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条文

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【財産権】

第29条
  1. 財産権は、これを侵してはならない。
  2. 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  3. 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

解説

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ウィキペディア日本国憲法第29条の記事があります。

財産権の保障も参照。

財産権の保障

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財産権の規制

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規制の合憲性判断

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森林法共有林事件 (最高裁大法廷判決 昭和62年04月22日)
規制目的が正当であること
立法の規制目的が社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかである場合は違憲と判定される。
規制手段が合理的であること
規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合は違憲と判定される。

財産権の侵害と損失補償

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参照条文

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判例

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  1. 農地改革事件(最高裁大法廷判決 昭和28年12月23日) 
    自作農創設特別措置法第6条第3項本文の農地買収対価と憲法第29条第3項にいわゆる「正当な補償」
    自作農創設特別措置法第6条第3項項本文の農地買収対価は、憲法第29条第3項にいわゆる「正当な補償」にあたる。
  2. 宅地買収計画取消請求(最高裁第二小法廷判決 昭和29年1月22日)
    自作農創設特別措置法第15条第1項第2号による宅地の買収と憲法第29条第3項
    自作農創設特別措置法第15条第1項第2号による宅地の買収は、公共のためであつて、憲法第29条第3項に違反しない。
  3. 土地賃貸借契約等無効確認請求(最高裁判決 昭和35年2月10日)憲法第14条憲法第81条(→判例
    農地法第20条と憲法第14条、第29条
    農地法第20条は、憲法第14条、第29条に違背しない。
    • 地主の賃貸借更新拒絶に対する都道府県知事の許可は農地法20条1項所定の場合でなければしてはならないのであつて、不許可の場合には、農地法85条1項1号による農林大臣への訴願によつて、あるいは裁判所に対する行政事件訴訟の提起によつて、これを是正することができるのであるから、農地法20条は地主に対し、必ずしも土地賃貸借の継続を強制し、あるいはこれによつて地主に経済的な不利益を与えて一般土地の所有者と不当に差別待遇しているものとは云えない。
    • 農地における地主の賃貸権の処分に関して農地所有者の地位が一般土地の所有者に比して不利益になつていることは認めざるを得ないところである。しかし、農業経営の民主化の為め小作農の自作農化の促進、小作農の地位の安定向上を重要施策としている現状の下では、右程度の不自由さは公共の福祉に適合する合理的な制限と認むべきであり、また、右のような農地所有者の不利益も公共の福祉を維持する上において甘受しなければならない程度のものと認むべきである。
  4. 第三者所有物没収事件(最高裁大法廷判決 昭和37年11月28日 2件)憲法31条 
    • 関税法違反(刑集 第16巻11号1593頁) 旧関税法(昭和29年法律第61号による改正前の関税法をいう。)第83条第1項
    • 関税法違反(刑集 第16巻11号1577頁) 関税法第118条第1項
    1. 旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項により第三者の所有物を没収することは、、憲法第31条、第29条に違反するか
      旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第31条、第29条に違反する。
      • 第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところである。
    2. 第三者所有物の没収の違憲を理由として上告することができるか
      前項の場合、没収に言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、これを違憲であるとして上告をすることができる。
      • かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべき。
  5. ため池の保全に関する条例違反奈良県ため池条例事件 最高裁大法廷判決 昭和38年6月26日)憲法31条, 憲法94条
    奈良県ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例第38号)第4条第2号、第9条(所定のため池の堤とうに竹木若しくは農作物を植える等の行為をした者を3万円以下の罰金に処するとしたもの)の合憲性。
    奈良県ため池の保全に関する条例(昭和29年奈良県条例第38号)第4条第2号、第9条は、憲法第29条第2項、第3項に違反しない。
    • ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、本条例1条の示す目的のため、その財産権の行使を殆んど全面的に禁止されることになるが、それは災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであつて、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため、当然これを受忍しなければならない責務を負うというべきである。すなわち、ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであつて、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にあるものというべく、従つて、これらの行為を条例をもつて禁止、処罰しても憲法および法律に牴触またはこれを逸脱するものとはいえないし、また右条項に規定するような事項を、既に規定していると認むべき法令は存在していないのであるから、これを条例で定めたからといつて、違憲または違法の点は認められない。
  6. 収賄(最高裁判決 昭和40年4月28日)日本国憲法第31条
    刑法(昭和33年法律第107号による改正前のもの)第197条の4により第三者に対し追徴を命ずることは憲法第31条、第29条に違反するか。
    刑法(昭和33年法律第107号による改正前のもの)第197条の4(現行法:刑法第197条の5)により第三者に対し追徴を命ずることは憲法第31条、第29条に違反する。
    • 第三者に対する追徴は、被告人に対する刑と共に言渡されるものであるが、没収に代わる処分として直接に第三者に対し一定額の金員の納付を命ずるものであるから、当該第三者に対し告知せず、弁解、防禦の機会を与えないで追徴を命ずることは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科するものであつて、憲法の右規定に違反するものといわなければならない。
    • 情を知つた第三者の収受した賄賂の全部又は一部を没収することができないときはその価額を追徴する旨を規定しながら、その追徴を命ぜられる第三者に対する告知の手続及び弁解、防禦の機会を与える手続に関しては刑訴法その他の法令になんら規定するところがなく、本件においても、第三者たるBは単に証人として第一審裁判所及び原審裁判所において取調べられているのに過ぎないのであるから、右手続を履むことなく刑法の右規定によつて同人から賄賂に代わる価額を追徴することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。
  7. 河川附近地制限令違反事件(最高裁大法廷判決 昭和43年11月27日)
    1. 河川附近地制限令第4条第2号第10条と憲法第29条
      河川附近地制限令第4条第2号、第10条は、憲法第29条第3項に違反しない。
      • 河川附近地制限令4条2号の定める制限は、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止するため、単に所定の行為をしようとする場合には知事の許可を受けることが必要である旨を定めているにすぎず、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。
      • 定め自体としては、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、右の程度の制限を課するには損失補償を要件とするものではなく、したがつて、補償に関する規定のない同令4条2号の規定が所論のように憲法29条3項に違反し無効であるとはいえない。
    2. 憲法第29条第3項の意義
      財産上の犠牲が単に一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合には、これについて損失補償に関する規定がなくても、直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をする余地がないではない。
      • 従来、相当の資本を投入して営んできた事業が営み得なくなるために相当の損失を被る筋合であるとすれば、その財産上の犠牲は、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく、憲法29条3項の趣旨に照らし、さらに同趣旨の法令による規制について損失補償をすべきものとしていることとの均衡からいつて、被つた現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある。
  8. 国有財産買受申込拒否処分取消(最高裁大法廷判決昭和53年7月12日)憲法第14条
    (事件概要)
    国有農地等の売払いに関する特別措置法(以下「特別措置法」という。)附則2項によれば、同法はその施行日以後に売払いを受ける買収農地について適用されるものであるから、同法の施行日前に自作農の創設又は土地の農業上の利用の増進の目的に供しないこと(以下「自作農の創設等の目的に供しないこと」という。)を相当とする事実が生じた買収農地であつても、同法の施行日前に売払いを受けたものでない限り、その適用を受けるという準則に対して、同法の施行日前に売払いを受けた者でない者が財産権の侵害として訴えたもの。
    1. 特別措置法2条、同法附則2項、同法施行令2条と憲法29条
      • 「改正前の農地法」80条に基づいて買収前の農地の所有者等が有していた、買収の対価に相当する額で買収農地の売払いを求めうるという民事上の財産権を侵害する点において、憲法29条に違反するか。
      特別措置法2条、同法附則2項、同法施行令2条は憲法29条に違反しない。
