法学民事法コンメンタール民法第5編 相続 (コンメンタール民法)

条文

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(遺言執行者の権利義務)

第1012条
  1. 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
  2. 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
  3. 第644条第645条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。

改正経緯

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2018年改正

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  • 第1項に「遺言の内容を実現するため、」の文言を追加。
  • 第2項を新設。
  • 旧・第2項の項番を第3項に繰り下げ。

2017年改正

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第2項(現・第3項)が以下の条項から改正された。

第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。
  • 2017年改正において新設された民法第644条の2(復受任者の選任等)の準用を回避する趣旨である。遺言執行者の復任については、第1016条にて定める。

戦後改正

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明治民法第1114条を継承。

  1. 遺言執行者ハ相続財産ノ管理其他遺言ノ執行ニ必要ナル一切ノ行為ヲ為ス権利義務ヲ有ス
  2. 第六百四十四条乃至第六百四十七条及ヒ第六百五十条ノ規定ハ遺言執行者ニ之ヲ準用ス

解説

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遺言執行者の権利義務について定める。

準用のあてはめ

  1. 遺言執行者の注意義務(民法第644条準用)
    遺言執行者は、委託(民法第1006条)の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、遺贈の履行を処理する義務を負う。
  2. 遺言執行者による報告(民法第645条準用)
    遺言執行者は、相続人及び包括受遺者(以下、相続人等)の請求があるときは、いつでも遺贈に関する委託事務の処理の状況を報告し、遺贈の履行が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
    • 民法第645条では、「委任者の請求があるときは」とあるが、遺言執行者の場合、委託者は死亡しているので、利害関係者である「相続人及び包括受遺者」が報告の相手方になる。ただし、個々の相続人等の請求に応じる必要があるかは、全ての相続人等に対して平等に対応を要するという観点からは検討を要する。
  3. 遺言執行者による受取物の引渡し等(民法第646条準用)
    1. 遺言執行者は、遺贈に関する委託事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を相続人等に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
    2. 遺言執行者は、相続人等のために自己の名で取得した権利を相続人等に移転しなければならない。
  4. 遺言執行者の金銭の消費についての責任(民法第647条準用)
    遺言執行者は、相続人等に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
  5. 遺言執行者による費用等の償還請求等(民法第650条準用)
    1. 遺言執行者は、遺贈に関する委託事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、相続人等に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
    2. 遺言執行者は、遺贈に関する委託事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、相続人等に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、相続人等に対し、相当の担保を供させることができる。
    3. 遺言執行者は、遺贈に関する委託事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、相続人等に対し、その賠償を請求することができる。

参照条文

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判例

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  • 第三者異議 (最高裁判決 昭和62年04月23日)民法第1013条,民事執行法第38条民事執行法第194条
    遺言執行者がある場合と遺贈の目的物についての受遺者の第三者に対する権利行使
    遺言者の所有に属する特定の不動産の受遺者は、遺言執行者があるときでも、所有権に基づき、右不動産についてされた無効な抵当権に基づく担保権実行としての競売手続の排除を求めることができる。

参考

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明治民法において、本条には遺産の分割の効力に関する以下の規定があった。趣旨は、民法第909条に継承された。

遺産ノ分割ハ相続開始ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス

前条:
民法第1011条
(相続財産の目録の作成)
民法
第5編 相続

第7章 遺言

第4節 遺言の執行
次条:
民法第1013条
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
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