法学民事法コンメンタール民法第1編 総則

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条文

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代理行為の要件及び効果)

第99条
  1. 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  2. 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

解説

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代理権授与行為の法的性質

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任意代理の場合は本人が代理人に代理権を授与する ( Erteilung der Vollmacht ) 行為が必要である。この行為は代理権授与行為と呼ばれるが、これが無名契約なのか単独行為なのか、という議論があるが無名契約説が有力である。この二つの説はドイツ民法167条の解釈に由来するが、ドイツ民法には明文の規定があるのに対して日本民法には規定がなく、そしてこの論点に関する論争の意義が疑われている。

また、委任契約(643条)のように明確に契約に基づいて代理権が授与される場合もある。

要件

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この規定はドイツ民法164条にしたがってもうけられたものである。

顕名

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本人に効果を帰属させるためには顕名(本人のためにすることを示すこと)が必要である(顕名主義)。顕名がない場合は代理人に効果が帰属する(100条)。

なお、商行為に関する代理に関しては、顕名を要さない(商法第504条)。

代理権

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代理行為が有効であるためには、代理人に代理権があり、かつ、代理人の法律行為がその代理権の範囲内であることを要する。顕名があっても代理権がない場合は表見代理(109条112条)ないし無権代理(113条)の問題になり、代理権はあるがその範囲外の行為の場合は権限踰越の表見代理(110条)の問題になる。

効果

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代理人の法律行為の効果が、本人に帰属する。したがって、代理人が詐欺・脅迫にあった場合に、取消権を取得するのは代理人ではなく本人である。

参照条文

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  • 第3節 代理
  • 商事代理
    • 商法第504条
      商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

判例

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  1. 所有権移転登記手続等本訴並びに反訴請求(最高裁判決 昭和39年10月27日)
    代理人が「本人ノ為メニスルコト」を表示して意思表示をしたと認められた事例。
    代理人が本人のためにする意思をもつて買受契約を締結する当時は、本人のためにすることを明示しなかつたが、後に代金を支払うときには、買主が本人であることを明らかにする等判示のような事情があるときは、「本人ノ為メニスルコト」を表示して契約をしたものと解するのが相当である。
  2. 不動産所有権確認等請求(最高裁判決 昭和41年10月18日)
    代理人の名を示さず本人の名においてなした行為は代理行為として有効か
    代理人が自己の名を示さず本人の名においてなした行為も代理行為として有効である。
    • 代理人が自己の名を示すことなく本人の名だけを示し本人の印をおして行為することも有効な代理の形式というべきである
  3. 売掛代金請求 (最高裁判決 昭和42年04月20日)民法第93条
    代理人の権限濫用の行為と民法第93条
    代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理人の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第93条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。
  4. 売掛代金請求(最高裁判決 昭和43年04月24日)
    1. 商法第504条本文の法意
      商法第504条本文は、本人のための商行為の代理については、代理人が本人のためにすることを示さなくても、その行為は本人に対して効力を生ずるものとして、いわゆる顕名主義に対する例外を認めたものである。
    2. 商法第504条但書にいう「履行ノ請求」に伴う法律関係
      相手方において、代理人が本人のためにすることを知らなかつたときは、商法第504条但書によつて、相手方と代理人との間にも本人相手方間におけると同一の法律関係が生じ、相手方が、その選択に従い、本人との法律関係を否定し、代理人との法律関係を主張したときは、本人は、もはや相手方に対し、右本人粗手方間の法律関係を主張することができない。
  5. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和51年12月16日)
    所有者から財産の管理・処分を受任した者が自己の名においてした財産処分の効力
    所有者から財産の管理・処分を受任した者がみずからの名においてした財産処分の効力は所有者に及ぶ。
    • 財産の所有権のうち管理・処分権のみを抽出・分離して他に譲渡することは、特別の場合を除いて許されないが、財産の所有者がその管理・処分を他の者に委任することは自由であり、右委任を受けた者が財産を処分した場合、その効力が所有者に及ぶことはいうまでもなく、このことは、その処分が代理形式をとつてされたか、受任者みずからの名によつてされたかを問わないのである。

前条:
民法第98条の2
(意思表示の受領能力)
民法
第1編 総則

第5章 法律行為

第3節 代理
次条:
民法第100条
(本人のためにすることを示さない意思表示)
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