民法第249条
条文
編集(共有物の使用)
- 第249条
- 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
- 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
- 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
改正経緯
編集2021年改正により、第2項及び第3項を新設。
解説
編集共有物の権利者の利用権についての規定。
参照条文
編集判例
編集- 建物収去、土地明渡請求(最高裁判決 昭和29年12月23日)民法第388条
- 土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じた場合と法定地上権の成否
- 土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じたとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘らずそのものの持分までが無視されるべきいわれはなく、当該共有土地については、なんら地上権は発生しない。
- 所有権確認並びに所有権保存登記抹消手続請求(最高裁判決 昭和33年07月22日)民法第668条,民法第252条,民法第177条
- 組合財産共有の性質。
- 組合財産についても、民法第667条以下において特別の規定のなされていない限り、民法第249条以下の共有の規定が適用される。
- 組合員の一人のなす登記抹消請求の許否。
- 組合員の一人は、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる。
- 組合財産共有の性質。
- 登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和38年02月22日)民法第177条、民法第898条
- 共同相続と登記
- 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。
- 共有持分に基づく登記抹消請求の許否
- 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
- 当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否
- 右の場合、甲が乙丙に対し右登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が乙丙に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、民訴法第186条に反しない。
- 共同相続と登記
- 境界確認損害賠償請求(最高裁判決 昭和40年05月20日 )民事訴訟法第62条
- 共有持分権の及ぶ土地の範囲の確認を求める訴と必要的共同訴訟。
- 土地の共有者は、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、各自単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができる。
- 土地所有権確認等請求および反訴請求(最高裁判決 昭和41年05月19日)
- 共有物の持分の価格が過半数をこえる者が共有物を単独で占有する他の共有者に対して共有物の明渡請求をすることができるか
- 共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
- 貸金請求(最高裁判決 昭和44年11月04日) 民法第388条,民法第555条,土地区画整理法第99条,土地区画整理法第85条,土地区画整理法第98条
- 仮換地上の建物の競落と法定地上権
- 従前の土地の所有者の所有する仮換地上の建物が抵当権の実行により競落されたときは、従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は、右法定地上権に基づいて仮換地の使用収益が許されるものと解するのが相当である。
- 仮換地の一部分につき売買契約を締結した場合と仮換地の使用収益権
- 土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定して締結され従前の土地そのものにつき買受部分を特定してされたものでないときは、特段の事情のないかぎり、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分について売買契約が締結され、買主と売主とは従前の土地の共有者となるとともに、仮換地上に準共有関係として従前の土地の持分の割合に応じた使用収益権を取得するものと解するのが相当である。
- 従前の土地の共有者の一人の所有する仮換地上建物が競落された場合に法定地上権の成立が認められた事例
- 前項の場合において、売主と買主との協議により、仮換地上の買受部分を買主の所有とする旨の合意が成立していたときは、買主が買受土地上に建築所有する建物につき設定された抵当権の実行により、右建物の競落人のため従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は右法定地上権に基づいて仮換地上の建物敷地を占有しうべき権原を取得するものと解するのが相当である。
- 仮換地上の建物の競落により法定地上権が成立した場合において土地区画整理事業施行者から使用収益部分の指定を受けない間における競落人の建物所有による敷地の占有と不法占有の成否
- 仮換地上の建物が競落されたことにより従前の土地に法定地上権が成立したときは、右法定地上権について土地区画整理事業施行者から仮換地上に使用収益すべき部分の指定を受けない間においても、競落人の建物所有による敷地の占有は、抵当権設定者たる仮換地使用収益権者との関係では不法占有とならない。
- 仮換地上の建物の競落と法定地上権
- 建物収去土地明渡等請求等(最高裁判決 昭和51年09月07日 )民法第709条
- 共有物に対する不法行為と共有者の損害賠償請求権の範囲
- 共有者は、共有物に対する不法行為によつて被つた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
- 建物収去土地明渡(最高裁判決 昭和57年06月17日)民法第206条,民法第252条,民法第555条
- 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例
- 一筆の土地の一部分の売買契約において、売却部分の面積が60坪となるよう右土地の南端から8メートル余の地点で東西に線を引くと楠の根がかかることになり、また、その西側部分については、後日、東西の市道からの進入路を拡幅するために必要な部分を買主において提供することが予定されていたので、売買契約書上では約60坪と表示し、分筆・移転登記の際の正確な測量に基づいて売り渡すべき土地の範囲を確定することにしたときは、売買の対象である土地部分が具体的に特定しているとはいえない。
- 多数持分権者との間の売買契約に基づいて共有地の一部分の引渡を受けた者に対する少数持分権者からの返還請求ができないとされた事例
- 多数持分権者が、共有地の一部分についての売買契約を締結し、具体的な土地の範囲を確定しないまま、おおよその部分を買主に引き渡してこれを占有使用させているときは、右占有使用の承認が共有者の協議を経ないものであつても、少数持分権者は、当然には買主に対して右土地部分の返還を請求することができない。
- 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例
- 診療所明渡請求事件(最高裁判決 昭和63年05月20日)民法第252条
- 共有者の一部の者から共有物の占有使用を承認された第三者に対するその余の共有者からの明渡請求の可否
- 共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者に対して、その余の共有者は、当然には、共有物の明渡しを請求することができない。
- 土地建物共有物分割等(最高裁判決 平成8年12月17日)民法第593条,民法第703条,民法第898条,民事訴訟法第185条
- 遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合
- 共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
- なお、2018年改正によって、相続人たる配偶者については「配偶者居住権」の制度が法定された。
- 建物根抵当権設定登記等抹消登記(最高裁判決 平成9年06月05日)民法第379条
- 共有持分権に基づく妨害排除、遺言無効確認等(最高裁判決 平成10年03月24日 )民法第251条
- 共有者の一人による共有物の変更と他の共有者からの原状回復請求の可否
- 共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合には、他の共有者は、特段の事情がない限り、変更により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることができる。
- 持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件(最高裁判決 平成15年07月11日)民法第252条
- 不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否
- 不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
- 土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件 (最高裁判決 平成17年12月15日)民法第898条,不動産登記法第66条,不動産登記法第68条
- 甲名義の不動産につき乙,Yが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合において甲の共同相続人であるXが上記登記の全部抹消を求めることの可否
- 名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
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