      • 法律でいつたん定められた財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、これをもつて違憲の立法ということができないことは明らか。
      • 右の変更が公共の福祉に適合するようにされたものであるかどうかは、いつたん定められた法律に基づく財産権の性質、その内容を変更する程度、及びこれを変更することによつて保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによつて、判断すべき。
    2. 特別措置法2条、同法附則2項、同法施行令2条と憲法14条
      • 既に売払いを受けた者と売払いを受けていない者とを売払いの対価の点で差別して取り扱うことは憲法14条に違反するか。
      特別措置法2条、同法附則2項、同法施行令2条は憲法14条に違反しない。
      • 憲法14条は、もとより合理的理由のある差別的な取扱いまでをも禁止するものではないから、特別措置法の立法に合理的理由がある以上、たとえ国に対して当該買収農地の売払いを求める権利を取得した者について、同法の施行日前に売払いを受けた場合と同法の施行日以後に売払いを受ける場合との間において差別的な取扱いがされることになるとしても、これをもつて違憲であるとすることができないことは明らかである。
  9. 共有物分割等森林法共有林事件 最高裁大法廷判決 昭和62年04月22日)民法第256条民法第258条、森林法第186条(削除)
    • 森林法第186条(当時、現在は本判決を受け削除)
      森林の共有者は、民法(明治29年法律第89号)第256条第1項(共有物の分割請求)の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもって分割の請求をすることを妨げない。
    森林法186条本文と憲法29条2項
    森林法186条本文は、憲法29条2項に違反する。
    • 憲法29条は、1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、2項において「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみでなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につきこれを基本的人権として保障するとともに、社会全体の利益を考慮して財産権に対し制約を加える必要性が増大するに至つたため、立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる。
    • 財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、右のとおり立法府が社会全体の利益を図るために加える規制により制約を受けるものであるが、この規制は、財産権の種類、性質等が多種多様であり、また、財産権に対し規制を要求する社会的理由ないし目的も、社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで多岐にわたるため、種々様々でありうるのである。したがつて、財産権に対して加えられる規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によつて制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものであるが、裁判所としては、立法府がした右比較考量に基づく判断を尊重すべきものであるから、立法の規制目的が前示のような社会的理由ないし目的に出たとはいえないものとして公共の福祉に合致しないことが明らかであるか、又は規制目的が公共の福祉に合致するものであつても規制手段が右目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかであつて、そのため立法府の判断が合理的裁量の範囲を超えるものとなる場合に限り、当該規制立法が憲法29条2項に違背するものとして、その効力を否定することができる。
    • 民法第256条の立法の趣旨・目的を案ずるに、当該共有物がその性質上分割することのできないものでない限り、分割請求権を共有者に否定することは、憲法上、財産権の制限に該当し、かかる制限を設ける立法は、憲法29条2項にいう公共の福祉に適合することを要するものと解すべきところ、共有森林はその性質上分割することのできないものに該当しないから、共有森林につき持分価額二分の一以下の共有者に分割請求権を否定している森林法186条は、公共の福祉に適合するものといえないときは、違憲の規定として、その効力を有しない。
  10. 短期売買利益返還請求事件(最高裁判決 平成14年2月13日)証券取引法第164条第1項(上場会社等の役員等の短期売買利益の返還 現・金融商品取引法第164条
    1. 証券取引法164条1項(短期売買取引利益返還)の趣旨
      証券取引法164条1項は,上場会社等の役員又は主要株主が同項所定の有価証券等の短期売買取引をして利益を得た場合には,同条8項に規定する内閣府令で定める場合に当たるとき又は類型的にみて取引の態様自体から役員若しくは主要株主がその職務若しくは地位により取得した秘密を不当に利用することが認められないときを除き,当該取引においてその者が秘密を不当に利用したか否か,その取引によって一般投資家の利益が現実に損なわれたか否かを問うことなく,当該上場会社等はその利益を提供すべきことを当該役員又は主要株主に対して請求することができるものとした規定である。
    2. 証券取引法164条1項と憲法29条
      証券取引法164条1項は憲法29条に違反しない。
