法学刑事法刑法刑法総論罪数論

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ウィキペディア罪数の記事があります。

総論

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罪数を論ずる意義

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罪数を区別する基準

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罪数の種類

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各論

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本来的一罪

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単純一罪

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刑法各則において定める犯罪類型ないし構成要件を1回充足する事実。罪数を論ずる前提となる。
以下に関しては、単独の一罪を構成する。
  1. 保護法益を基準として罪数が決せられる場合
    • 放火罪は、個々の個人の生命・身体・財産の価値より、それらを包括した公共の安全を保護法益としているため、1個の行為で延焼等が起こったとしても1個の犯罪と評価される。
    • 窃盗につき、1個の侵入・盗取行為で複数の所有者にかかる物品を盗取したとしても、保護法益の見解(本権説・占有説)に関わらず1罪とのみ評価される。
  2. 構成要件が、初めから数個の行為を予定している場合(集合犯)。以下に分類される。
    1. 常習犯 - 一定の犯罪を反復して行う習癖のある犯罪(cf.累犯
      例.常習賭博(刑法第186条第1項)
    2. 職業犯 - 業として一定の犯罪行為を繰り返すもの
      例.わいせつ物頒布等(刑法第175条)、違法薬物の頒布
    3. 営業犯 - 職業犯の目的に営利を含むもの
      例.無免許医業罪(医師法第17条→罰則:医師法第31条1項1号)
    4. 結合犯 - それぞれ単独でも犯罪とされる2個以上の行為を結合して一つの構成要件としたもの。
      例.強盗・不同意性交等罪(刑法第241条

法条競合

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一つの事実が同時に一つの犯罪類型ないし構成要件に該当し、2個の単純一罪が成立するように見えるが、実はやはり単純一罪は1個のみしか成立しない場合、即ち、それぞれの犯罪類型ないし構成要件は論理的に重なっており、その一方だけの適用が予定されている場合をいう。このような場合、数個の犯罪の成立を認めると、一個の犯罪事実に対して複数の評価を行う異になり妥当ではないので、一個の犯罪の成立のみを認める。その性質について、講学上、概ね以下の分類がなされるが、択一関係の分類を認めないなど論者によって見解を異にする。以下の分類は、あくまでも、講学上の整理であるので、詳細にこだわる必要はない。
  1. 特別関係
    罰条に適用される身分等の要件が添加される場合。特別法における罰則規定に多く見られ、「特別法は一般法を破る」の原則により、構成要件が添加された特別法が適用され一般法は適用されない。ただし、一般法の判例等は特別法の趣旨に反しない限り適用される。
    例.
  2. 補充関係
    基本となる罰条(基本法規)の構成要件の一部を除き、その欠如した部分を補充(補充法規)する場合。基本法規が適用されるかを判断し、それにあたらない場合に補充法規の成否が判断される。以下に示す放火犯の事例が典型であるが、上記特別関係において、補充法規を一般法と、一般法規を特別法とみなす場合の取り扱いの差はないので、特別関係に含め、これを分けない見解もある。
    例.
  3. 吸収関係
    構成要件に、そもそもその犯罪類型が含まれている(吸収されている)場合、被吸収の犯罪は評価しない。
  4. 択一関係
    犯した罪が排他的関係にあり、どちらかのみが適用される場合。

