法学民事法民法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文編集

(裁判上の離婚

第770条
  1. 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
    1. 配偶者不貞な行為があったとき。
    2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
    3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
    4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
    5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
  2. 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

解説編集

婚姻を継続できない原因があり、当事者間の協議で合意できない場合、夫婦の一方は裁判の訴えを提起できる。訴訟手続については、人事訴訟法の規定が適用される(人事訴訟法第2条1号)。なお、明治民法においては、第813条から第818条までの6か条にわたって定めていた。
  1. 調停離婚家事事件手続法第244条同法第268条、旧法:家事審判法第21条第1項)
    離婚の請求があった場合でも、婚姻の解消は当事者間の合意によることが望ましいため、裁判に先立って、双方による合意を形成する場として調停を前置し、それが不調である時に初めて裁判に移行する制度となっている(調停前置主義;同法第257条、旧法:家事審判法第18条)。
  2. 審判離婚家事事件手続法第284条第285条第286条第287条、旧法:家事審判法第24条
    調停の大部分は合意がなされたが、細部において合意が得られない場合、家庭裁判所は、職権により審判をなし離婚を成立させることができる(調停に代わる審判)。このような状況になることは少なく、適用例も少ない。審判に不満である場合は異議を申し立てることができ、異議が受容された場合、裁判に移行する。
  3. 裁判離婚(本条)
    1. 調停不調の場合、裁判手続きに移行する。
    2. 移行後も、当事者間の合意を尊重し、迅速に進行させる観点から、裁判上の和解(和解離婚)又は一方の請求に対する認諾(認諾離婚)を勧奨する場合がある(人事訴訟法第37条)。
    3. 訴訟で離婚請求を認容する場合は以下の離婚原因が存在することを要する。
      1. 配偶者不貞な行為があったとき。
      2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
      3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
      4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
      5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
      「離婚原因」については、それを作出した側からの離婚請求は認められないものと解されている。
    4. 裁判においては、以下の事項に関する「付帯処分」についての裁判を必須とする(人事訴訟法第32条
      1. 子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分
      2. 財産の分与に関する処分
      3. 厚生年金保険法第78条の2第2項の規定による処分
        「標準報酬改定請求」について、当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して、請求すべき按分割合を定める。
    5. 判決に不服がある当事者は控訴することができる。控訴判決に不服がある場合、上告も可能であるが、この種の案件が上告で覆されることは極めて稀である。

参照条文編集

判例編集

  • 離婚請求(最高裁判決 昭和36年04月25日)
    離婚原因に関する当事者の主張の解釈
    本条第1項第4号の離婚原因を主張して離婚の訴を提起したからといつて、反対の事情のないかぎり同条項第5号の離婚原因も主張されているものと解することは許されない。
    本条第1項第5号の離婚原因の成立を認め得ないとされた事例。
    妻が精神病にかかつているけれども回復の見込がないと断じ得ないため本条第1項第4号の離婚原因を認め得ない場合に、右精神病治療のため相当長期入院加療を擁するところ夫の財政状態および家庭環境が原判示の如くであるというだけの理由で、同条項第5号の離婚原因の成立を認めることは相当でない。
  • 離婚等請求(最高裁判決 昭和48年11月15日)
    不貞な行為の意義
    不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。
  • 離婚(最高裁判決 昭和62年09月02日) 民法第1条2項
    長期間の別居と有責配偶者からの離婚請求
    有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない。
    有責配偶者からの離婚請求が長期間の別居等を理由として認容すべきであるとされた事例
    有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦が36年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
  • 離婚請求(最高裁判決 昭和33年07月25日)
    民法第770条第1項第4号と同条第2項の法意。
    民法第770条第1項第4号と同条第2項は、単に夫婦の一方が不治の精神病にかかつた一事をもつて直ちに離婚の請求を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。

参考編集

明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、民法第735条に継承された。

直系姻族ノ間ニ於テハ婚姻ヲ為スコトヲ得ス第七百二十九条ノ規定ニ依リ姻族関係カ止ミタル後亦同シ

前条:
民法第769条
(離婚による復氏の際の権利の承継)
民法
第4編 親族

第2章 婚姻

第4節 離婚
次条:
民法第771条
(協議上の離婚の規定の準用)


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