民法第506条
条文
編集(相殺の方法及び効力)
- 第506条
解説
編集相殺の方法と効力の発生時期などについて規定する。相殺の効力は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時(相殺適状)にさかのぼってその効力を生ずる。意思表示時でないことに注意を要する。
参照条文
編集判例
編集- 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和32年03月08日)民法第541条
- 相殺の遡及効が契約解除に及ぼす影響の有無
- 賃貸借契約が、賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後、賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はなく、このことは、解除の当時、賃借人において自己が反対債権を有する事実を知らなかつたため、相殺の時期を失した場合であつても、異るところはない。
- 転付金請求(最高裁判決 昭和32年07月19日)手形法第38条,民法第468条2項
- 弁済期到来前の受働債権の譲渡または転付と債務者の相殺
- 弁済期到来前に受働債権の譲渡または転付があつた場合でも、債務者が右の譲渡通知または転付命令送達の当時すでに弁済期の到来している反対債権を有する以上、右譲受または転付債権者に対し相殺をもつて対抗することができる。
- 受働債権の譲渡と債務者の相殺の意思表示の相手方
- 債務者が受働債権の譲受人に対し相殺をもつて対抗する場合には、その相殺の意思表示はこれを右譲受人に対してなすべきである。
- 弁済期到来前の受働債権の譲渡または転付と債務者の相殺
- 請求異議(最高裁判決 昭和36年04月14日)民法第508条
- 時効にかかつた譲受債権を自働債権として相殺することの許否。
- 消滅時効にかかつた他人の債権を譲り受け、これを自働債権として相殺することは許されない。
- 貸金(最高裁判決 昭和53年07月17日)
- 対立する債権につき相殺計算をする場合の債権額確定の基準時
- 相殺の計算をするにあたつては、民法506条の規定に則り、双方の債権が相殺適状となつた時期を標準として双方の債権額を定め、その対当額において差引計算をすべきである。
- 損害賠償(最高裁判決 昭和54年03月20日)旧・民法第634条2項(現・第636条及び第559条を通した第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)の準用となる例)
- 民法506条2項の法意
- 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺をするに適するにいたつた時点に遡つて効力を生ずるものであり、その計算を双方の債務につき弁済期が到来し、相殺適状となつた時期を基準として双方の債権額を定め、その対等額において差引計算をすべきものである。
- 民法634条(旧)2項所定の損害賠償債権の発生時期及び期限の有無
- 民法634条(旧)2項の損害賠償債権は、注文者が注文にかかる目的物の引渡を受けた時に発生する期限の定めのない債権である。
- 民法506条2項の法意
- 請負工事代金請求、民訴法198条2項の裁判申立(最高裁判決 平成9年07月15日) 民法第412条,民法第533条,民法第634条2項,民訴法198条2項(現・民事訴訟法第260条),商法第514条
- 請負人の報酬債権と注文者の瑕疵修補に代わる損害賠償債権との相殺がされた後の報酬残債務について注文者が履行遅滞による責任を負う時期
- 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
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