法学民事法民法コンメンタール遺失物法

条文

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(定義)

第2条
  1. この法律において「物件」とは、遺失物及び埋蔵物並びに準遺失物(誤って占有した他人の物、他人の置き去った物及び逸走した家畜をいう。次条において同じ。)をいう。
  2. この法律において「拾得」とは、物件の占有を始めること(埋蔵物及び他人の置き去った物にあっては、これを発見すること)をいう。
  3. この法律において「拾得者」とは、物件の拾得をした者をいう。
  4. この法律において「遺失者」とは、物件の占有をしていた者(他に所有者その他の当該物件の回復の請求権を有する者があるときは、その者を含む。)をいう。
  5. この法律において「施設」とは、建築物その他の施設(車両、船舶、航空機その他の移動施設を含む。)であって、その管理に当たる者が常駐するものをいう。
  6. この法律において「施設占有者」とは、施設の占有者をいう。

解説

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『遺失物法等の解釈運用基準について(警察庁丙地発第22号平成19年8月10日警察庁生活安全局長通達)』より

  1. 物件(第1項関係)
    1. 各語の解釈
      1. 「遺失物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づかず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失ったもので、それを発見した者の占有に属していないもの(逸走した家畜、家畜以外の動物(民法第195条)及び埋蔵物を除く。)をいい、民法第240条に規定する「遺失物」と同義である。
      2. 「埋蔵物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、土地その他の物の中に包蔵され、その占有を離れたもので、その所有者が何人であるか容易には識別できないものをいい、民法第241条に規定する「埋蔵物」と同義である。
      3. 「誤って占有した他人の物」とは、他人が占有していた物であって、自己の過失によりその占有に属したものをいう。例えば、間違えて持ち帰った他人の傘、履き違えた他人の靴等が該当する。
      4. 「他人の置き去った物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失い、自己の占有に属することとなったもので、誤って占有した他人の物以外のものをいう。
        廃棄された物であると客観的に認められる物は無主物であることから、「誤って占有した他人の物」又は「他人の置き去った物」には該当しない。
      5. 「逸走」とは、自ら逃げることをいい、「逸走した家畜」とは、他人の占有していた家畜であって、逸走して当該他人の占有を離れたもので、誰の占有にも属していないものをいう。「家畜」とは、その地方において人に飼育されて生活するのが通常である動物をいい、例えば、牛、馬、豚、鶏、あひる、犬、ねこ等が該当し得る。なお、野良犬や野良ねこは他人が占有していたものではなく、また、捨て犬や捨て猫は逸走したものではないので、いずれも「逸走した家畜」には該当しない。また、犬又はねこが、野良犬又は野良ねこであるか否かについては、首輪及び鑑札の有無、拾得されたときの状況等を総合的に判断するものとする。
    2. 「物件」は、原則として、物一点を単位として捉え、例えば、手帳が在中したかばんが拾得された場合は、手帳という物件とかばんという物件が拾得されたものとして取り扱うものとする。ただし、複数の紙幣及び硬貨、同種類の有価証券、左右ペアのイヤリング一対、製品出荷用の箱にまとめて収納されている複数個の時計のように、社会通念上一体のものとして取り扱われるのが通常であると考えられる場合には、複数の物であっても、一の物件として取り扱うものとする。
  2. 拾得(第2項関係)
    埋蔵物及び他人の置き去った物については、これらを「発見すること」を「拾得」と定義されている(したがって、これらの物件の「拾得者」に係る法第34条第2号から第5号までにおける「1週間」、「24時間」又は「2週間」の期間は当該物件を「発見」した時から「1週間」、「24時間」又は「2週間」となる。)のは、埋蔵物及び他人の置き去った物は、自己の故意又は過失によらず、既にその占有下にあるからである。
  3. 拾得者(第3項関係)
    施設占有者の代理人、使用人その他の従業者が、当該施設占有者が占有する施設において物件の占有を始め、又はこれを発見した場合には、当該施設占有者が拾得者となる。
  4. 遺失者(第4項関係)
    「物件の占有をしていた者」とは、第1項における他人をいう。「物件の回復の請求権を有する者」とは、物件の所有者のほか、原所有者に対して特定物債権を有し原所有者の有する物権的請求権を代位行使することができる者をいう。
  5. 施設(第5項関係)
    1. 「建築物」とは、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するもの(これに類する物を含む。)をいい、具体的には、駅、空港、百貨店、スーパーマーケットその他の商店、ホテル、旅館、娯楽施設、飲食店、官公庁施設、オフィスビル、学校等が該当する。
      建築物以外の工作物が「施設」に該当するか否かについては、法では、施設において物件の拾得をした場合には施設外における拾得の場合と異なる取扱いをすることとしており、また、施設内で物件が遺失され、及び拾得されることを想定していることから、当該工作物が他の場所と物理的に区分されているもの(柵等によって周囲と区別された土地等を含む。)であって、人がその内部に入ることができるだけの大きさを有するか否かによって判断するものとする。
    2. 「移動施設」とは、自力、他力を問わず、場所を移動する「施設」をいい、「車両」には、自動車、鉄道の用に供する車両、軌道の用に供する車両等が該当する。
    3. 「管理に当たる者」とは、店員、駅員、職員、警備員等、当該施設における人の出入り等の管理に係る職務に従事する者を広く含む。
    4. 「常駐」とは、施設にいつでも所在していることをいうが、巡回、配達、本社との連絡等によってたまたま「管理に当たる者」がその施設を不在にすることがあっても、当該施設は「管理に当たる者が常駐する」施設に該当する。また、その施設を利用する者が利用可能な時間帯に「管理に当たる者」がいれば足り、24時間常駐していることまでは要しない。他方で、警備員が、施設外の場所を拠点にしてテレビカメラ等を使用して監視し、又は一時的に施設に立ち寄るだけの施設は、「管理に当たる者が常駐する」施設には該当しない。
  6. 施設占有者(第6項関係)
    「施設の占有者」とは、施設を自己のためにする意思(民法第180条)を持って事実上支配していると認められる者のことをいう。具体的には、例えば、駅や鉄道車両であれば鉄道事業者、商店であれば商店主が施設占有者に該当する。他方で、商店の従業者たる店長や鉄道の駅長は、占有代理人(民法第181条参照)に過ぎず、自己のためにする意思がないことから、施設占有者には該当しない。
    また、貸しビルのテナントのように施設を所有者から賃借している者がいるような場合には、所有者ではなく賃借人が、自己のためにする意思を持って現実に当該施設を支配しているため施設占有者に該当する。

参照条文

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判例

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前条:
遺失物法第1条
(趣旨)
遺失物法
第1章総則
次条:
遺失物法第3条
(準遺失物に関する民法の規定の準用)
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