法学民事法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文

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離婚又は認知の場合の親権者

第819条
  1. 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
  2. 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
  3. 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
  4. 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
  5. 第1項、第3項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
  6. 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
  7. 裁判所は、第2項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
    1. 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
    2. 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第1項、第3項又は第4項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
  8. 第6項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第1条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

改正経緯

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離婚後共同親権を認めた、2024年改正(2024年(令和6年)5月21日公布、施行日未定、公布より2年以内に施行する)により以下のとおり改正。

  1. 第1項
    (改正前)その一方を親権者と定めなければならない。
    (改正後)その双方又は一方を親権者と定める。
  2. 第2項
    (改正前)父母の一方を親権者と定める。
    (改正後)父母の双方又は一方を親権者と定める。
  3. 第3項
    (改正前)父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
    (改正後)父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
  4. 第4項
    (改正前)父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
    (改正後)母が行う。ただし、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。
  5. 第6項
    (改正前)子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる
    (改正後)子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
  6. 第7項及び第8項を新設

解説

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離婚時に父母の双方又はどちらか一方を子の親権者として定めること及びその手続きについて規定する。戦後改正により、明治民法第877条民法第818条と分割し制定されたもの。
2024年改正までは、離婚した父母のいずれか一方を親権者として定めなければばらなかったが(単独親権制)、同改正により父母のいずれか一方でも双方でも親権者として定めることができるようになった(選択的共同親権制)。
協議離婚においては、第1項の協議が整っていることが離婚届での受理要件となっている(民法第765条)。

参照条文

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参考

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明治民法において、本条には裁判離婚における協議離婚の規定の準用に関する以下の規定があった。趣旨は、民法第771条に継承された。

第八百十二条ノ規定ハ裁判上ノ離婚ニ之ヲ準用ス但裁判所ハ子ノ利益ノ為メ其監護ニ付キ之ニ異ナリタル処分ヲ命スルコトヲ得

前条:
民法第818条
(親権)
民法
第4編 親族

第4章 親権

第1節 総則
次条:
民法第820条
(監護及び教育の権利義務)
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