民法第442条
条文編集
- 第442条
- 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず 、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
- 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
改正経緯編集
2017年改正、第1項のみ改正。
(改正前条文)
- 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
解説編集
本条は、連帯債務者間の求償関係について規定する。
第1項編集
- 連帯債務
- 連帯債務とは、数人の債務者が、同一内容の給付について、各自が独立に全部の給付をすべき債務を負担し、しかもそのうちの1人の給付があれば他の債務者も債務を免れる多数当事者の債務をいう(民法第436条)。
- 自己の財産をもって共同の免責を得たとき
- 負担部分
- 負担部分とは、連帯債務者相互間で、負担すべき債務の割合をいう。固定した数額ではなく、割合であると解される(通説)。
- 負担部分は、第1に連帯債務者間の特約によって定まり(大審院判決大正5年6月3日)、特約がないときは債務について各債務者の受けた利益の割合によって定まり(大審院判決大正4年4月19日)、それも明らかでない場合は平等である(判例・通説)。
- 本条の適用結果
- 例えば、A・B・Cの3人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合(各自の負担部分は平等とする)、連帯債務者Cが債権者Dに60万円全額を弁済したときは、Cは、他の連帯債務者A・Bに対して、本条に基づき、それぞれ負担部分である20万円を求償することができる。
- 一部弁済の場合
- 従前から判例(大審院大正6年5月3日)・多数説において、一部弁済であっても、負担部分の割合(「各自の負担部分に応じた額」)で求償することができるものとされており、2017年改正により明示された。。
- 例えば、上記の例でCが45万円を弁済したときは、A・Bに対してそれぞれ15万円ずつ求償することができ、自己の負担部分を下回る15万円を弁済したときも、A・Bに対してそれぞれ5万円ずつ求償することができる。
第2項編集
本項は、求償の範囲を定める。
- 出捐した額
- 求償し得る範囲は、出捐した額と、共同の免責を得た額の、いずれか少ない方である。たとえば、40万円の物で60万円の代物弁済をしたときは出捐額40万円の限度で求償でき、40万円の物で30万円の代物弁済をしたときは共同免責額30万円の限度で求償できる。
- 法定利息
- 共同免責を得た日から、当然に法定利息(民法第404条)を請求することができる。
- 避けることができなかった費用その他の損害賠償
- 弁済の費用、債権者から請求されて負担させられた訴訟費用、執行費用などである。
参照条文編集
判例編集
- 損害賠償請求(最高裁判決 昭和41年11月18日)民法第719条
- 求償金請求(最高裁判決 昭和46年03月16日)民法第465条
- 約束手形金(最高裁判決 昭和57年09月07日)民法第427条,民法第465条1項,手形法第17条,手形法第30条1項,手形法第47条1項,手形法第47条3項,手形法第49条,手形法第77条1項1号,手形法第77条1項4号,手形法第77条3項
- 配当異議 (最高裁判決 昭和59年05月29日)民法第459条、民法第501条
- 損害賠償請求本訴、同反訴(最高裁判決 昭和63年07月01日)民法第715条、民法第719条
- 精算金(最高裁判決 平成10年04月14日)民法第501条,民法第675条,商法第511条1項,和議法第5条,和議法第45条,和議法第57条,破産法第24条,破産法第26条,破産法第104条,破産法第32条
- 損害賠償(最高裁判決 平成10年09月10日)民法第437条、民法第719条
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