法学民事法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文 編集

特別養子縁組の成立)

第817条の2
  1. 家庭裁判所は、次条から第817条の7までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
  2. 前項に規定する請求をするには、第794条又は第798条の許可を得ることを要しない。

解説 編集

 
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ウィキペディア特別養子縁組の記事があります。
養子縁組が、実親との関係を維持したまま、養親と親子関係を形成するのに対して、実親との関係を断ち切って、養親とのみ親子関係を形成し、通常の養子縁組と異なり離縁を原則として認めないなど事実上の実親子関係となる制度。
未成年である養子の育成を目的として、1987年(昭和62年)改正により導入された制度であり、実父母による養子となる者の監護が、実父母の不存在他著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、家庭裁判所が養親となるものが適格であることを審査し、審判により成立させる。
子供の福祉が目的であるため、立法当初は、養子にできるのは子どもの年齢が6歳になるまで、ただし6歳未満から事実上養育していたと認められた場合は8歳未満までと制限されていたが、2019年改正で15歳になるまでに引き上げられ、15歳になる前から養親となる者に監護されていた場合は18歳未満まで審判請求が可能となった。
民法第794条(後見人が被後見人を養子とする縁組)及び民法第798条(未成年者を養子とする縁組)に関して、第2項で家庭裁判所の許可が不要とされているのは、特別養子縁組を成立させるには、家庭裁判所の審判が必要であり、それに包含されているためである。

参照条文 編集

判例 編集

  1. 親子関係不存在確認(最高裁判決 平成7年07月14日)民法第779条民法第817条の9、民訴法第2編第1章訴、民訴法420条1項3号民訴法429条、人事訴訟手続法第2章親子関係事件ニ関スル手続、家事審判法9条1項甲類8号の2
    1. 子を第三者の特別養子とする審判の確定と子の血縁上の父が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの利益
      子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合には、原則として、子の血縁上の父が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの利益は消滅するが、右審判に準再審の事由があると認められるときは、右訴えの利益は失われない。
    2. 子の血縁上の父であると主張する者が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起するなどしていたにもかかわらず右訴えの帰すうが定まる前に子を第三者の特別養子とする審判がされた場合における準再審の事由の有無
      子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起するなどしており、子を第三者の特別養子とする審判を担当する審判官も甲の上申を受けてそのことを知っていたにもかかわらず、右訴えの帰すうが定まる前に子を第三者の特別養子とする審判がされた場合において、甲が子の血縁上の父であるときは、甲について民法第817条の6ただし書に該当する事由が認められるなどの特段の事情のない限り、右審判には、家事審判法第7条非訟事件手続法第25条民事訴訟法第429条第420条1項3号の準再審の事由がある。
  2. 親子関係不存在確認(最高裁判決 平成10年7月14日)人事訴訟手続法第2章親子関係事件ニ関スル手続,民訴法第2編第1章訴え,民法第817条の6民法第817条の9,家事審判法9条1項甲類8号の2
    子の血縁上の父であると主張する者が提起した戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えの係属中に子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合につき訴えの利益を否定した原審の判断に違法があるとされた事例
    子の血縁上の父であると主張する甲が戸籍上の父と子との間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起したところ、右訴えの帰すうが定まる前に右事情を知る審判官によって子を第三者の特別養子とする審判がされ、これが確定したが、甲について子を虐待し又は悪意で遺棄したなどの民法817条の6ただし書に該当することが明白であるとすべき事由が存在するとはいえないという事情の下においては、訴えの利益を否定した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。

前条:
民法第817条
(離縁による復氏の際の権利の承継)
民法
第4編 親族

第3章 親子
第2節 養子

第5款 特別養子
次条:
民法第817条の3
(養親の夫婦共同縁組)
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