包括一罪

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構成要件に該当する事実が2個以上発生しても、なお一罪であるかのように取り扱われる場合がある。すなわち法定刑が重い方の罪の規定だけを適用し、その法定刑で処断するものである。これを包括一罪と言う。その中に以下の3種のものがあると考えられる。
  1. 1個の行為で数個の構成要件に該当する結果を生じせせしめたが、軽い方の罪の法益は極めて軽微であるので、これらを包括して重い罪の刑だけで処断する場合。法条競合に分類する見解もある。
    例:服の上から刃物で刺して人を殺したという事案
    • 殺人とともに衣服を毀損した器物損壊の罪を問いうるが、後者は前者に比べ罪質が相当に軽微であるため、殺人罪のみを評価する。
  2. 別の構成要件に該当する2個の行為が目的・手段、または原因・結果と言う関係で密接に結びついており、1個の行為に準ずるようなものであり、かつ法益が同一又は一方が軽微なものであるので、包括して重い罪だけで処罰する場合。法条競合に分類する見解もある。
    例1:人を殺そうとして毒薬を入手し、その毒薬を他人に飲ませた。
    • 「人を殺そうとして毒薬を入手」したことで殺人予備罪の成立が認められるが、その後、その毒薬を他人に飲ませた時、殺人の実行に着手したこととなり、殺人罪の既遂又は未遂が成立する。殺人罪の既遂又は未遂の成立で、殺人予備罪はこれと別に評価されない。
    例2:窃盗した服を焼却した。
    • 窃盗犯が盗取した物を毀損・損壊しても盗取物に関して器物損壊罪を問われることはない。
    例1のように、事後の犯罪に含まれ評価され個別の犯罪とならない犯罪行為を「不可罰的事前行為」といい、例2のように、事前の犯罪に含まれ評価される犯罪行為を「不可罰的事後行為」という。しかしながら、これら軽微な犯罪は罰せられないものではなく、重い罪に吸収されて処罰されるので(実際の裁判において、あらかじめ計画された殺人は犯情が重いとされるし、盗品が毀損されず被害者に返還された場合、情状を考慮しうる)、平野龍一は「共罰的事前行為/事後行為」と呼称するのが妥当を述べている。
  3. 同じ構成要件に該当する数個の事実が引き続いて生じた場合。「狭義の包括一罪」または「接続犯」とも呼ばれる。
    • 人を、逮捕し監禁したときは、逮捕罪と監禁罪との各別の二罪が成立し、牽連犯又は連続犯となるものではなく、これを包括的に観察して刑法220条1項の単純な一罪が成立するものと解すべきものである(最高裁判決昭和28年06月17日)。
    • 暴行し、相手の身体数カ所を傷害した。→1個の傷害罪
    • ある家に窃盗に入り、複数のものを盗み出した。→1個の窃盗罪
    • 倉庫の管理を任されたのを利用し、数日にわたって倉庫のものを横領した。→1個の横領罪

科刑上一罪

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上述のとおり、構成要件に該当する事実が2個以上発生しても、法益の主体が同一であり、軽い罪の法益が重い罪の法益に比べてはるかに軽微である場合などは包括一罪として評価される。そうでなければ、複数の犯罪として評価すべきであるが、法益主体が異なり、あるいは法益が共に重要である場合であっても、なお法は法定刑において各々に定められる刑のうちで重い刑で処断することにしている場合がある。
刑法第54条において、①1個の行為が数個の罪名に抵触する場合(観念的競合・一所為数法)と②2個の行為が目的・手段、または原因・結果と言う関係がある場合(牽連犯)で、各々が上記包括一罪の第1類型や第2類型と異なり、軽い方の罪も重い罪に比較して軽微とは言い難いときに一罪として取り扱うこと(科刑上一罪)が定められる。
科刑上一罪の場合、包括一罪の場合と異なり、それぞれの罪の事実を訴因として認定するとともに、これに対して罰状の適用を示す必要がある。
また、「最も重い刑により処断する(第54条第1項)」という場合、「重い罪の刑」ということではなく、各々の罪の法定刑の重いものが適用されるということである(最高裁判決昭和28年4月14日)。
例:A罪とB罪が科刑上一罪の関係にある時
  • A罪の法定刑が2年以上10年以下の拘禁刑で、B罪の法定刑が1年以上5年以下の拘禁刑であるとき、A罪の法定刑2年以上10年以下の拘禁刑が科せられる。
  • A罪の法定刑が1年以上10年以下の拘禁刑で、B罪の法定刑が2年以上5年以下の拘禁刑であるとき、上限はA罪の法定刑10年、下限はB罪の法定刑2年となり、2年以上10年以下の拘禁刑が科せられる。
  • A罪の法定刑が1年以上10年以下の拘禁刑又は罰金刑で、B罪の法定刑が6ヶ月以上2年以下の拘禁刑(のみ)であるとき、罰金刑を科することはできない。
科刑上一罪と共犯
構成要件に該当する事実が2個以上発生して、行為者について科刑上一罪と評価される場合であっても、その共犯は故意他犯罪事実について個別の評価がなされ、複数の罪名のうち一部において選択的に共犯が成立する場合がありうる(最高裁決定平成17年7月4日参照)。

