民法第396条
条文 編集
- 第396条
- 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
解説 編集
「その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。」とは、被担保債権の時効消滅と同時に抵当権の消滅を主張することができるという意味であるが、この条文の趣旨は、
- 抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者の場合に消滅時効を認める説
- 本来、原則通りであれば抵当権は民法第167条2項で、被担保債権が時効消滅していなくとも20年経過すると消滅時効によって消滅するが、これの援用権者について、債務者または抵当権設定者が認められない、というのが396条の趣旨である。起草者の梅謙次郎がそう述べている。従って債務者または抵当権設定者以外の、抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者は抵当権の消滅時効を援用することができる。抵当不動産の第三取得者については被担保債権の消滅時効を援用することができるが、被担保債権の時効の進行が中断されても抵当権の消滅時効を援用することができる。これが判例である。
- 抵当権者は被担保債権も抵当権も時効の進行を中断せざるを得ないが、抵当権の時効の進行を中断する手段が抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者の(先順位)抵当権承認をまつぐらいしかない。
- 抵当権の時効進行の中断の方法として民法第290条類推適用が提案されている。
- 債務者及び抵当権設定者のみに関する規定とする説
- 改正前フランス民法2180条は債務者が占有したままの場合についてしか述べておらず、その場合に附従性で消滅すると書かれている。396条はこのような趣旨でしかない。そもそも抵当不動産の第三取得者が抵当権の消滅時効を援用するのは396条ではなく397条によってであると解釈する。
- 397条は消滅時効ではなく取得時効による原始取得で反射的に抵当権が消滅することを定めていることに矛盾する。また、397条で第三取得者に取得時効の援用を認めないのが判例である。
参照条文 編集
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