手当の支給について国鉄職員の在職期間を通算することとして雇用契約の一部を承継するなどしたのである。そして,6月採用は,被上告人JR北海道が,設立直後に追加採用として,募集対象者を北海道地区に勤務する事業団の職員に限定して行ったものである。同被上告人は,事業団移行前の上記職員と国鉄との雇用関係とこのような密接な関係を有していた以上,6月採用において労働者採用の自由について制限を受けるものというべきである。したがって,6月採用が新規の採用であることを理由として,その採用の拒否が労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いに当たらないと断ずることはできない。
  11. 労働委員会救済命令取消請求事件(最高裁判決 平成15年12月22日)
    労働組合の組合員に対する雇入れの拒否と労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い及び同条3号の支配介入
    労働組合の組合員に対する雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらない。
  12. 不当労働行為再審査申立棄却命令取消請求事件(最高裁判決 平成24年02月21日)労働組合法第3条
    音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結して顧客宅等での出張修理業務に従事する受託者につき,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
    音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結し,顧客宅等を訪問して行う出張修理業務に従事する受託者につき,次の(1)〜(5)など判示の事情の下において,独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無について十分に審理を尽くすことなく,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には,違法がある。
    1. 上記会社において,出張修理業務のうち多くの割合の業務は,上記会社自らの選抜を経て上記会社の実施する研修を了した上記受託者が担当しており,上記会社が上記受託者とその営業日及び業務量を調整した上で業務を割り振っている。
    2. 業務委託契約の内容は上記会社の作成した統一書式の契約書及び覚書によって画一的に定められており,業務の内容やその条件等について上記受託者の側で個別に交渉する余地はない。
    3. 上記受託者に支払われる委託料は,形式的には出来高払に類する方式で支払われているが,上記受託者は1日当たり通常5件ないし8件の出張修理業務を行い,その最終の顧客訪問時間は午後6時ないし7時頃になることが多く,委託料の額が修理する機器や修理内容に応じて著しく異なるといった事情も特段うかがわれない。
    4. 上記受託者は,特別な事情のない限り上記会社によって割り振られた出張修理業務を全て受注すべきものとされている上,業務委託契約の存続期間は1年間で,上記会社から申出があれば更新されないものとされている。
    5. 上記受託者は,原則として業務開始前に上記会社に出向いて上記会社の指定した顧客訪問予定日時等の告知を受け,上記会社の指定した業務担当地域に所在する顧客宅に順次赴き,上記会社の親会社の制服及び名札を着用し上記会社の名刺を携行して当該親会社が作成したマニュアルに従って所定の出張修理業務を行い,業務終了後も原則として上記会社に戻って伝票処理や修理進捗状況等の記録への入力作業を行っている。

前条:
労働組合法第6条
(交渉権限)
労働組合法
第2章 労働組合
次条:
労働組合法第8条
(損害賠償)
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