刑法第45条
条文編集
(併合罪)
- 第45条
- 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
改正経緯編集
以下のとおり改正。施行日については未定(2022年10月4日時点)。
- (改正前)禁錮
- (改正後)拘禁刑
解説編集
本条は、併合罪となる場合を定めたものである。
判例編集
- 邸宅侵入、窃盜(最高裁決定 昭和34年02月09日)
- 刑法第45条後段の法意
- 刑法第45条後段は、裁判確定前に犯した罪が確定裁判を経た罪と併合罪となり、その後に犯した罪とは併合罪にならない趣旨を規定したものであつて、その処断刑まで定めたものではない。
- 確定裁判前に犯した罪が数個あるときの適条
- 確定裁判前に犯した罪が数個あつて、同時に審判すべき場合においては、刑法45条後段の外、その前段を適用して併合罪加重を行うべきである。
- 刑法第45条後段の法意
- 業務上過失傷害、道路交通取締法第違反、要保護者遺棄(最高裁判決 昭和34年07月24日)
- 自動車操縦者の被害者救護義務違反と要保護者遺棄罪の成否
- 自動車の操縦中過失に因り通行人に約3ケ月の入院加療を要する歩行不能の重傷を負わしめながら道路交通取締法、同法施行令に定める被害者の救護措置を講ずることなく、被害者を自動車に乗せて事故現場を離れ、折柄降雪中の薄暗い車道上まで運び、医者を呼んで来てやる旨申し欺いて被害者を自動車から下ろし、同人を同所に放置したまま自動車を操縦して同所を立ち去つたときは、道路交通取締法違反(被害者救護義務違反 道路交通取締法第24条,道路交通取締法第施行令67条)罪のほか要保護者遺棄罪(刑法第218条)が成立する。
- 覚せい剤取締法第違反、銃砲刀剣類等所持取締令違反、酒税法第違反(最高裁決定 昭和35年02月09日)銃砲刀剣類等所持禁止令2条,銃砲刀剣類等所持禁止令26条1号
- 刀剣不法所持の継続中他の罪につき確定裁判があつたときと刑法第45条
- 刀剣不法所持の犯罪は、いわゆる継続犯として一罪であり不法所持の継続の終了の時を犯罪終了時と解すべきであるから、不法所持の継続中に他の罪につき確定裁判があつても、その罪と刑法第45条後段の併合罪となるものではない。
- 賍物収受、賍物故買、賍物牙保、賍物寄蔵(最高裁決定 昭和45年09月29日)
- 刑法27条による刑の言渡の失効と同法45条後段の併合罪関係の成否
- 刑法第27条によつて、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失つても、そのことは同法45条後段の併合罪関係の成否とは相関しない。
- みのしろ金目的拐取、拐取者みのしろ金取得等、監禁(最高裁決定 昭和58年09月27日)
- みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が被拐取者を監禁しみのしろ金を要求した場合の罪数関係
- みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にある。
- 常習累犯窃盗(最高裁決定 昭和62年02月23日)
- 常習累犯窃盗の罪と別の機会に窃盗目的で犯された軽犯罪法1条3号(侵入具携帯)の罪との罪数関係
- 盗犯等の防止及び処分に関する法第律3条(常習累犯窃盗の罪)と軽犯罪法第1条3号(侵入具携帯)の罪とが機会を異にして犯された場合には、たとえ侵入具携帯が常習性の発現と認められる窃盗を目的とするものであつたとしても、両罪は併合罪の関係にある。
- 業務上堕胎、保護者遺棄致死、死体遺棄(最高裁決定 昭和63年01月19日)
- 道路交通法第違反(最高裁決定 平成5年10月29日)
- 制限速度を超過した状態で継続して自動車を運転した場合の二地点における速度違反の行為が併合罪の関係にある別罪を構成するとされた事例
- 制限速度を超過した状態で継続して普通乗用自動車を運転し、二地点を進行した場合、右二地点間の距離が約19.4キロメートルも離れており、その間道路状況等も変化している本件事案においては、右二地点における速度違反の行為は併合罪の関係にある別罪を構成する。
- 道路交通法第4条1項,道路交通法第22条1項,道路交通法第118条1項2号,道路交通法第施行令1条の2第1項
- 窃盗,出入国管理及び難民認定法第違反被告事件(最高裁判決 平成18年08月30日)刑法第45条前段,刑法第48条1項
- 併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合と刑法21条にいう「本刑」
- 併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合,その刑が刑法21条にいう「本刑」に該当し,この理は,その刑が懲役刑と罰金刑を併科するものであるときでも異ならない。
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