慣性系 の座標を 、 慣性系 の座標を とする。 は に対して速度 の一様な並進運動をしているとき、2つの慣性系の間の対応を求めよう。
まず、 は に関する一次関数でなくてはならない。なぜなら、二次以上の項が含まれていると、世界間隔が任意の慣性系で不変であるという条件 が満たされないからである。さらに、 の原点を適当に選ぶことで、定数項も0とすることができる。
また、 で静止している物体について考えると明らかに この物体の位置を で観察すると、 すなわち、 は に比例して、その比例係数を とすると、 と表される。 と置くと、
世界間隔が慣性系で不変であるから、
すなわち、
第三式を第二式に代入して、 これを第一式と比較して 第三式より 第二式より ここで、 は正に選ばなくてはいけない。 が負であるとすれば から と が逆向きとなってしまう。それは慣性系 の設定と異なる。 も同じ理由である。
とすると、ローレンツ変換は
と書かれる。
ローレンツ変換をまた別の方法で求めよう。ローレンツ変換を原点からの世界間隔 が変化しないミンコフスキー空間の回転として表してみる。 を正として の部分は、 と表すことが出来る。この点を回転角 だけ回転させた点 は、
という変換になる。
行列で表すと、 である。前述の議論より、ローレンツ変換は線型変換だから、この変換が時空間全体に適用されると考えるべきである。実際に、 が正で の部分については、 として上の変換を得る。 が負で の部分には、 、 の部分には、 と変換すれば良い。 系での原点 は 系では、 である。二式を割って、 ここで、 は での の原点の速度に等しいから である。双曲線関数の公式 から、 となる。 この結果は前述の結果と一致する。また、 はラピディティと呼ばれる。
速度の合成則
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慣性系 に対し、系 は速度 の一様な並進運動を行っている。また、系 は に対して、速度 の一様な並進運動を行っている。このとき、 は から見てどのような運動を行っているだろうか?
としてラピディティを導入すると、
すなわち、 は に対して、ラピディティ のローレンツ変換である。 から見た の速度 を で表すと、双曲線関数の加法定理 より、 である。もちろん、ラピディティを経由せずに速度の合成則を求めることも可能である。詳しくは速度の合成則を参照すること。
粒子の作用はローレンツ不変な形式でなくてはならない。粒子の世界線に沿ったスカラー の積分と4元ベクトル の線積分
はこの条件を満たす。自由粒子については なのであった。
電磁場と相互作用する粒子の作用 は、 とした
である。4元ベクトル は電磁場(あるいは4元ポテンシャル、電磁ポテンシャル)と呼ばれ、 は電荷と呼ばれる量である。電磁場 の成分は、 であり、 はスカラーポテンシャル、 はベクトルポテンシャルと呼ばれる。
作用の時間成分と空間成分を分けて書くと
自由粒子の作用と合わせると、
となる。この被積分関数が電磁場中の粒子のラグランジアン である。
電磁場中の運動方程式を求めるためには、オイラーラグランジュ方程式
を求めれば良い。
また、 である。
最終的に、オイラーラグランジュ方程式は
となる。これが粒子の運動方程式である。第一項と第二項の電荷当たりにかかる力を電場 といい、第三項の速度に直交する部分を磁場 という。
また、運動方程式は となり右辺はローレンツ力と呼ばれる。
電場と磁場の定義より
である。これでマクスウェルの方程式のうち二式を得る。
ゲージ変換
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任意の関数 について、 と変換しても、 は変化しない。この変換をゲージ変換という。
ここで、もう一度粒子の運動方程式を求めることにしよう。今度は4元形式を崩さない形で求める。
粒子の作用は
である。
であり、
である。電磁場の強度 を と定義すると、
となる。 より、運動方程式
を得る。
は反対称 であるから、対角成分 は0。
電磁場の強度 の成分は
等により、
電磁場の作用
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電磁場の作用を求めるにあたって、まずは電磁場と相互作用する粒子の作用 に少しの変更を加えよう。これはある粒子の経路について変分をとるから、一つの粒子に対する作用であったが、電磁場の作用を求めるために、これを存在するすべての粒子に対する和に変更しなくてはいけない。作用は、
となる。ここで、 は存在するすべての粒子のラベルである。積分はそれぞれの粒子の世界線に沿った経路ものになる。電荷密度 をディラックのデルタ関数を使って
と定義する。 は 番目の電荷の位置ベクトルである。さらに、4元電流密度 を
と定義する。ここで、4元電流密度は ではない。 がスカラーではないからこの量が4元ベクトルとはならためである。電荷密度 がスカラーではないことはローレンツ収縮が起こるためである。ある微小領域 に存在する電荷はローレンツ不変だが、微小領域の体積 はローレンツ収縮によって変化しうる。これに伴って電荷密度 も変化するためローレンツ不変ではない。微小領域に存在する電荷は でこの量はローレンツ不変である。両辺に を掛けて、
ここで、 はスカラーである。なぜなら、ローレンツ変換によって、 (ローレンツ収縮)、 との変換を受けるからである。あるいは、ローレンツ変換の行列の行列式が1である事からも分かる。 は4元ベクトルだから、 は4元ベクトルである。
4元電流密度を使うと、作用は、
となる。
次に、電磁場自身の作用 をもとめよう。電磁場の作用はゲージ変換について不変であるべきだ。すなわち、作用はゲージ不変な によって作られなくてはいけない。もし が顕に含まれているとゲージ不変ではなくなる。さらに、電磁場は経験的に重ね合わせの原理を満たすことが分かっている。すなわち、第一の粒子がある場をつくり、また第二の粒子が場をつくるならば、この2つの粒子によって作られる場は粒子の作る場の単純な足し合わせであるということである。この原理を満たすためには、変分によって導かれる運動方程式は の一次の式であればよい。変分によって得られる式の次数はラグランジアンの次数から1を引いたものであるから、ラグランジアンは に対する二次の式である。これらの条件を満たす量は のみである。比例定数を適当に選ぶと、電磁場の作用は、
となる。ここで、 である。
その変分は、
ここで、 であり、 であるから、
さらに、 であるから、右辺第一項について四次元のガウスの定理を用いると、
である。無限遠では場は0となるから であり、時間の端点では であるから、この積分は0となる。
結局作用の変分は、
となる。
と合わせると、電磁場の運動方程式
を得る。
については
については
が得られる。ここで、 である。これでマクスウェルの方程式の四本の式が得られた。
ここで、最後の式は、電磁場テンソルが反対称であることから、アインシュタインの記法なしで
であり、微分の添字は対称であることから、 となる。
は
である。これは連続の式である。