民法第258条
条文
編集(裁判による共有物の分割)
- 第258条
- 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
- 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
- 共有物の現物を分割する方法
- 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
- 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
- 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、 金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
改正経緯
編集2021年改正により、以下の通り改正。
- 第1項
- 下線部を追加。
- (改正前)共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
- (改正後)共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
- 下線部を追加。
- 第2項を新設。
- 旧・第2項の文言を改正の上、項番を第3項に繰り下げ。
- (改正前)前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき
- (改正後)前項に規定する方法により共有物の現物を分割することができないとき
- 第4項を新設。
解説
編集裁判による共有物の分割の方法及び手続についての規定。
参照条文
編集- 民法第256条(共有物の分割請求)
判例
編集- 共有物分割請求(最高裁判決 昭和30年05月31日)民法第898条,民法第256条,民法第906条,民法第907条,旧民法第1002条,家事審判法第9条乙類10号,家事審判規則第104条,家事審判規則第107条
- 共有物分割ならびに所有権確認等反訴請求(最高裁判決 昭和45年11月06日)
- 民法258条によつてなされる数個の共有物の現物分割が共有者においてそれぞれ各個の物の単独所有権を取得する方法によることが許されるとされた事例
- 数個の共有建物が一筆の土地上にあり外形上一団の建物とみられる場合に、民法258条により右建物につき現物分割をするには、右建物を一括して分割の対象とし、共有者がそれぞれ各個の建物の単独所有権を取得する方法によることも許される。
- 共有物分割請求(最高裁判決 昭和46年06月18日) 民法第177条
- 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」の意義
- 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をすることができない場合を含むものであつて、現実に協議をしたうえで不調に終わつた場合に限られるものではない。
- 共有物分割訴訟と持分譲受の登記
- 不動産の共有物分割訴訟においては、共有者間に持分の譲渡があつても、その登記が存しないため、譲受人が持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができないときは、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割を命ずべきである。
- 民法258条2項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」の意義
- 法258条2項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念土適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべきである。
- 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」の意義
- 共有物分割請求 (最高裁判決 昭和50年11月07日)民法第907条
- 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が共有関係解消のためにとるべき裁判手続
- 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。
- 共有物分割(最高裁判決 昭和57年03月09日)民訴法第186条(現・民事訴訟法第268条)
- 共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否
- 共有物分割の訴えにおいては、当事者は、共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することを要しない。
- 共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときと裁判の内容
- 共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができる。
- 共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否
- 森林法共有林事件(最高裁判決 昭和62年04月22日)憲法29条、民法第256条、森林法186条
- 森林法186条本文と憲法29条2項
- 森林法186条本文は、憲法29条2項に違反する。
- 民法258条による共有物の現物分割と価格賠償の方法による調整
- 民法258条により共有物の現物分割をする場合には、その一態様として、持分の価格を超える現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせて過不足を調整することも許される。
- 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産についての民法258条による現物分割といわゆる一括分割
- 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法258条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。
- 民法258条による多数共有者間の現物分割といわゆる一部分割
- 多数の者が共有する物を民法258条により現物分割する場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許される。
- 森林法186条本文と憲法29条2項
- 共有物分割(最高裁判決 平成4年01月24日)
- 分割請求者が多数である場合における民法258条による現物分割といわゆる一部分割
- 民法258条により共有物の現物分割をする場合において、分割請求者が多数であるときは、分割請求の相手方の持分の限度で現物を分割し、その余は分割請求者の共有として残す方法によることも許される。
- 持分権確認並びに共有物分割(最高裁判決 平成8年10月31日)
- いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく競売による分割をすべきものとした原審の判断に違法があるとされた事例
- 共有不動産の分割をする場合において、右不動産が、病院、その附属施設及びこれらの敷地として一体的に病院の運営に供されており、これらを切り離して現物分割をすれば病院運営が困難になることも予想され、また、共有者の一人である甲が競売による分割を希望しているのに対し、他の共有者である乙及び丙は、右不動産を競売に付することなく、自らがこれを取得するいわゆる全面的価格賠償の方法による分割を希望しているところ、右不動産を乙及び丙に取得きせるのが相当でないということはできない上、乙及び丙の支払能力のいかんによっては、右不動産の適正な評価額に従って甲にその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないにもかかわらず、全面的価格賠償の方法により右不動産を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく、直ちに競売による分割をすべきものとした原審の判断には、違法がある。
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