法学コンメンタール地方自治法

条文 編集

【署名の証明、署名簿の縦覧、署名の効力に関する争訟等】

第74条の2  
  1. 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は、条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めなければならない。この場合においては、当該市町村の選挙管理委員会は、その日から20日以内に審査を行い、署名の効力を決定し、その旨を証明しなければならない。
  2. 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときは、その日から7日間、その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない。
  3. 前項の署名簿の縦覧の期間及び場所については、市町村の選挙管理委員会は、予めこれを告示し、且つ、公衆の見易い方法によりこれを公表しなければならない。
  4. 署名簿の署名に関し異議があるときは、関係人は、第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる。
  5. 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定による異議の申出を受けた場合においては、その申出を受けた日から14日以内にこれを決定しなければならない。この場合において、その申出を正当であると決定したときは、直ちに第1項の規定による証明を修正し、その旨を申出人及び関係人に通知し、併せてこれを告示し、その申出を正当でないと決定したときは、直ちにその旨を申出人に通知しなければならない。
  6. 市町村の選挙管理委員会は、第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき、又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときは、その旨及び有効署名の総数を告示するとともに、署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない。
  7. 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服がある者は、その決定のあつた日から10日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てることができる。
  8. 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服がある者は、その決定のあつた日から14日以内に地方裁判所に出訴することができる。その判決に不服がある者は、控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる。
  9. 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者は、その裁決書の交付を受けた日から14日以内に高等裁判所に出訴することができる。
  10. 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは、当該都道府県の選挙管理委員会又は当該裁判所は、直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければならない。この場合においては、送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は、直ちに条例の制定又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない。
  11. 署名簿の署名に関する争訟については、審査の申立てに対する裁決は審査の申立てを受理した日から20日以内にこれをするものとし、訴訟の判決は事件を受理した日から100日以内にこれをするように努めなければならない。
  12. 第8項及び第9項の訴えは、当該決定又は裁決をした選挙管理委員会の所在地を管轄する地方裁判所又は高等裁判所の専属管轄とする。
  13. 第8項及び第9項の訴えについては、行政事件訴訟法 (昭和37年法律第139号)第43条 の規定にかかわらず、同法第13条 の規定を準用せず、また、同法第16条 から第19条 までの規定は、署名簿の署名の効力を争う数個の請求に関してのみ準用する。

解説 編集

関連条文 編集

判例 編集

  1. 町長解職請求署名簿の署名に関する決定の取消請求(最高裁判決 昭和28年06月12日)地方自治法第81条,地方自治法第74条の3,地方自治法第74条の4第1項,地方自治法第施行規則12条,地方自治法第施行規則9条
    1. 地方公共団体の長の解職請求者署名名簿の部落会の決議により部落民のした署名および請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して集めた署名の効力
      地方公共団体の長の解職請求者名簿に部落民が部落会の決議により署名し、あるいは請求代表者またはその代理人が第三者を同伴して署名を集めたからといつて、それだけでその署名が無効であるとはいえない。
    2. 署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかの市町村選挙管理委員会の認定と裁判所の権限
      署名が詐偽または強迫に基くものであるかどうかについての市町村選挙管理委員会の認定については、裁判所はその当否を判断することができる。
    3. 署名簿の様式に関する軽微な瑕疵と署名簿の効力
      署名簿の様式が地方自治法施行規則第12条、第9条に違反し、有効無効欄、備考欄を欠いていたからといつて、ただそれだけではその署名簿が無効であるとはいえない。
  2. 町長解職請求者署名無効確認等請求(最高裁判決 昭和30年09月22日)地方自治法第81条,地方自治法第85条1項,公職選挙法第202条,公職選挙法第203条
    地方公共団体の長の解職賛否投票後の解職請求者署名簿の署名の効力に関する訴の利益
    地方公共団体の長の解職賛否投票で有効投票の過半数が解職に賛成であつた場合、右投票の効力について争訟の提起がない以上、解雇請求者署名簿の署名の効力に関する訴は、これを維持する利益が失われる。
  3. 村長解職請求署名無効の取消請求(最高裁判決 昭和33年06月10日)地方自治法第81条,地方自治法施行令第116条,地方自治法施行令第92条
    1. 直接請求の署名簿の署名下に押された印影の内容が署名者の氏名と関連性を欠く場合と当該署名の効力
      直接請求の署名簿の署名下に押された印影の内容が署名者の氏名と関連性を欠く場合でも、署名者が自己の印として使用する意思をもつてこれを押印したものであることが認められる以上、右署名は、押印のある有効な署名と解すべきである
    2. 地方自治法第74条の2の規定による署名簿の署名に関する争訟の性質
      地方自治法第74条の2の規定による署名簿の署名に関する争訟は、個々の署名の効力の有無をその対象とするものである
  4. 署名の効力に関する異議申立に対する決定取消請求(最高裁判決 昭和36年03月30日)民訴法第225条(現・民事訴訟法第134条
    1. 地方自治法第74条の2第8項による訴で署名の有効確認を求めることができるか。
      地方自治法第74条の2第8項の訴で署名の有効確認を求めることができる。
    2. 条例廃止を求める直接請求のための署名簿の署名の効力に関する訴訟の条例廃止後の法律上の利益。
      条例の廃止を求める直接請求のための署名簿の署名の効力に関する訴訟の係属中、条例が廃止されたときは、右訴訟の法律上の利益は失われる。
  5. 区長解職請求者署名簿と選挙人名簿との照合確認証明行為取消請求(最高裁判決 昭和36年07月18日)地方自治法第283条,地方自治法第81条,地方自治法第255条の4
    1. 特別区の長の解職請求者署名簿における個々の署名の効力を争う方法。
      特別区の長の解職請求者署名簿における個々の署名の効力を争うには、署名簿の署名の効力に関する訴訟によらなければならない。
    2. 特別区の長の任期満了後における解職請求者署名簿の署名の効力を争う訴の利益。
      特別区の長の任期が満了したときは、解職請求者署名簿の署名の効力を争う訴の利益は、失われる。
  6. 町議会解散請求者署名名簿の署名の効力に関する異議決定取消請求(最高裁判決 昭和37年12月25日)地方自治法第255条の4
    直接請求の署名簿そのものの効力を争うについて地方自治法第255条の4の適用の有無。
    直接請求の署名簿そのものの効力を争うについても、地方自治法第255条の4の適用があり、同法第74条の2の規定によつてのみ争訟を提起することができる。

前条:
地方自治法第74条
【条例の制定・改廃の請求】
地方自治法
第2編 普通地方公共団体

第5章 直接請求

第1節 条例の制定及び監査の請求
次条:
地方自治法第74条の3
【署名の効力、関係人の出頭証言】
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