      • 財産権は,それ自体に内在する制約がある外,その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。財産権の種類,性質等は多種多様であり,また,財産権に対する規制を必要とする社会的理由ないし目的も,社会公共の便宜の促進,経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策に基づくものから,社会生活における安全の保障や秩序の維持等を図るものまで多岐にわたるため,財産権に対する規制は,種々の態様のものがあり得る。このことからすれば,財産権に対する規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは,規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものである。
  11. 約定金,寄託金返還請求事件(最高裁判決 平成15年4月18日)証券取引法第42条の2第1項3号
    証券取引法42条の2第1項3号が平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づく履行の請求をも禁止していることと憲法29条
    証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しない。
    • 証券取引法42条の2第1項3号は,平成3年法律第96号による証券取引法の改正前に締結された損失保証等を内容とする契約に基づいてその履行の請求をする場合も含め,利益提供行為を禁止するものであるが(法制定以前に締結された契約も無効にする),① 同改正前に締結された契約に基づく利益提供行為を認めることは投資家の証券市場に対する信頼の喪失を防ぐという上記目的を損なう結果となりかねないこと,② 前記内閣府令に定める事故による損失を補てんする場合であれば証券取引法42条の2第1項3号の規定は適用されないこと(同条3項),③ 損失保証等を内容とする契約に基づく履行請求が禁止される場合であっても,一定の場合には顧客に不法行為法上の救済が認められる余地があること,④ 私法上有効であるとはいえ,損失保証等は,元来,証券市場における価格形成機能をゆがめるとともに,証券取引の公正及び証券市場に対する信頼を損なうものであって,反社会性の強い行為であるといわなければならず,もともと証券取引法上違法とされていた損失保証等を内容とする契約によって発生した債権が,財産権として一定の制約に服することはやむを得ないものであるといえる。
  12. 不当利得返還請求事件(最高裁判例  平成18年11月27日) 消費者契約法第9条
    消費者契約法9条1号と憲法29条
    消費者契約法9条1号は憲法29条に違反しない。
    • 消費者契約法は,消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすること等によって,消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的として制定されたものであり,上記のような消費者と事業者との間に存する格差に着目して,同法2条において,両者の間で締結される契約を広く同法の適用対象と定め,同法9条1号は,消費者契約の解除に伴って事業者が消費者に対し高額な損害賠償等を請求することによって,消費者が不当な出えんを強いられることを防止することを目的とするものであって,このような立法目的が正当性を有することは明らかである。
    • 同号は,損害賠償の予定等を定める条項をすべて無効とするのではなく,そのうち,解除される消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とするにとどまるのであり,このことからすれば,同号の規定が,上記のような立法目的達成のための手段として,必要性や合理性を欠くものであるとすることはできない。
  13. 所有権移転登記手続等請求事件(最高裁第一小法廷判決 平成21年4月23日)建物の区分所有等に関する法律第70条
    建物の区分所有等に関する法律70条と憲法29条
    建物の区分所有等に関する法律70条は,憲法29条に違反しない。
    • (「区分所有法70条によれば,団地内全建物一括建替えにおいては,各建物について,当該建物の区分所有者ではない他の建物の区分所有者の意思が反映されて当該建物の建替え決議がされることになり,建替えに参加しない少数者の権利が侵害され,更にその保護のための措置も採られていないなどとして,同条が憲法29条に違反する」旨の主張に対して)
      1. 区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるばかりか,一部の区分所有者の区分所有権の行使によって,大多数の区分所有者の区分所有権の合理的な行使が妨げられることになるから,1棟建替えの場合に区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議ができる旨定めた区分所有法62条1項は,区分所有権の上記性質にかんがみて,十分な合理性を有する(規定の合理性)。
      2. 建替えに参加しない区分所有者は,売渡請求権の行使を受けることにより,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すこととされているのであり,その経済的損失については相応の手当がされている(少数者に対する補償の存在)。
  14. 更新料返還等請求本訴,更新料請求反訴,保証債務履行請求事件(最高裁判決 平成23年07月15日)消費者契約法第10条
    消費者契約法10条と憲法29条1項
    消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。

前条:
日本国憲法第28条
【勤労者の団結権】
日本国憲法
第3章 国民の権利及び義務
次条:
日本国憲法第30条
【納税の義務】
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