観念的競合

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「一個の行為が二個以上の罪名に触れるとき(第54条第1項)」一罪として取り扱われる。
  • 一個の行為
    法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価をうける場合をいう(最高裁決定昭和49年5月29日)。
  • 二個以上の罪名
    別種の罪名である必要はなく、同種の罪名であっても良い(大審院判決明治42年3月11日)。一個の行為で、被害者が複数に発生した場合、個々の被害者についてではなく一個の罪名で処断される。
      • Aはドラム缶で保有するメタノールを、Bが飲用に販売することを承知しながらBに販売し、Bから購入し飲用した者数名が体調を崩し、また、死亡した者もあった。
        →1個の傷害致死罪と評価(最高裁判決昭和26年9月25日
      • 危険運転により事故を起こし、複数の人が死傷した。
        →1個の危険運転致死傷罪と評価される。
  • 観念的競合となる例
    • 無免許で飲酒運転をした。
      道路交通法第118条第1項第1号、第64条の罪(無免許運転)と同法第117条の2第1号、第65条第1項の罪(酒気帯び運転等)との観念的競合の関係にある。
    • 窃盗犯が逃亡途中で警官と遭遇し、暴行を加え逃走しようとした。
      →事後強盗罪と公務執行妨害罪との観念的競合。

牽連犯

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「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき(第54条第1項)」一罪として取り扱われる。
牽連犯が成立するためには犯人が主観的に数罪の一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上通常手段結果の関係が存在することを必要とする(最高裁判決昭和24年12月21日最高裁判決昭和32年7月18日)。
牽連犯はその数罪間に罪質上通例その一方が他方の手段または結果となる関係があり、しかも具体的に犯人がかかる関係においてその数罪を実行した場合に科刑上とくに一罪として取り扱うこととしたものであるから、牽連犯を構成する手段となる犯罪と結果となる犯罪との中間に別罪の確定裁判が介在する場合においても、なお刑法54条の適用がある(最高裁判決昭和44年6月18日)。
ある犯罪Aが、通常であれば併合罪となるべき複数の犯罪行為B,C,…に対して、各々の手段行為である関係が認められ、犯罪Aと犯罪B、犯罪Aと犯罪C…は各々牽連犯であると判断される場合に、犯罪A、犯罪B、犯罪C…は1個の牽連犯を構成するとされる(かすがい現象)。
例:住居に侵入して3名を殺害した事案で、3個の殺人の所為は1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあるとした(最高裁決定昭和29年5月27日)。
牽連犯となる事例
  • 窃盗や暴行のためになされる住居侵入
  • 文書等の偽造と偽造文書の行使

併合罪

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確定判決を受けていない数個の罪を併合罪と言う。罪について確定判決があったときは、その罪とその確定判決前になされた罪だけが併合罪とされ、確定判決の前の罪と確定判決後の罪とは併合罪とはならない(第45条)。
併合罪の場合、処断方法に吸収主義、加重主義、併科主義がある。
  1. 重い刑として死刑・無期拘禁刑を科するときは、他の刑罰は科されない。ただし、死刑においては没収、無期拘禁刑については没収、科料及び罰金は科すことができる(吸収主義 第46条)。
  2. 有期拘禁刑は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその他の罪の刑の2分の1を加えたものが長期となる。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えない(加重主義 第47条)。併合罪の一部が他の犯罪の確定判決後になされた場合、この範囲において執行される(第51条)。
  3. 拘留刑は、累計される(併科主義)。
  4. 拘禁刑とともに罰金刑を科しうる(併科主義 第48条第1項)。併合罪の各々に罰金刑が科される場合、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する(加重主義 第48条第2項)。
  5. 科料は、累計される(併科主義)。

単純数罪

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別罪を構成し(牽連犯では確定判決を間に挟むこともある)、確定判決前後にある数個の犯罪行為を単純数罪という。

条文

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第1編総則 第9章 併合罪(第45条 - 第55条)

  • 第45条(併合罪)
  • 第46条(併科の制限)
  • 第47条(有期の拘禁刑の加重)
  • 第48条(罰金の併科等)
  • 第49条(没収の付加)
  • 第50条(余罪の処理)
  • 第51条(併合罪に係る二個以上の刑の執行)
  • 第52条(一部に大赦があった場合の措置)
  • 第53条(拘留及び科料の併科)
  • 第54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
  • 第55条 削除 - 連続犯についての規定が存在したが、1947年(昭和22年)に削除。
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